投資のプロが選ぶ「本当に役に立つ投資書籍4冊」

日本の株式市場は上にも下にも大きく動かない相場付きとなっています。このような展開が続いているときに無理に動く必要はありません。次のチャンスに備えてご自身の投資知識を磨いておきましょう。

しかし学ぼうと思っても、本屋さんの投資本コーナーにはたくさんの本が積んであり、迷う方も多いのではないでしょうか。

中には「株で簡単に●●億円」とか「FXで月収●万円アップ」といった、あたかもその書籍を読めば簡単に投資で利益をあげられるような刺激的なタイトルの本も多くあります。

ただ筆者からすると「投資で継続的に大きな利益をあげること」は全く簡単ではありません。仕事柄投資で1億円以上の資産を築いたいわゆる「億り人」の方に多くインタビューさせていただきましたが、皆さん共通して投資や銘柄の知識がびっくりするほど深く幅広く、常に新しい知識をインプットし続けています。(付け加えると優しく礼儀正しい方ばかりです。)

皆さんには玉石混交のたくさんの投資書籍の中から、本当に役に立つ中身の濃い書籍を読んでいただきたいと思います。そこで今回は、証券会社でマーケットアナリストを務める筆者が過去に読んだ書籍の中から自信を持ってお勧めできるものをカテゴリー別にご紹介します。


資産形成編

まずは最初に読んでいただきたい、資産形成全般についてのお勧め書籍を2つご紹介します。

◆「難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!」

(著)山崎元、大橋弘祐 / 文響社

投資について何から始めて良いか全くわからないという方には、まずは山崎元氏の書籍がおすすめです。資産運用について初心者の方でもわかりやすく理解できるとともに、本質的な内容が非常に切れ味鋭く書かれています。

たくさんの著書がある山崎氏ですがその主張は首尾一貫しており、「投資はできるだけ低コストに行うべし」「金融機関の言いなりになってはいけない」というものです。金融機関にとっての儲けの源泉はお客様からいただく手数料にあるので、手数料が高いものをお勧めする傾向があります。お勧めを鵜呑みにするのではなく、本当に自身にとって適した金融商品なのかしっかりと考えることが大切です。

◆「ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理」

(著)バートン・マルキール (翻訳)井手正介 / 日本経済新聞出版

「ウォール街のランダム・ウォーカー」は投資家必読の名著として知られています。この本は「インデックス投資(日経平均やダウ平均など指数に連動した投資成果を目指す投資法)」の有効性を世界中に広めた大きな功績があります。

山崎氏の書籍に比べると分厚く読みづらいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、短期的な株価を予測することは非常に困難であることや、ファンドマネージャーなどのプロの投資家でさえも市場の平均(インデックス)に勝ち続けることは非常に難しいことがデータで示されており、インデックスを活用した長期分散投資の重要性が語られています。

株式投資(考え方)編

続いては株式投資の考え方にフォーカスした書籍をご紹介します。

◆「投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識」

(著)ハワード・マークス (翻訳)貫井佳子 / 日本経済新聞出版

この書籍は筆者が出演するセミナー等で何度紹介したかわからないくらい、投資家にお勧めしています。とにかく株式投資をする上で抑えておくべき重要なポイントがたくさん指摘をされており、この本については投資の神様として知られるウォーレン・バフェットも一読を勧めているほどです。

この本で何度も繰り返し出てくる重要なメッセージは「投資は簡単ではない」というものです。市場には1円でも多く儲けたいと考えている猛者たちがたくさんいます。その市場に何の準備もなく飛び込むのは、ライオンの群れに飛び込む草食動物のようなものかもしれません。投資は簡単ではないという大前提からスタートして、知識や経験を積み重ねてこそ利益が上がるようになる、ということはぜひ意識いただきたいポイントです。

その他にも山口揚平氏の「知ってそうで知らなかった ほんとうの株のしくみ」やピーター・リンチ氏の「ピーター・リンチの株で勝つ」、ジェレミー・シーゲル氏の「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」なども非常に有用性が高いと考えます。

株式投資(分析術編)

最後に、株式投資をする上で具体的な銘柄の分析法が詳述された書籍をご紹介します。

◆「株で富を築くバフェットの法則 不透明なマーケットで40年以上勝ち続ける投資法」

(著)ロバート・G・ハグストローム (翻訳)小野一郎 / ダイヤモンド社

「投資の神様」として知られ筆者も敬愛してやまないウォーレン・バフェットの投資法について紹介した書籍です。バフェット氏は1930年生まれですでに91歳ですが今でも現役の投資家であり経営者でもあります。超長期間に及ぶ絶大な投資成績はもちろん、莫大な寄付などの社会貢献や株式市場が暴落した際に発するウィットに富んだ発言などから、世界中から尊敬を集めています。

本書はバフェット氏が執筆したわけではありませんが、彼が経営するバークシャー・ハサウェイの投資実績やバフェット氏が同社の株主向けに毎年発行している「株主への手紙」などから、バフェット氏の投資術を詳細に説明しています。

バフェット氏の投資法として特に有名なのが「moat(堀)」という考え方です。日本のお城の多くにはお堀があり、お堀には敵が攻めてきた際にもお城を守りやすくなる効果があります。それと同じ考え方を企業経営にも当てはめて、競合他社が真似しようと思ってもできないブランド価値や技術をもっている会社に投資するべきというものです。

例えば最近だとバークシャー・ハサウェイはアップルに多額の投資を行っていますが、アップルがもつiPhoneなどのブランド価値やアプリケーションのエコシステム等は競合のスマートフォンメーカーが真似しようと思ってもできるものではありません。

moatの考え方以外にも、バフェット氏の具体的な分析術が詳しく記載されていますのでぜひ読んでみてください。

分析術というカテゴリーではその他にも個人投資家DUKE。氏の「1勝4敗でもしっかり儲ける新高値ブレイク投資術」や同じく個人投資家v-com2氏の「最強のファンダメンタル株式投資法」なども具体的な分析術がわかりやすく記載されており、一読の価値ありです。

本日ご紹介した書籍は読者の皆様の投資力向上に本当に役に立てるものばかりだと思いますので、ぜひ読んでみてください。

<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>

© 株式会社マネーフォワード