瀧内公美、父が起こした衝撃的な事実に直面する姿 正しさとは何かを問う「由宇⼦の天秤」 予告編公開

9月17日より劇場公開される、⼥⼦⾼⽣⾃殺事件を追うドキュメンタリーディレクターを主人公とした「由宇⼦の天秤」の、予告編が公開された。

公開された予告編は、取材に向かうドキュメンタリーディレクターの由宇子の後ろ姿を捉えた、緊迫感に満ちた映像から始まる。そして、3年前に起きた「女子高生いじめ自殺事件」を追う由宇子の取材の様子、取材者たちから発せられる「誰が本当の加害者か」「報道が殺したんですよ」などの言葉、テレビ局の方針との対立などが描かれる。中盤からは、父の経営する学習塾を手伝う由宇子の姿が映し出される。そこで由宇子は女子高生・萌(メイ)と出会い、父が起こした衝撃の事実などに向き合っていくことが示される。

あわせて、ひと足先に本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。映画監督のジャ・ジャンクーは「そこにはある種の魔法の力が存在し、我々は無意識のうちに、主人公の内なる世界の奥深くへと導かれ、衝撃を受ける。そこで我々がバランスを保つことは困難だろう―」と感想を述べ、行定勲(映画監督)は「自分の在り方を考えさせられ、後に尾を引く」と語っている。俳優の池松壮亮は、「無知や無関心を煽る社会システムと、暴徒化する知性と正義感との間に、由宇子の心の天秤はゆれている」と本作を表現している。

「由宇⼦の天秤」は、⼥⼦⾼⽣⾃殺事件を追うドキュメンタリーディレクターの由宇⼦を主人公に、事件の真相に迫る過程で⽗から衝撃的な事実を聞かされ、究極の選択を迫られるという内容の作品。情報化社会を⽣きる人々が抱える問題や⽭盾をあぶり出している。主演は、キネマ旬報ベスト・テン主演⼥優賞を獲得した「⽕⼝のふたり」の瀧内公美。河合優実、梅⽥誠弘、光⽯研らが脇を固める。監督・脚本は「かぞくへ」の春本雄⼆郎が務めている。第71回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門に正式出品された。

【コメント全文】

■ジャ・ジャンクー(映画監督)
『由宇子の天秤』は、第4回平遥国際映画祭において、多くの人々を驚かせ、観客賞を獲得した。
春本監督の映し出す世界は、全てが静かで穏やかである。
しかしそこにはある種の魔法の力が存在し、我々は無意識のうちに、
主人公の内なる世界の奥深くへと導かれ、衝撃を受ける。
そこで我々がバランスを保つことは困難だろう―。

■行定勲(映画監督)
ここ数年の中で、最もくらった日本映画だ。
正義とは、社会においての矛盾を解き明かすことか?
自分の大切なものを守りぬくことか?
自分の在り方を考えさせられ、後に尾を引く。

■池松壮亮(俳優)
無知や無関心を煽る社会システムと、暴徒化する知性と正義感との間に、
由宇子の心の天秤はゆれている。
倫理や道徳に揺さぶられながら、バランスを保とうと必死にゆれている。
細部まで心と魂のこもった
極めて非凡な作品に出会った。

■安田菜津紀(NPO法人Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
「伝える」仕事に携わる自らを、深く省みずにはいられなかった。
自浄作用を失ったメディアには、最初から天秤の「軸」などないのかもしれない。
人の人生を「素材」として翻弄し、後は背を向けるだけならば。

■瀬々敬久(映画監督)
国家や社会がどうしようもない状況だと感じる毎日、実はそれを生み出しているのは私たち自身ではないのか。
そして、それを変えられるのも私たち自身なんじゃないのか。この映画に告げられた気がする。
俳優たちの存在が素晴らしい。それを導き、ともに斬りこんだスタッフの静かな熱量。頭がさがった。

【作品情報】
由宇⼦の天秤
2021年9月17日(金)より、渋谷ユーロスペース他全国順次ロードショー
配給:ビターズ・エンド
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