「プロスピ2021」開発者が語る能力査定の裏側 阪神佐藤輝に「予想を裏切られました」

2年ぶりに発売される最新作『eBASEBALLプロ野球スピリッツ2021 グランドスラム』

「eBASEBALLプロ野球スピリッツ2021 グランドスラム」はNintendo Switchで発売

8日にKONAMIから発売される『eBASEBALLプロ野球スピリッツ2021 グランドスラム』。2年ぶりに発売される最新作はハードをNintendo Switchに移し、機能もよりパワーアップ。野球ファンのみならず選手も気にする!? という能力査定が発売前から注目を集めている。そこで、プロデューサーの山口剛さんに直撃インタビューを敢行。能力査定の裏側や、あのスター選手の能力について語ってもらった。

――発売おめでとうございます! 早速ですが、今作に登場する選手たちの能力査定にあたり、苦労したポイントや悩んだ点はありますか?

「身もふたもない言い方をすれば、ほぼ全ての選手たちで悩み、苦労して査定しています。成績から自動的に選手データを算出できればいいのですが、データの少ない2軍選手や新戦力ではそういうわけにもいきません。また守備成績や足の速さ、肩の強さなどは現時点では成績に表れないところでもありますので、他選手との比較や映像をコマ送りして秒数を測るなどしています。

ルーキーや新外国人選手であれば、NPBでプレーした場合にどういった成績を残すかを予想しながら査定します。アマチュア選手だと試合映像が少なかったり、選手によってはなかったりすることや、必ずしも前評判の高い選手が活躍するとも限らないため、過去に活躍した選手の傾向やドラフト順位なども踏まえながら査定していきます。

また、基本的に『1年間シーズンを戦った時に残すであろう成績』を基準に査定していますが、今年1年だけではなく翌年以降も踏まえて調整をします。1年だけ突出した成績を残した時は、翌年以降も安定してその成績を残すかどうか慎重に判断します。主にBABIPや被BABIPを参考にしていますね。

そのため、ユーザーからは『こんなに良い成績なのになんでこんなに弱いんだ』とか、逆に『こんなに悪い成績なのに』と言われてしまうこともありますが、見かけの成績だけではなくセイバーメトリクスなども駆使した社内ツールなども使って査定をしています。

悩むポイントとしては、やはり予測しきれない要素が多い選手になるかもしれません。ルーキーや新外国人選手を除くと、実績はあるけれど昨年だけ不振だった選手(DeNA・山崎康晃投手ら)や、久しぶりにNPBに復帰した選手(楽天・田中将大投手やオリックス・平野佳寿投手ら)です。

山崎投手などは『今シーズン復活するのか、それともやはり低迷したままになってしまうのか』というところの見極めが非常に難しかったです。現在のところ、防御率という見かけ的には復活したように感じますが、奪三振率などが上がってこず、全盛期ほどには戻っていない状態と感じています。

田中投手については、外国人選手に近いような、NPB復帰時にどうなるか分からない部分もありました。平野投手も同様で、投球内容や球種なども含めてNPB時代を大いに参考にしつつMLB時代のアレンジも入れるような調整をしています」

佐藤輝の当初予想は「2、3年はバットに当たらず、守備も打球についていけない」

――開幕前や春先のデータから1年間の成績を予想して査定を行うのは難しそうですね。これまでに、査定班の皆さんの予想通りの活躍をした選手はいましたか?

「やっぱり、100%予想できた選手はいないですね(笑)。パワーや走力のような純粋な身体能力はアマチュア時代から極端に変わることはないのですが、打者であれば1軍の投手に対して適応できる打撃能力があるかどうかという予想は難しいです。そこはミートに影響するのですが、外れることの方がむしろ多いくらいです。もう1つは守備ですね。プロの速い打球に対しての守備は予想するのが難しいです」

――今年の新人選手で挙げるとするならば、阪神の佐藤輝明内野手は皆さんの予想以上だったのではないでしょうか。

「本当にその通りです。パワーが目立っていたので2、3年はバットに当たらず、守備の面でも打球についていけないだろうと予想をしていました……。そういう意味では、いい意味で予想を裏切られましたね。コンタクト能力、守備面も試合をこなすたびに上昇しており、高い順応力を持った選手として評価しています。正直、この能力をスカウトが見抜いていたなら、4球団競合どころでは済まなかったのでは……と思っています。プロ側からしても、想定を超える活躍を見せているのではないでしょうか」

――ルーキーでは佐藤輝選手の他にも、すでに2桁本塁打を放っているDeNA・牧秀悟内野手や五輪代表にも選ばれた広島・栗林良吏投手ら新人の活躍が目立っています。

「牧選手に関しては、逆方向に打つ打撃技術が高い選手と評価しております。パンチ力も想定以上の成績を残しており、ドラフト前にオリックスのスカウトの方が『将来的に本塁打王を取るかも』と評しておられましたが、プロの方の眼力はさすがと思わせてくれる前半戦の活躍でした。

それにしても、ルーキーで10本塁打を記録するのは直近でも2016年のオリックス・吉田正尚選手(10本)や2010年の巨人・長野久義選手(16本=大卒、社会人で3年プレー後に入団)と、そもそもが非常に珍しいケースです。今年だけで佐藤輝選手、牧選手の2人も出ていること自体、異例の新人当たり年なのだと感じています。

栗林投手は、ドラフト指名当初は『先発』として評価しており、『抑え』としては考えていませんでした。抑えで起用されてからの活躍は目覚ましいものがあり、ストレート、スプリットは出色の成績を残しています。暑くなり疲れが出てきた感はありますが、このままの成績を維持していけば球威A以上を検討することになると考えています」

――リーグトップの9勝(7月5日現在)を、マークし、「マイナビオールスターゲーム2021」のパ・リーグ先発投手部門でファン投票1位に輝くなど、めざましい進化を遂げているオリックス・宮城大弥投手の査定が気になります!

「打者が差し込まれるストレートに、どの球種でも腕の振りが変わらずストライクがとれる制球力と多彩な変化球。特長を挙げると枚挙にいとまがなく、19歳にして高い完成度を持った投手と評価しております。また、現時点ではデータ形式の都合上再現できていないのですが『ダブルカーブ』と称される2種類のカーブを投げ分けていると認識しています。こちらは宮城投手のアイデンティティに関わる部分でもあるため、どう再現するか検討しております。

ほかにも、活躍を見せている選手たちについては今後さらに強化される予定です。サードでゴールデングラブ級の活躍を見せているオリックスの宗佑磨選手、西武の呉念庭選手や日本ハムの河野竜生投手、ロッテの佐々木千隼投手らは大きく強化されていくかもしれませんね!」

日本球界に復帰した楽天・田中将大も登場【画像:(c)Konami Digital Entertainment】

鷹・甲斐からは「ミートとパワーを上げて」と要望も…

――自分の能力をチェックした選手から、SNSなどを通じて反応がくることもあるかと思います。選手からの意見は気になりますか?

「ものすごく気にしています(笑)。今年も『プロスピ2021』『プロスピA』を実際にプロ野球選手に対決してもらう動画企画をやったのですが、そのおまけ動画として自分の能力を見てもらう動画も収録しました。立ち会っていたのですが、一番ドキドキしました(笑)。

選手のみなさんはミートやパワーではなく、守備力や走力を気にされているようです。ソフトバンクの甲斐拓也捕手は『走力B』なのですが、収録で『よく見ていらっしゃいますね!』と褒めていただきました。『ついでにミートとパワーも上げて』と言われたのですが、一緒に収録していた千賀滉大投手が『なに言ってるんだ』と突っ込んでいらっしゃって……最高のコンビでしたね」

――選手からの要望は実際に査定に反映されるのでしょうか?

「成績に基づいて査定をつけていますので難しいところはあるのですが、多少は考慮すべきというところもありますので、指摘を受けたら試合の映像を見返します。他の選手とのバランスもありますが、場合によって見直すこともあります」

――他の選手のとの兼ね合いや能力のバランスを取るのが難しいのですね。

「そこが一番難しいところです。やっぱり、ファンの方にとって自分の好きなチームが最強だと思うんです。『最強であってほしい』と願っていると思うのですが、ちょっと非情ではありますが成績という確固たるデータをベースに作っています。

ただ、アップデートも定期的にやっていますので、選手の能力は常に追いかけています。今作にも「LIVE能力」という機能が入っていて、オンラインに接続していただくと、その週に活躍した選手の実際の成績に応じて能力が自動的に微調整されます。我々のチームが細かく調整していますので、お楽しみください!」

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ゲーム内に再現された球場内看板は、原則として2020年プロ野球ペナントシーズン中のデータを基に制作しています。
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“eBASEBALL”は、株式会社コナミデジタルエンタテインメントの登録商標です。

【画像】パワーは? 特殊能力は? スーパールーキー佐藤輝明の能力値を公開

パワーは? 特殊能力は? スーパールーキー佐藤輝明の能力値を公開【画像:(c)Konami Digital Entertainment】 signature

(安藤かなみ / Kanami Ando)

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