前回の衆院選から国会議員のSNS利用の実態はどう変わった?国会議員インターネットメディア利用度調査その4(中村よしみ)

前回の記事までは国会議員におけるTwitter、YouTube、Facebookの各種インターネットメディアの利用状況について考察してきました。今回は最後に、Twitter、YouTube、Facebookにおける更新頻度を年代別・期数別にまとめた上で国会議員のインターネットメディア利用状況からわかったことをご紹介します。(図の通し番号はその1その2その3から連続)。

図48 国会議員Twitter、YouTube、Facebook利用者における更新頻度の比較(年代別・期数別)

30代、40代は、それ以外の年代よりもTwitterの更新が活発である一方、Facebookを24時間以内に最も更新しているのは60代でした。また、期数別においては、各インターネットメディアとも3期目あたりに、更新頻度の谷がありました。この「3期の谷」の要因としては、党内の役職が与えられ多忙をきたすために活動数に谷ができるのか、またはそれそれの期数によっては野党時代、政権交代、与党時代での選挙が行われている政治的背景(魔の3期)も考えられる可能性があります。

以上が定量分析より導き出された国会議員のインターネットメディア利用度の全体的な傾向です。
この調査では、(a)政党別、(b)衆議院/参議院、(c)男女別、(d)年代別、(e)期数(当選回数)別、(f)在職年数別、(g)地域ブロック別に分けて、国会議員のSNS利用率との関連性を調査しました。
定量調査の大きな共通点として、利用するメディアは、在職年数や所属政党などの個々の立場・状況によって大きく変化し、使い分けられている傾向が見られました。つまり、個々の立場によってメディアの利用動機が変化している可能性が高いと考えられます。

定量分析―国会議員のSNS利用率になにが影響しているのか―

前節では、国会議員全710人を対象に、議員の肩書きで運営されている5つのメディア利用データを上述の集計手順をもとに取集しました。本節では、取集した中で全体の利用率が高い、Twitter、Facebook、YouTube のデータをもとに、 収集したデータから、(a)政党別、(b)衆議院/参議院、(c)男女別、(d)年代別、(e)期数(当選回数)別、(f)在職年数別、(g)地域ブロック別 ごとに分けて、「国会議員のSNS利用率になに(変数:属性等)が影響しているのか」を明らかにするために国会議員のメディア利用率との独立性(有意水準α = 0.05)を分析します。
結果として、図1の政党別、図2の衆参別、図3の男女別においては関連性が認められませんでした。一方、図4の年代別、図5の期数別、図6の在職年数別においては、関連性が確認されました。図7から図8に示す地域ブロック別では顕著な傾向が見られなかったが、大都市圏における高い利用率が窺えたので、図9および図10では、都道府県単位で人口、人口密度によって区分して分析しました。その結果、関連性が確認されました。

【関連】国会議員が一番使っているSNSメディアは一体何?!国会議員SNSメディア利用度調査 その1(中村よしみ)

図49 分析結果

以上の結論として、独立性検定により各変数とアカウント所持率との関係を調べた結果、国会議員のSNSアカウントの所有率(持つか持たないか)には最も関連しているのは、年齢であり、その次に関連が高いのは在職年数でした。まとめると以下の変数の順となりました。

年代 > 在職年数 > 期数(当選回数) > 都市化度(人口・人口密度) > 性別 > 衆・参

図50 全国会議員の年齢-在職年数の散布図
図51 全国会議員の年齢-期数の散布図

また、今回の調査の補足として、落選経験と2009年選挙の経験との相関についても検討してみました。
2020年12月時点の自民党所属衆議院議員のうち、2009年の第45回衆議院議員総選挙の当落で分けてみたところ、アカウント所有率は、

当選 95名: Facebook 79名 (83.2%), Twitter 56名 (58.9%), YouTube 55名 (57.9%), Instagram 34名 (35.8%)
落選 70名: Facebook 68名 (97.1%), Twitter 52名 (74.3%), YouTube 55名 (78.6%), Instagram 28名 (40.0%)

となり、いずれのサービスも落選した議員のアカウント所有率が高いことがわかりました。

しかし、Facebook, Twitter, YouTubeの更新頻度については、

Facebook
当選 79名: 24時間以内 30, 38.0%; 3日以内 41, 51.9%; 1週間以内 47, 59.5%; 1ヶ月以内 60, 75.9%
落選 68名: 24時間以内 20, 29.4%; 3日以内 34, 50.0%; 1週間以内 42, 61.8%; 1ヶ月以内 55, 80.9%
Twitter
当選 56名: 24時間以内 20, 35.7%; 3日以内 25, 44.6%; 1週間以内 47, 55.4%; 1ヶ月以内 38, 67.9%
落選 52名: 24時間以内 21, 40.4%; 3日以内 27, 51.9%; 1週間以内 31, 59.6%; 1ヶ月以内 37, 71.2%
YouTube
当選 55名: 1ヶ月以内 12, 21.8%; 3ヶ月以内 20, 36.4%; 6ヶ月以内 25 45.5%; 1年以内 30, 54.5%
落選 55名: 1ヶ月以内 8, 14.5%; 3ヶ月以内 13, 23.6%; 6ヶ月以内 20, 36.4%; 1年以内 25 45.5%

となり、第45回衆議院選挙で落選した議員の活発な発信は認められませんでした。

一方、2020年12月時点の衆議院議員のうち、2009年の第45回衆議院議員総選挙で当選している野党(立、国、共、維、社、無)議員の、第46,第47回衆議院議員総選挙での落選経験で分けてみたところ、アカウント所有率は、

落選あり 37名: Facebook 36名 (97.3%), Twitter 35名 (94.6%), YouTube 28名 (75.7%), Instagram 22名 (59.5%)
落選なし 52名: Facebook 43名 (82.7%), Twitter 43名 (82.7%), YouTube 40名 (76.9%), Instagram 25名 (48.1%)

となり、こちらも落選経験がある議員の高いアカウント所有率が読み取れました。
今回、激戦区/無風区の差については、データがないため今回の調査内では回答できませんが、来たる第49回総選挙では、このような観点からも分析してみたいと考えています。

最後に 国会議員のインターネットメディア利用度から何がわかるのか

今回の定量調査の目的は、国会議員のインターネットメディア利用度における全体の傾向を導き出すことで、国会議員のSNS利用率になに(変数:属性等)が影響しているのか分析を行うことでした。結果として、国会議員のSNS利用率と最も関連性が高いのは、年齢・在職年数である可能性が高いことが明らかになりました。

こうした定量的調査によって、変数間の関連性が明らかになる一方で、定量調査から導き出した説明変数が、実際の現場議員のSNS活用にどのような影響を与えているのか、具体的には、議員の個々の立場(在職年数)によって、どのような背景と動機を持ってSNSを活用しているのか、また、立場(在職年数)によって、どのような活用動機の違いがあるのか、こうした要因までは、定量データから読み取ることはできず、これは定量分析の限界と言えます。今後は、こうした定量データから読み取れない実際の議員の利用動機については定性的側面と混合して調査を進めていく必要性があるでしょう。

なかでも筆者が感じたのは、2020年時点では、政治家のSNS活用は当たり前となっており、大事なのはコンテンツの内容次第であるということです。例えば、活用の戦略を検討する際に、政策主張というコンテンツだけを発信しても新規ユーザーは振り向いてくれない、政策中心の投稿だけではなく、いかにユーザーが見てくれる環境づくりを行うか、一方的に価値観や政策を相手に訴えるのではなく、政治に関心がない人たちの心に届くような発信の仕方、表現の仕方、あるいはコンテンツを今後考えていかないといけない、といった課題を日々意識した戦略を実践しているアカウントが多くありました。

今後、政治家は SNS とどう向き合い、活用していくべきなのか。SNSを活用できるのは当たり前の時代となった今、より幅広い層のユーザーからの人気を得るための面白いコンテンツを作るセルフプロデュース力を向上させるのはもちろんのこと、政治家一人一人がその特色を活かしたタレント性を持つことが問われる時代になりつつあるのかもしれません。

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