【東京五輪】無観客決定の国立競技場に「未来予知」の賛辞続々

木漏れ日をイメージしてデザインされた国立競技場の観客席

1都3県で無観客開催が決まった東京五輪で、メインスタジアム・国立競技場への〝称賛〟の声がネット上に寄せられている。

「まるで無観客を予知したかのような完璧なデザイン」「無観客での五輪開催のためにあったかのように感じる」「これ考えた人はすごく先見の明があった」

こんな言葉が向けられた対象は、モザイク状、パッチワークのようにも見える国立競技場の観客席デザインだ。

「神宮の杜と調和する日本らしいスタジアム」がコンセプトの同競技場。管理する日本スポーツ振興センターのホームページによると、6万の座席は、木漏れ日をイメージして白、黄緑、グレー、深緑、濃茶の5色のイスがランダムに配置されている。まだら模様の視覚効果で、無人のスタジアムでも一見すると観客がいるように感じられる。2019年11月の竣工後、メディアに公開された際は「満員に見える斬新配色」などと報じられた。

開閉会式や陸上競技が行われる国立競技場。一般観客を入れないことが8日に決まり、まさにこの配色が効果を生むと思った人々がネットに前述のようなコメントを書き込んだとみられる。20年にサッカーやラグビーの試合で客席が埋まった当時、「窮屈」などと一部利用者から感想が発せられたが、今回の五輪無観客決定で「使い勝手の悪い席が、唯一役に立った」とデザインの〝貢献〟に言及する反応も見られた。

旧競技場を取り壊して建設された同競技場は、日本有数の建築家・隈研吾氏のデザインが採用された。当初は8万人収容の大規模スタジアムへの建て替えが決まっていたが、膨らむ建設費の問題などから白紙撤回に。19年秋に開催されたラグビーW杯に間に合わなくなり、同大会の決勝戦は横浜で行われた。

ラグビーW杯での使用が幻となり、ようやく訪れた五輪の晴れ舞台は、選手と関係者しかいない状態に。「お・も・て・な・し」も不発に終わりかねないスポーツの祭典にあって、国立競技場もコロナ禍の〝被害者〟か…。

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