【MLB】同じ特大2ラン被弾も「2年目とはボールは違う」 菊池雄星が敗戦で得た“引き出し”

ヤンキース戦に先発したマリナーズ・菊池雄星【写真:AP】

前半戦最後のヤンキース戦で5回8安打5失点で4敗目

■ヤンキース 5ー4 マリナーズ(日本時間8日・シアトル)

マリナーズの菊池雄星投手が7日(日本時間8日)、前半戦最後となる本拠地でのヤンキース戦に先発。フォームのバランスを欠き、軸球のカッターに本来の切れがなく、初回に3失点。2回には主砲のアーロン・ジャッジに左翼2階席に運ばれる特大2ランを浴び、4月23日のレッドソックス戦以来となる5点を献上。その後は、フォームを修正して、降板する5回までを無失点で切り抜けた。「なんとか5回までいけたのは今後にプラスになると思う」。8安打5失点で4敗目を喫し、メジャー自己最多の7勝目はならなかったが、今季の飛躍を象徴する修正力を発揮した登板だった。【木崎英夫】

初回の立ち上がり。気持ちが揺らいだ。「早くストライクが欲しい」。前夜の試合で、18安打12得点を叩き出したヤンキース打線への警戒心が、フォームに微妙なズレを生じさせた。

1回1死から連続四球。2死から3連打を許し3点を先制された。「後手後手のピッチングをしてしまい自分から崩れてしまった」

2回、1死三塁でジャッジを迎える。内野手は芝生の切れ目まで出る前進守備隊形を敷いた。追加点は許されない状況で、狙ったのは三振。その力みが失投につながった。

「あそこは前に飛ばさせたくない場面なので、三振を取りにいくことを描いていたんですけど、真ん中に入ってしまいました」

甘く入ったスライダーを捉えられ、打球は左翼のアッパーデッキに届いた。

51日ぶりの黒星も「とても楽しみに大事な後半戦を迎えられる」

メジャー1年目の2019年8月27日、菊池は同じシアトルで田中将大(現楽天)と投げ合い9敗目を喫した。10勝目を挙げた右腕との力の差を見せつけられた試合で、バックスクリーンに打ち込まれる特大の先制2ランをジャッジに食らっている。

苦手意識はあるのか。菊池の表情が変わった――。

「2年前のときとは投げているボールは違いますから。まったくないです」

球速も球威も増したストレートに、小さく曲がる質の高いカットボール、そして低めのボールゾーンへ変化させるスライダーとチェンジアップ。さらに、メカニクスのポイントを微調整する修正力を備える。3回表のウォームアップでは、左肘を高く上げ全7球を投げテークバックを意識。4回からは打者に対して、2段モーションの間を長くして本来の重心へと戻していった。

「(重心の)タメがないような状態で投げていましたので、4回からはしっかりと真っすぐに立ってから投げにいくことを意識して、うまく修正ができと思います」

情報の活用にも注意点を見出だした。序盤にストレートの割合が少なかったことについて「データに頼り過ぎた部分があったのかもしれません」と反省点に挙げた。

5月17日のタイガース戦以来となる、51日ぶりの黒星にも手応えがある。

「最後はいい形で終わりたかったというのが正直なところですけけれども、ただ、1試合1試合、自信を深めながら前半戦を投げられました。僕自身はとても楽しみに大事な後半戦を迎えられる気がします」

初選出されたオールスターは、13日(同14日)にコロラド州デンバーで開催される。真夏の祭典を前に、菊池雄星はまた一つ、引き出しを増やした。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

© 株式会社Creative2