相互作用で波打つ渦巻銀河、超大型望遠鏡が捉えた“くじら座”の「NGC 1055」

【▲ 渦巻銀河「NGC 1055」(Credit: ESO)】

こちらは「くじら座」の方向およそ5500万光年先にある渦巻銀河「NGC 1055」です。直径は天の川銀河(直径約10万光年)と比べて15パーセントほど大きいとされています。画像に写るNGC 1055の姿は、ぼんやりと明るく輝く中心部分のバルジと、その手前を横切る塵が豊富で暗いダストレーン(ダークレーン)の対比が印象的です。

NGC 1055は地球からはほぼ真横から見える、いわゆるエッジオン銀河のひとつです。正面を向けたフェイスオン銀河とは違い、渦巻銀河の特徴である渦巻腕の様子を観測することできませんが、エッジオン銀河にも観測上の利点があります。

たとえば、銀河円盤の厚みや中心のバルジの高さのように、銀河に対して垂直な方向に広がる構造を調べる際には、フェイスオン銀河よりもエッジオン銀河のほうが容易です。また、古い世代の恒星と新しい世代の恒星が銀河全体でどのように分布しているのか、その全体像を把握する上でもエッジオン銀河は役立つといいます。

ヨーロッパ南天天文台(ESO)によると、NGC 1055の場合は横から見た銀河円盤が反り返るように少し曲がっていて、まるで波打ちながら中心部分を横断しているように見えるといいます。この歪みはNGC 1055の近くにある別の渦巻銀河「M77」(NGC 1068とも)との相互作用によるものではないかと考えられています。このような銀河円盤の歪みは、天の川銀河をはじめNGC 1055以外の銀河でも見つかっています。

冒頭の画像はチリのパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT:Very Large Telescope)」の観測装置「FORS2」による光学観測データをもとに作成されたもので、ESOから2017年3月1日付で公開されています。

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Image Credit: ESO
Source: ESO
文/松村武宏

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