WRC2経験者のタマラ・モリナーロ、エクストリームEで“砂漠の女王”後任としてジョーカー就任

 地球環境保全活動とその啓蒙、さらに男女平等の理念を採用するまったく新しいEVオフロード選手権として、この2021年から始まった『Extreme E(エクストリームE)』シリーズ。その電動ワンメイクSUV選手権でレースコースの設計にも貢献しつつ、欠員が出た際にリザーブとして代役参戦するという“ジョーカー・ドライバー”の役割を担っていたユタ・クラインシュミットが、アプト・クプラXEに正式加入するというニュースを受け、シリーズは新たなチャンピオンシップドライバーとしてタマラ・モリナーロの起用をアナウンスした。

 史上唯一の女性ダカールラリー総合優勝経験者で、現在58歳になる“砂漠の女王”ことクラインシュミットは、この6月下旬にも離脱者が出たチームの補充要員としてアプト・クプラXEへの正式加入が発表され、マティアス・エクストロームと強力なペアを結成し、レギュラーとして『e-CUPRA ABT XE1』をドライブすることが決まった。

 その代替要員として白羽の矢が立ったイタリア出身のモリナーロは、11歳でモータースポーツ・キャリアを開始するとオーストリアやドイツの国内ラリー選手権に挑戦。主にオペル・アダムR2をドライブし、2017年にはERCヨーロッパ・ラリー選手権に昇格すると、現在アンドレッティ・ユナイテッド・エクストリームEから参戦するケイティ・マニングスらと勝負を繰り広げ、42回のステージウインを含む4勝を挙げ、ERCレディストロフィーのタイトルを獲得した。

 その実績を提げ、2018年にはフォード・フィエスタR5でWRC世界ラリー選手権のWRC2クラスにもスポット参戦し、翌2019年にはシトロエンC3 R5で引き続きWRC2のラリー・スウェーデンなどに挑戦する傍ら、新設ラリークロス・シリーズの『TitansRX(タイタンRX)』にもエントリー。シリーズ唯一の女性ドライバーとして国際的実績を持つトップドライバーたちを相手に、予選ヒートで複数の勝利を挙げランキング5位に喰い込んだ。

オペル・ラリー・ジュニアチームのメンバーとして、アダムR2をドライブしてERCレディス・トロフィーに参戦していたタマラ・モリナーロ
ERCレディストロフィーを獲得した2017年の年間表彰式では、ケイティ・マニングス(右)らと壇上に

■「このシリーズで働く機会は夢の実現と言える」とモリナーロ

 2020年からはイタリア国内のグラベル選手権に主戦場を移し、U25部門2位、レディース部門1位だった昨季に続き、この2021年もシリーズを追いかけているモリナーロだが、今回の契約ですでに“ジョーカー”としての役割を担うティモ・シャイダーと並び、シリーズのコースダイレクターやアドバイザー兼バックアップドライバーの職務を担当する。

「私自身、最初からとても興味を持ってシリーズをフォローしてきたから、この過去数カ月間は、エクストリームEに参加するため懸命取り組んできた」と語った現在23歳のモリナーロ。

「これまででもっともエキサイティングでフェアなレースフォーマットのひとつだと思うし、目的(地球環境保全活動など)を持ってレースができる環境は、さらなるモチベーションを与えてくれる」

「私の目標はつねにモータースポーツ界の頂点に挑むことだった。だからこそ、このシリーズで働く機会は夢の実現と言える。可能な限り最善の方法で仕事をし、全力を尽くすつもりよ。グリーンランドでの週末が待ちきれない気分ね!」

 そのグリーンランド・カンゲルルススアークで争われる第3戦の北極圏『Arctic X Prix』は、8月28日~29日の開催が予定されている。

現在は開催休止中の『TitansRX(タイタンRX)』にも参戦し、ランキング5位を記録した
チーフチャンピオンシップオフィサーのジェームス・テイラーも「この若さで、ラリーとラリークロス双方で素晴らしい実績を持つ」と期待を寄せる

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