パッケージに見る日本人の美意識と生:「包む-日本の伝統パッケージ」が目黒区美術館で7月13日より開催

1972年に出版された写真集『包』(毎日新聞社刊)の著者であり、国内の伝統的なパッケージの収集と研究を通じて日本の技術や美意識の啓蒙に努めたデザイナー、岡秀行。目黒区美術館に収蔵された岡の「伝統パッケージ」コレクションが10年ぶりに公開される。

岡が収集し「伝統パッケージ」と呼称したコレクションには、素材とデザインに特徴が見られる。素材には、主に木、竹、笹、藁など日本の風土に育まれた自然素材や、陶器、和紙、絣(かすり)など古くから日本人に馴染みのあるものを使用。デザインは実用性に重きを置きながらもシンプルな造形美と機能美を持つ「生活の知恵の結晶として生み出された形」や、伝統の技とも言うべき「高度な包装技術と美的感覚を持つもの」が重視されている。

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こうした特徴からもわかるように、「伝統パッケージ」には見た目や形の美しさだけでなく、「包むこと」自体に重要な意味づけをしてきた日本人の美意識や、「いかに美しく包むか」という職人や作り手のプライドと手わざの美が宿っており、岡の眼差しが「かたち」の奥にひそむ日本人の「心」へと注がれていたことが見出せる。

岡のコレクションは、書籍だけでなく世界各国で開催された展覧会を通じて「TSUTSUMU」という言葉とともに大きな反響を呼んだ。1975年のニューヨーク、ジャパンソサエティ・ギャラリーでの展覧会を皮切りに全米各地を巡回した後、1980年代半ばにかけて様々な国で展覧会が開催され高い評価を得た。その後、1988年に目黒区美術館にて「5つの卵はいかにして包まれたか―日本の伝統パッケージ」展を開催。これは、日本の公立美術館で岡のパッケージ・コレクションを紹介する初の展覧会となった。同展終了後、出品されたパッケージ群は目黒区美術館に「〈包む〉コレクション」として収蔵。今回の展示は2011年に同館にて所蔵作品展として紹介されて以来、3度目の展覧会となる。

本展は、岡の収集コンセプトに基づき主にパッケージの素材ごとに分けて展示される。包装素材が植物の葉など保管の出来ないものや、一部のパッケージについては写真での展示となる予定だ。

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岡は「包むことについて考えるのは、人間の生活のすべてについて考えることに他ならない」という言葉を残している。伝統パッケージは、現代を生きる私たちにとっても今の生活を見直すきっかけとなりうるだろう。

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「包む―日本の伝統パッケージ」
会期:2021年7月13日〜2021年9月5日
開館時間:10:00〜18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
入場料:一般 800円、大学生・高校生・65歳以上 600円、中学生以下・障害者手帳提示と付き添い1名 無料
会場:目黒区美術館
ウェブサイト:https://mmat.jp/index.html

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