【インタビュー】7月19日・Marvelous5周年大会で膝のケガから復帰の彩羽匠

長与千種率いる女子プロレス団体「Marvelous」(マーベラス)のエースファイターである彩羽 匠(いろは・たくみ)が、7月19日の東京・後楽園ホール大会で復帰する。昨年10・26新木場大会の試合中に右膝膝前十字靭帯、右膝内側側副靭帯、右膝外側半月板を損傷して戦線離脱を余儀なくされたが、Marvelous旗揚げ5周年記念大会で聖地回帰をはたす。復帰を間近に控えた“次代の創造者”に迫った。(interviewer/伊藤雅奈子)

――昨年10月にケガをした瞬間のことを教えてください。

当日の映像をその後主治医と何回も見返したんですけど、(桃野)美桜の技に耐えていて、汗をかいてるから、ツルッと滑った数ミリ、数センチで膝に悪い角度で入ってしまったんです。防ぎようがあったのかといえば、これに関してはなかったですね。4回ほど「バキ、バキ、バキ、バキ」って音がして、脱臼もしたので悪化した。足が飛んでいったと思ったんですよ、ヘンな表現ですけど。力が入らない、動かない、パニック、やばい、終わった、膝が……って。タッグマッチだったのでコーナーに行ってチェンジをする、そのわずか1mが遠くて、混乱してしまいました。

――医師から「全治10か月」と告げられたとき、どんなことが頭をよぎりましたか?

ちょうどプロレスラーとして賭けに出ようとしていた時期だったんですね。プロレスラーって、なかなか頭と体が一致しないとか、自分が伝えたいことがお客さんに伝わりにくいとかのジレンマがあるんですけど、昨年のあの時期はすべてのタイミングが一致していたので、今休んだらヤバイんじゃないかって。もし手術をしないといけないのなら、テーピングでがっちり固定して試合をやれるとこまでやって、引退して手術と……そういう考えが出ました。一瞬ですけど。

――その考えは変わったと?

「10カ月」と言われたときの病院には、長与さんが付いて来てくださってたんですね。「今休むことは自分の選択肢になくて、どう続けるかという思いのほうが強いです」って伝えたら、「会社としては休まれるのは痛いし、匠の気持ちもすごくわかる。でも、匠には今じゃなく、今後やってほしいプランがあるから、とりあえず治して、今以上のパフォーマンスを見せてほしい」って言ってくださったんです。そのときは今の自分しか見てなくて、今後といっても1年ぐらい先。でも、長与さんにはもっと先のビジョンがあって、そう言われたとき、手術を決めましたね。

――手術は滞りなく終えて……。

当初2時間半といわれてたんですけど、4時間半ぐらいかかったんです。麻酔がかからなかったんですよ。アスリートだと普通の麻酔の量を入れても、体が暴れはじめることがあるんですけど、自分の場合もそうで、倍の量を入れたと。意識が戻るまでは8時間ぐらい動けないので、ごはんを出されて「これ、食べられますか?」って聞かれても、プロレスラーって「大丈夫です」って言うのがクセなので(笑)、「大丈夫です」って。声は出せて、おなかもすいてるのに、食べられないという。現実か夢かわからない時間が過ぎました。

――欠場して落ちた気持ちを再び上げることができたきっかけはありますか?

松葉杖をはずして歩けなくなったとき、目の前が暗くなったんです、こんなにがんばったのに、こんなもんかって。そのときSNSで、「前十字靭帯の負傷は蹴りの選手にとって致命傷だ」みたいな書き込みをたくさん見て、自分は手術した右足が蹴り足なんですけど、逆に「いやっ、うちは普通じゃないから見とけよ!」って感情になりました。そもそもプロレスラーは凡人じゃないんだから、周りがどれだけ「ダメだ」「無理だ」と言っても、こっちは普通の人間じゃないんだよって、切り替えた瞬間でもありましたね。あと、「RIZIN」の堀口恭司選手が自分と同じ右膝前十字靭帯断裂と半月板損傷で1年4カ月ほど休んだんですけど、復帰して、ケガした足で立って、蹴って、王座を取り戻した(20年12・31さいたまスーパーアリーナ大会)。あれを観たとき、不安が確証に変わって、勇気をもらいました。

――そんな彩羽選手の復帰戦は、Marvelous旗揚げ5周年のアニバーサリー大会でもあります。

自分は旗揚げ戦から立っていますけど、最初は少ない人数ではじまって、そのうちに後輩がどんどん増えていって、この日にまた新しくデビューする子(後藤公美)もいます。5年を迎えられて、旗揚げ当初に描いたとおりになっているかといえばそうではないけれども、後輩によって成長できた部分はすごく多いですね。Marvelousは選手が試合だけじゃなくて、プロモーションのあり方についても考えていて、お金をたくさん使うことはできないけど、YouTubeを毎日配信するとか、小さいことでも、今の自分たちができることを地道にやっていこうっていう意識の強さがあるんですね。かつ、プロレスのレベルを上げていこうとする精神も強い。なので、後楽園はここからの追い上げを見せられる大会になるでしょうし、この先の後楽園3大会(8月8日、8月20日、10月27日)も含めて、どれだけの闘いを見せて、どれだけお客さんを集められるか、自分たちにとっての勝負でもある。気を引き締めてやっていきますし、成長してる後輩たちに食われないよう、自分も変わってみせます。

■Marvelous5周年大会

7月19日(月・祝)、17時15分開場・18時開始

東京・後楽園ホール

・後藤公美デビュー戦

・【彩羽匠復帰戦】彩羽匠vs響

※ほか好カード多数

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