入国叶わぬフェネストラズのツイートに共感多数も。外国人の入国への現状打開は不透明

 2021年に全日本スーパーフォーミュラ選手権とスーパーGTに参戦する予定だったサッシャ・フェネストラズが7月4日、滞在しているイギリスのロンドンで自身のTwitterアカウント(@sachafenestraz)にツイートした。大阪に向かう日本航空の出発便を示す画像とともに、日本への入国が叶わない状況を伝えた。

 アルゼンチンとフランスの国籍をもつフェネストラズは、ルノーの育成組織出身でFIAヨーロピアンF3を経て、2019年に新たな活躍の場を求め来日。都内に住み、全日本F3選手権のチャンピオンを獲得すると、2020年にスーパーGT GT500クラスと全日本スーパーフォーミュラ選手権のシートを得て、印象的な活躍をみせていた。

 そんなフェネストラズだが、2021年のシーズン開幕前に日本を離れて以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響による渡航制限のため、ビザが下りず再来日ができていない。フェネストラズ自身やチームも手を尽くし、再来日を目指しているが、現段階で実現できていない。

 そんななか、ロンドンに移ったフェネストラズは4日、空港の出発案内のディスプレイのJAL大阪行きの画像を掲載し、英語と日本語でツイートした。

「今日ある飛行場で日本に向かうたくさんのアスリート(スポーツ選手)を見掛けました。考えさせられました。今の僕の状況。この間まで3年間日本で生活して、レースに参戦していたにもかかわらず、どうも、僕はアスリートとしていまだに認められず、まだ日本の入国ビザを発行してもらえないです(日本語ツイートより)」とフェネストラズ。

 英語のツイートには「イギリスのアスリート」と記されており、オリンピックのイギリス選手団と推測される。現在オリンピックについては選手の来日が本格化している状況だ。

 日本を拠点に活動していながら、いまだに再来日が叶わない状況に対し、フェネストラズのツイートには多くの反響が寄せられている。ファンはもちろん、関係者からも待つ声が届けられた。ただ、現状はまだまだ厳しい状況が続いているようだ。

■他のプロスポーツも影響

 そんなフェネストラズの状況だが、他スポーツも外国人の入国については難しい状況がある。スポーツ紙の報道によれば、サッカーJリーグでは夏の移籍ウインドーがオープンするが、外国人選手については、オリンピックと無関係の選手に対するビザ発給が非常に厳しいという方針がクラブに伝えられているという。Jリーグであれば、今季降格がかかるチームが例年より多いなか、夏の戦力補強は各クラブにとって2〜3年先の経営まで関わる問題。外国人の起用は手っ取り早い強化のひとつだ。この方針は若干緩和される傾向ではあるようだが……。

 そしてモータースポーツでも、当然ドライブできなければ収入や今後のキャリアに関わる。特にモータースポーツは、体ひとつあればいつでもどこでもできる競技ではない。オリンピックも選手にとっては4年に1回の重要な舞台だが、プロのアスリートにとっては一年一年が勝負で、フェネストラズに至っては、実質携わる競技に対し、練習すらできていないということだ。

 現在フェネストラズの来日に向けて、チームやスーパーフォーミュラを運営する日本レースプロモーション(JRP)、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションなど、関係者も努力は続けている状況だが、打開は不透明だ。現段階では、外国人の入国については『特段の事情(オリンピック、パラリンピックの関係者はこれに含まれる』がなければ外国人は入国できないが、もしサッカーで認められるのならば、モータースポーツでも認められるよう願わずにはいられない。

 オリンピック開催に際し、海外から多くの選手が来日するため、その防疫に全力を尽くさなければならない状況、また国内の状況を見ながらの官公庁の方針があることは理解できる。また、短期滞在か長期滞在かでも異なるだろう。ただ、日本のスポーツを支えてきたプロスポーツの関係者の来日が、防疫対策いかんに関わらず認められないのは、モータースポーツだろうとサッカーだろうと、やるせない状況だ。

 現段階では、逆に日本からヨーロッパやアメリカに渡ることは大きく緩和されつつある。特に新型コロナウイルスのワクチンを接種した場合は非常に手続きもスムーズだという。現在ヨーロッパを中心に、海外のシリーズで活動する関係者も「もう通常に戻っている」という。ワクチンを打っていて、その証明があれば、日本からヨーロッパ等に行くときには、すでに以前とほぼ変わらない入国ができるとのことだ。

 モータースポーツやサッカーだけでなく、他競技でも海外での大会に出場する選手も増えているが、すでに2020年の段階から、モータースポーツの世界でも海外では選手や関係者への渡航の配慮がなされ、選手の入国には特別なレターが出されスムーズな手続きが行われていた。こういったアスリートが入国できない状況は「日本だけですよ」という声も聞く。

 また、海外のスポーツではファンがスタンドに戻り、多くがマスクを着用せずに観戦している姿が目につくようになってきた。コロナ禍からどうやって日常を取り戻していくのか。日本とは当然すべての状況が異なり、安易に海外と同じにすべきとは思わないが、一刻も早く日本、そして世界の状況が改善し、フェネストラズの来日、そして以前のようにスポーツが、本来のグローバルな状況に戻るのを願うばかりだ。

 ちなみに、相次ぐオリンピックの無観客決定も、プロスポーツの側からすると憂慮せざるを得ない流れだ。この1年半、多くのスポーツでは主催者、そしてファンも身を切りながら、なんとか有観客開催を続けてきた。その結果、少なくともモータースポーツでは感染者もクラスターも出ていない。ルールを守らないごく少数の者や、声高に反対ばかりを唱えるごく一部の世論に流され、イベントの観客動員が“悪”とはされたくないところだ。

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