【追う!マイ・カナガワ】「日本のサグラダ・ファミリア」横浜駅、ついに駅ビル工事が完成…でも雨漏り対策のバケツが

【1】JR横浜駅改札構内の広場に設置された雨漏り対策のチューブ=6月上旬

 「横浜駅はあんなにきれいになったのに、いまだに構内に雨漏り対策のビニールチューブやバケツが随所に配置されています。なぜでしょうか」。横浜市内の会社員男性(53)から「追う! マイ・カナガワ」取材班に疑問が寄せられた。駅ビルも完成したばかりで見た目はピカピカのハマの玄関口。梅雨シーズンに事情を探ってみた。

■“日本のサグラダ・ファミリア”

 1日の平均乗降者数が国内4位、約84万人に上るJR横浜駅。鉄道6社が乗り入れる巨大ターミナル駅は、いつもあちこちで改修をしている。終わらない工事をスペインの世界遺産になぞらえて“日本のサグラダ・ファミリア”とやゆする声もあるほどだ。

 JR東日本は昨年、横浜駅西口直結の高層ビル「JR横浜タワー」を完成させた。西口と東口をつなぐ通路も改修され、同社によると長年続いた西口の工事は一区切りを迎えたという。

 商業施設やオフィスなどが入居する同ビルのアトリウムは4階まで吹き抜けで、明るく開放的だ。駅全体がリニューアルされたような印象も受けるが、同駅改札内の「エキュートエディション横浜」広場の天井などに、雨漏り対策用の透明のチューブ(写真【1】)が複数ぶら下がっている。

 記者は、停滞する梅雨前線の影響で県内で大雨警報が出された7月2日、同駅構内を歩いてみた。

 横浜駅地下1階の中央自由通路を見渡すと、中央北改札の真横に青いバケツを見つけた(写真【2】)。近くの店舗で店員に聞くと、「駅員さんが雨の日にバケツを置いて対策しているのを見掛けるが、あまり気にならないですよ」。バケツを持った駅員の姿は、日常風景に溶け込んでいる。

■基本構造物は1981年築

 工事は一段落したはずなのに、なぜ雨漏りは続くのか。JR東日本横浜支社に問い合わせた。

 担当者は「西口周辺のリニューアル工事などと雨漏りの関連はないと考えている」とした上で、「排水能力を超えた降雨や、排水設備にごみが堆積するなどした排水不良が雨漏りの原因と考えられます」と説明する。梅雨の時期は駅員らが、点検や清掃に追われているようだ。

 さらに聞くと、改良工事を重ねている中央自由通路などの内装は新しく見えても、線路を支える駅の基本的な構造物は一番古い部分で同通路が開通した1981年に建設されたものだと分かった。

 「コンクリート構造物に設けた伸縮目地の劣化による雨漏りが発生している可能性があります」。温度変化の影響で伸縮するコンクリートの亀裂を避けるために設けられた目地の経年劣化が関係していることも考えられるという。

 担当者は「必要に応じて排水設備などの改良を検討する」というが、駅の構造物そのものをリニューアルしなければ雨漏りは続くのかもしれない。

■終わった? 終わらない?

 投稿者の男性は、こんなことも言っていた。

 「横浜市民としては、横浜駅はいつも工事中で、永遠に完成しない位置付け。文句を言いながらもほほ笑ましく見つめています」

 雨漏りしても進化は続ける“日本のサグラダ・ファミリア”を温かく見守ってこそ、ハマッ子ということか。

 ところで、終わらない工事はもう終わったのか。そこも気になるが、JRの担当者は「横浜駅では当社以外でも工事を行っています。全ての工事の終了時期については決まっておりません」と言うのだった。

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