「申し訳ないけれど理解できない」OBが疑問視した阪神バッテリーの“痛恨の1球”

阪神・梅野隆太郎【写真:荒川祐史】

カウント0-2と追い込まれ「ゴロを打とうと必死」だった打者心理

■巨人 1ー0 阪神(11日・甲子園)

セ・リーグ首位の阪神は11日、本拠地・甲子園球場で2位の巨人に0-1の零封負け。1.5ゲーム差に肉薄された。前半戦最後の直接対決を終え、今季対戦成績は7勝8敗と黒星が先行。昨年まで9年連続負け越しで、13年連続勝ち越しなしとやられっ放しの宿敵に、今季もまた飲み込まれてしまうのだろうか……。

阪神先発の西勇輝投手は、9回115球で4安打1失点で完投したが、打線の援護がなく通算100勝目を逃した。あえて酷な見方をすれば、ここぞの場面で梅野隆太郎捕手とのバッテリー間で決めた配球に疑問も残った。

0-0で迎えた8回。西勇は先頭の亀井に右中間フェンス直撃の二塁打を浴び、北村の送りバントで1死三塁を迎えた。ここで大城をカウント0-2と追い込んだが、3球目の外角低めの落ちる球をミートされ、三遊間を破られて決勝点を与え、天を仰いだ。

現役時代にヤクルト、阪神など4球団で通算21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「阪神バッテリーがあの場面で、狙って3球勝負に行ったのであれば、申し訳ないけれど僕には理解できない」と首をひねる。

三塁走者は“走塁のスペシャリスト”の代走・増田大。ゴロになった瞬間にスタートを切る「ゴロゴー」、もしくは、ボールがバットに当たった瞬間、ライナーの場合併殺となるリスクを冒して走り出す「ギャンブルスタート」が求められる場面だった。

ボールにするつもりでも「非常に危険なコースだったことは間違いない」

「考えてみてほしい。あの場面で、すでに追い込まれてしまった大城が絶対に避けたいことは何か? 三振です。何とかゴロを打とうと必死の大城に対し、低めの変化球はおあつらえ向きでした」と野口氏は指摘。「バッテリーとしては、あの場面のあのカウントでストライクゾーンへの球はいらない。高めのボール球を要求し、空振りかポップフライになればもうけもの──、というのがオーソドックスな考え方だと思います」と言う。

さらに野口氏は「増田大が早めにスタートを切ろうとすることは予想がつくので、はっきりしたボール球を要求し、ピックオフで三塁牽制刺を狙う手もある」とも。相手の打者や走者の心理を読み切れていなかったと言うべきか……。

「ひょっとすると、ボールにするつもりがストライクゾーンに行ってしまったのかもしれないけれど、西勇の投球数が100を超え、細かいコントロールに不安があった状況を考えれば、非常に危険なコースだったことは間違いない」と野口氏はOBとして悔んでも悔み切れない様子だ。

もちろん、味方打線が1安打1四球無得点に抑え込まれたこの試合で、バッテリーに責任を問うことはできない。とはいえ、ここ1番の詰めの部分で改めて巨人との差を見せつけられたと言ったら、厳し過ぎるだろうか。

ペナントレースは14日で一区切り。オールスター、東京五輪開催に伴う中断期間を経て、1か月後の8月13日に再開される。次のTG直接対決は、なんと9月3日(甲子園)まで待たなければならない。近年稀に見る名門球団同士のマッチレースは果たして、どんな結末を迎えるのだろうか。

【動画】阪神OBが「理解できない」と一刀両断した決勝痛打のシーン

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(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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