【七夕賞】“志願の騎乗”戸崎圭の思いが成就 トーラスジェミニが三位一体で重賞初制覇 

会心の勝利に笑顔がはじける戸崎圭

11日、福島競馬場で行われたGⅢ第57回七夕賞(芝2000メートル)はトーラスジェミニ(牡5・小桧山)が、単勝20倍以下が10頭という大混戦に断を下した。勝ち時計2分02秒2(稍重)。デビューから29戦目にしてうれしい重賞初制覇を飾った。勝者と敗者を分けたポイントはどこにあったか――。梅雨空の下で行われた一戦をリポートする。

午前中から断続的に降り続いた雨は9R直前に土砂降りに。一時は上がったものの、メインのファンファーレが聞こえてくるころには再び大粒の雨が降り注いだ。大量の水分を含んだ丈の長い芝生は執拗にスタミナを奪う。しかし、それゆえ途中から激しい攻防となった昨年とは一転、今年は各ジョッキーがけん制し合い、至って落ち着いた流れとなった。

勝ったトーラスジェミニは好スタートを切って逃げたロザムールの2番手を難なく確保。同じく先行型のブラックマジックやショウナンバルディは後方に控え、前半4ハロンは48秒4。オープンにしては遅めのラップ構成になった。道中もマクってくるような馬もおらず、小回り競馬らしい先行馬のワンツーとなった。

殊勲の戸崎圭は「前走(安田記念5着)はGⅠの強いメンバーでも頑張っていたし、その後はここを目標にいい仕上がりにありました。だから勝てて本当に良かったと思います」。まずは陣営にねぎらいの言葉を贈ってこう続けた。「勢いがついたらハナへ行こうかと思っていましたが、内に行く馬がいましたから。リズム重視で進めました。ゆったりとしたペースで行けたので手応えは十分。ただ、距離の心配があって、やはり最後は一杯に。それでもしのいだのはこの馬の力だと思います」。笑顔でレースを振り返った。

一方、管理する小桧山調教師は「これだけの一流騎手が安田記念の後に“もう1回、乗せてくれ”と。もし乗ってくれなければ巴賞へ行こうかと思っていたけど、乗ってくれるようなのでここへ。今日は装鞍所でうるさいほど気合が乗っていたし、雨降りの馬場も良かった。何もかもがうまくいったよ」。厩舎200勝目でのタイトル奪取に終始、ご機嫌だった。

むろん、平凡な勝ち時計もさることながら展開の後押しがあったのは否めず、これから快進撃が続くかどうかは未知数だ。とはいえ、改めてホースマンらの連携の大事さを思い知らされたのも事実。天の川にはお目にかかれなかったが、彦星(=調教師)と織姫(=騎手)の思いは、めでたく成就した今年の七夕賞であった。

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