最高裁国民審査にみる地域ごとの特徴について(データアナリスト・渡邉秀成)

第49回衆議院選挙が迫っています。衆議院選挙では政党ごとに選挙に強い地域が存在することが知られています。
選挙制度が中選挙区制度から小選挙区制度に変更されても、政党ごとに得票数が多い地域はあまり変化がありません。

小選挙区制になってからの政党ごとの得票率が高い地域については、ウェブ上で見ることがありますが、中選挙区における選挙区別、政党別得票率の色分け地図はあまりみかけることがないので、第23回から第40回衆議院選挙 中選挙区選挙における政党別、選挙区別に得票率が高い地域を色分け地図にしたものを作成しました。

その地図が下記になります。
(選挙区を当時の市区町村名から割り出し総務省地図データを改変して中選挙区地図を作成しております)

【図1中選挙区選挙区別政党別得票率が高い地域】

ここでは自由民主党、日本共産党、社会党に関するデータを色分け地図で紹介しましたが、過去から現在に至るまで政党ごとに得票率が高い地域はおおよそ決まっている傾向があります。

直近選挙に関する政党ごとに得票率の高い地域については下記リンク先をご覧ください。
https://datastats-election.info

このような地域ごとの有権者の各政党に対する投票傾向というのは、最高裁判所の国民審査制度でも同様に観察することができます。

最高裁判所裁判官の国民審査についてのグラフや、色分け地図もあまり見ることがないので作成してみました。最高裁判所裁判官の国民審査というのは、憲法第79条第2項,第3項と最高裁判所国民審査法に基づいている制度で、衆議院選挙が執行される際に同時に行われるものです。

衆議院選挙の際に罷免したい裁判官の欄に☓をつける投票用紙に記入するものです。あの投票用紙に罷免を可とする(裁判官の名前の上に☓)をつける割合に都道府県ごとの特徴が出ます。

平成15年から平成29年までの最高裁判所国民審査で罷免を可とする割合についてグラフ化したものが下記になります。

【図2 47都道府県別国民審査罷免を可とする割合_折れ線グラフ】

この罷免を可とする割合を都道府県別に色分け地図に落とし込んだものが下記図になります。

【図3 47都道府県別国民審査罷免を可とする割合】

北海道、沖縄県が特に罷免を可とする割合が特に多く、都市部でもその割合が多い傾向にあります。

国民審査データをもとに日本を色分けしていくと、政党ごとに得票率が高い地域が存在するように、国民審査でも罷免を可とする割合が高い地域とそうではない地域があることがわかります。

最高裁判例を見ていると、公務員の政治的行為に関連した猿払事件*(北海道猿払村)等、北海道、沖縄県に関連した有名判例を見かけることも多いので、地域的に憲法等に関わる論点が発生しやすかったり、過去に発生していたりと、各種事例が身近にあるので、国民審査で罷免を可とする人の割合に関連しているのでしょうか?

有権者一人ひとりがそれぞれの意思に基づいて行動しているはずなのですが、それらの票一つ一つが集まり、地域ごとの大きなまとまりで観察してみると、地域ごとに一定の傾向が出るというのはとても興味深く感じます。

また最高裁判所裁判官の国民審査では審査する裁判官の人数により罷免を可とする割合に変化があるのではないか?等の研究もなされており、人の行動パターン不思議さに気付かされます。

間近に迫っている第49回衆議院選挙ですが、令和になり初めての国民審査になります。

ご自身が投票する都道府県では最高裁判所裁判官を罷免を可とする割合が、全国と比較すると高いのか、低いのかを頭に入れた上で、投票に向かうと、いつもと異なる気持ちで投票に向かえるかもしれません。

今回は最高裁判所裁判官国民審査データから地域ごとの特徴についてみてきました。

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