主要メーカー123社 2022年3月期決算「想定為替レート」調査

 東証1部、2部上場の主要メーカー123社では、2021年度(2022年3月期)決算の期初想定為替レートを1ドル=105円に設定した企業が最も多く、約6割(58.5%)を占めた。平均値は1ドル=105.5円だった。
 前期の2021年3月期決算(2020年4月-2021年3月)は、期初時点で新型コロナウイルスの見極めが困難として業績見通しが立たたない企業が続出。約7割が次期の業績予想を「未定」とし、想定為替レートも開示しない異例の事態となった。その後、2021年3月期の円相場は、期初1ドル=107円前後でスタートし、2020年12月には102円台まで円高が進んだ。だが、年明け以降は反転し、期末は108~109円台の円安基調で推移した。平均では105円となったため、2022年3月期は期初設定レートを「1ドル=105円」としたメーカーが目立った。

  • ※東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機器メーカー(3月本決算企業)123社の2020年3月期と2021年3月期の想定為替レートを開示資料などをもとに集計し、比較した。

想定為替レート 1ドル=105円が約6割

 主要メーカー123社の2022年3月期決算(本決算)の見通しで、期初の対ドル想定レートは1ドル=105円が72社と最多で、約6割(構成比58.5%)を占めた。次いで108円が13社(同10.5%)、107円が9社(同7.3%)、106円が6社(同4.8%)と続き、平均値は1ドル=105.5円だった。
 想定為替レートの対ドル最高値は100円(1社)、最安値は110円(4社)だった。また、123社のうち、5社が期初時点で業績予想を未定とし、想定為替レートも開示していない。

1年前とのレート比較 「変更なし」が6割超え

 1年前の期初想定為替レートを開示した主要メーカーは40社で、「1ドル=105円」に設定した企業が21社で、約半数を占めていた。
 1年前と2021年度期初が比較できる39社のうち、「105円→105円」と、レートを変更せず据え置いた企業が20社(構成比51.2%)で最も多かった。
 次いで、「108円→105円」が4社(同10.2%)、「108円→108円」、「107円→107円」と前年と据え置いた企業がそれぞれ2社(同5.1%)だった。
 1年前と比較して「変更なし」(据え置き)が25社(構成比64.1%)と6割を超えた。このほか「円高へのシフト」が9社(同23.0%)、「円安へのシフト」が5社(同12.8%)だった。

対ユーロ想定為替レート、1ユーロ=125円が最多

 主要メーカー123社のうち、ユーロの想定為替レートが判明したのは76社だった。このうち、1ユーロ=125円が最多で34社(構成比44.7%)だった。次いで128円が10社、120円が8社、130円が7社と続く。想定レートの対ユーロ最高値は117円、最安値は131円で、平均値は1ユーロ=125.4円だった。

 前年度(2021年3月期)の円相場は、コロナ禍による世界経済の混乱があったが、比較的落ち着いて推移し、輸出企業の大きな業績リスク要因とはならなかった。このため、今期(2022年3月期)の想定為替レートも据え置く企業が目立った。
 足元の円相場は1ドル110円前後と円安基調で推移しているが、かつて2020年3月には新型コロナの世界的流行を背景に一時的に乱高下し、1ドル=101円台まで円高が進行した。為替相場は新型コロナの世界的な感染や収束見通し、米国をはじめとした各国の政策にも大きく左右され、仮に円高に振れると輸出産業の業績下振れ要因になりかねない。引き続き為替変動による企業への影響を注視する必要がある。

想定為替レート

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