25年ぶりVが現実味帯びるオリックス 優勝争い演じた7年前との「共通点」と「相違点」

オリックス・杉本杉本裕太郎、宮城大弥、吉田正尚(左から)【写真:荒川祐史】

2014年は鷹とゲーム差なしの2位、金子がMVPと沢村賞を受賞

オリックスが交流戦優勝の勢いそのままに快進撃を続け、7月11日終了時点で2位に2ゲーム差をつけて首位に立っている。1996年以来となるリーグ優勝の可能性も感じさせるが、オリックスの優勝争いといえば、優勝したソフトバンクと最後まで熾烈なマッチレースを繰り広げ、ゲーム差なしの2位となった2014年の戦いが記憶に新しい。

優勝争いをするチームには往々にして明確な強みがあるが、2014年と2021年のオリックスはそれぞれどこにあるだろうか。今回は「先発」「リリーフ」「打線」の3部門を比較することで相違点、共通点を探っていきたい。

2014年と2021年の主な先発投手の成績【画像:パ・リーグ インサイト】

まず、先発投手の顔ぶれとその成績について見ていこう。

2014年はエースの金子千尋投手が防御率1点台の活躍を見せ、最多勝、最優秀防御率、沢村賞、シーズンMVPと数多くのタイトルを受賞。加えて、西勇輝投手とブランドン・ディクソン投手も規定投球回に到達し、防御率3点台と一定の投球を見せた。

加えて、プロ2年目の松葉貴大投手もシーズン1敗と安定した投球を披露し、貴重な左の先発として奮闘した。しかし、東明大貴投手と吉田一将投手はいずれも投球回は100イニングに届かず5勝どまりと、5番手以降の先発投手にはやや課題を残していた。

2014年と2021年の主なリリーフ投手の成績【画像:パ・リーグ インサイト】

今年は山本&宮城ら先発陣がチームを牽引、7年前は救援陣が充実

一方、今年のチームは先発投手が明確なストロングポイントになっている。山本由伸投手が防御率1.82、宮城大弥投手が同じく2.10と、かつての金子のような抜群の安定感を発揮。先発3本柱の一角を担っていた山岡泰輔投手の離脱は痛手だが、この3投手はいずれも投球回を上回る奪三振を記録しており、自力でピンチを脱せる点も特徴といえる。

また、規定投球回に到達した昨季に引き続いて登板を重ねる田嶋大樹投手に加えて、2014年ドラフト1位の山崎福也投手もローテーションに定着しつつある。宮城を含め、一定以上の信頼がおける左の先発投手が3枚揃っている点も、充実ぶりを感じさせる要素だろう。

次に、両年のリリーフ陣についても見ていきたい。

2014年に優勝争いを演じる最大の原動力となったのは質、量ともに充実した救援陣だった。剛速球を武器に2年連続で最優秀中継ぎに輝き、防御率1.09と抜群の安定感を発揮した佐藤達也投手と、移籍2年目で故障から復活してセットアッパーとして活躍した馬原孝浩投手はいずれも勝ちパターンの一角として30ホールド以上を記録した。

加えて、62試合に登板して防御率0点台という驚異的な成績を残した比嘉幹貴投手、ロングリリーバーとして防御率1点台と安定した投球を続けたアレッサンドロ・マエストリ投手、貴重な左の中継ぎとして好投した中山慎也投手、縁の下の力持ちとして幅広い起用に応えた岸田護投手と、まさに盤石といえる陣容だった。

抑えの平野佳寿投手も防御率3点台と例年に比べてやや安定感は欠いたものの、守護神としてフル回転し、パ・リーグ史上初めて40セーブの大台に到達した。ブルペンの強力さゆえに先発投手は序盤から飛ばし気味の投球が可能となり、投手陣全体に好循環が生まれていた。

今季救援陣は左腕が充実、平野は7年前同様に守護神で奮闘

一方、今年のオリックスはリリーフで富山凌雅投手、山田修義投手、能見篤史投手らが活躍。左の主力投手が松葉と中山だけだった2014年とは異なり、先発・リリーフともに左腕が充実しているのが特徴だ。

加えて、2014年のパ・リーグ最多セーブであり、通算150セーブ超の実績を誇る平野の復帰も大きなピースに。怪我で一時期戦列を離れながら、チームトップの11セーブを挙げ、防御率は3.66。少々安定感を欠くものの、古巣復帰1年目から再びクローザーの座に復帰し、以前と同様にチームを支える存在となっている。

平野と同様に2014年の優勝争いの立役者の1人でもあった比嘉も開幕から14試合連続無失点を記録する活躍。6月5日を最後に登板がない状況だが、調子が上向く前のチームにあって、火消しとして存在感を発揮していた。

リリーフ転向後はセットアッパーとして好投している張奕投手をはじめ、ロングリリーフもこなせる山田、6月は12試合で防御率2.45と調子を取り戻しつつあるタイラー・ヒギンス投手と、勝ちパターンの構築ができたと思われた。

しかし、7月6日~8日の楽天戦ではリリーフ陣が相次いで失点し、その安定感が重要課題とされる。2014年の佐藤のような絶対的安定感を誇るリリーバーの育成、登場が待たれる。

2014年のオリックス基本オーダー【画像:パ・リーグ インサイト】

2014年は機動力&犠打を駆使、1点を取りに行く攻撃が機能

次に両年の打線を比較する。まずは、2014年に見られたオーダーの一例を見ていこう。

2014年は120試合以上に出場した選手が10人、そのうち規定打席に到達した選手が6人と、ある程度レギュラーを固定できていた。規定打席に到達して打率.300を超えたのは同年の首位打者でもある糸井嘉男外野手だけだが、シーズン最終盤まで本塁打王を争ったウィリー・モー・ペーニャと、4年ぶりに本塁打を20本台に乗せたT-岡田外野手という2人の長距離砲が、糸井の高い出塁率を得点へと結び付けていた。

29盗塁以上を記録した選手が3人と機動力を駆使することもできた。さらに安達了一内野手の犠打数がリーグ2位、伊藤光捕手が同4位となったように、犠打も多かった。和製大砲のT-岡田も犠打を5つ記録していた点が示すように、盗塁や小技で得点圏に走者を進め、着実に得点を奪うスタイルを用いていたことがわかる。

開幕当初はエステバン・ヘルマン内野手と平野恵一氏内野手が1、2番コンビを組んだが、ヘルマンが西武時代に比べて成績を落としたこともあり、最終的には機動力と小技を武器に台頭した安達が2番に定着した。

下位打線はやや流動的ながら、65試合で打率.288を記録した川端崇義外野手や、ユーティリティ性を武器にシーズン120試合に出場した原拓也内野手といった、スーパーサブ的な選手たちも要所で活躍を見せた。

2021年のオリックス基本オーダー【画像:パ・リーグ インサイト】

今年は福田&宗の1、2番が機能、迫力備える吉田正&杉本

続けて、2021年のオーダーの一例を見ていきたい。

福田周平内野手と宗佑磨外野手という1、2番コンビが見せるチャンスメーク能力は、2014年のそれを上回るものといえそうだ。2020年の首位打者・吉田正尚外野手と、首位打者・本塁打王争いに加わっている杉本裕太郎外野手も、かつての糸井とペーニャのような迫力を備えている。

宗や高卒2年目の紅林弘太郎内野手がレギュラーに定着しつつあることも含め、若手の台頭が見られる点も明るい材料だ。ベテランのT-岡田が不振脱出の兆しを見せた昨季と同様、勝負強い打撃を見せているのも頼もしい。

同じく2014年に主力を務めた安達も、持病の影響でフル出場は難しいながらも攻守に存在感を放ち、若手の多いチームを引き締めている。若手、中堅、ベテランが融合しているだけに、スティーブン・モヤ外野手をはじめとする助っ人陣の状態が上向けば、さらなる得点力向上も期待できるだろう。

チーム方針を比較すると、今年は盗塁と犠打が共にリーグ最少と、2014年とは真逆の傾向にある点が目に付く。さまざまな策を講じて得点を奪い、強力なブルペンを生かして逃げ切っていた2014年に比べて、今年は選手を信頼し、ある程度自由に打たせることが得点増につながっている。そういった面でも、チーム事情に合わせた両年の基本方針はまさに好対照と言えそうだ。

一方で、T-岡田、安達といった選手たちが現在も活躍しているところは、まさに7年前との最大の「共通点」と言えよう。パ・リーグファンの目を釘付けにした2014年の優勝争いから7年。あと一歩で果たせなかった悲願のリーグ優勝に今度こそ手が届いてほしい。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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