ル・マンの“前哨戦”WECモンツァで開幕3連勝を目指すトヨタ「全員が今回の挑戦を楽しみにしている」

 WEC世界耐久選手権にル・マン・ハイパーカー(LMH)、トヨタGR010ハイブリッドで参戦しているTOYOTA GAZOO Racingは7月16~18日、イタリアで開催される2021年シーズン第3戦モンツァに7号車と8号車の2台体制で臨み、ハイパーカーデビューイヤーの開幕3連勝を狙う。

 WECが採用したル・マン・ハイパーカー(LMH)規定の下、2021年シーズンの同シリーズではこれまでのLMP1に代わるトップカテゴリーとして、ハイパーカークラスが新設された。

 昨シーズンに引き続きシリーズチャンピオンとして今季を迎えたトヨタは、ここに新型マシン『トヨタGR010ハイブリッド』を投入。マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組の7号車と、開幕からすでに2勝を挙げているセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組8号車の2台体制で、タイトル防衛とル・マン24時間レースでの4連覇を目指している。

 そのル・マンの“前哨戦”となるのが今週末に開催されるモンツァ6時間レースだ。超高速サーキットとして知られるこのトラックで、世界耐久選手権の公式戦が行われるのは約30年ぶり。前回大会は1992年で、この年トヨタはジェフ・リース/小河等組が駆るグループCカー『トヨタTS010』でライバルのプジョーを破り、SWCスポーツカー世界選手権での初勝利を飾っている。

 以降、モンツァでは2017年にWECの公式テスト“プロローグ”が行われたものの、プロトタイプカーによる世界選手権の公式戦は行われず、今戦がひさびさのWECイベントとなる。

 1周5.793kmのコースはその大半が全開区間であり、長いストレートの直後にシケインが設置されている点などがル・マンの舞台となるサルト・サーキットに類似。かつてトヨタのライバルとして戦いを繰り広げたアウディは毎年のように、ここモンツァでル・マン用エアロパッケージのテストを実施していた。

「ファンの皆さまの前でふたたびレースができることが楽しみで仕方ありません。レースの雰囲気に満ちた週末を観客の皆様と一緒に楽しむことが1年以上できていませんでした」と村田久武TOYOTA GAZOO Racing WEC チーム代表が語るように、週末のレースは有観客で行われる。

 WECでは新型コロナウイルスの影響で2020年2月以来、すべてのレースが無観客で行われてきた。しかし、今戦は人数制限を設けたうえではあるがファンの来場が認められており、サーキットに観客の姿が戻ってくることになる。

1992年のSWC第1戦モンツァで優勝したトヨタ・チーム・トムスの7号車トヨタTS010(ジェフ・リース/小河等組)

■中嶋一貴「ハイパーカーがどれだけのパフォーマンスを見せられるのか楽しみ」

「イタリアの情熱的なモータースポーツファンの皆さまをふたたび迎えることができ、モンツァは素晴らしいレースになるでしょう」と述べた村田代表は、「実現にご尽力いただいたサーキット関係の皆さま、レースオーガナイザーの皆さまに深く感謝いたします」と続けた。

「今回はル・マンに向けた重要なステップです。モンツァのトップスピードは高速で、ハードなブレーキングゾーンもあるためGR010ハイブリッドにとって過酷なレースとなりそうですが、チーム全員が今回の挑戦を楽しみにしています」

 開幕3連勝を狙う8号車の一貴は「モンツァはお気に入りのサーキットのひとつで、2017年以来となる訪問を本当に楽しみにしています」とコメント。

「ブレーキングや縁石通過、そして荒れた路面でのトラクションなど、簡単なコースではないだけに、我々のハイパーカーがどれだけのパフォーマンスを見せられるのか楽しみです」

 かつてイタリアに住んでいたこともある可夢偉は「17歳の時にジュニアカテゴリーのレースで初めて走ったのがこのモンツァであり、とてもよく知っています。イタリアでまたレースができるのはうれしいです」と述べた。

「今大会から観客が戻ってくるのは素晴らしいことですし、イタリアのファンの皆さまの前でエキサイティングなレースを見せることができたらと思っています」

 そのレースは16日(金)午後に行われるフリープラクティス1で走行がスタート。翌17日(土)に2回のプラクティスと予選が行われ、6時間におよぶ決勝レースは18日(日)正午(日本時間19時)にスタートが切られる予定だ。

TOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)

 WEC第3戦モンツァに向けたTOYOTA GAZOO Racingドライバーのコメント全文は以下のとおり。

■7号車トヨタGR010ハイブリッド

●小林可夢偉

「WECではモンツァのレースを戦ったことはありませんが、私自身は17歳の時にジュニアカテゴリーのレースで初めて走ったのがこのモンツァであり、とてもよく知っています。私のキャリア初期にはイタリアに住んでいたこともありますし、イタリアでまたレースができるのはうれしいです」

「このモンツァ戦はル・マン前の最後のレースでもあり、とても重要なレースウイークです。すべてを着実にこなして、GR010ハイブリッドの性能を引き出し、信頼性を確認するとともに、我々自身の準備も整える必要があります」

「今大会から観客が戻ってくるのは素晴らしいことですし、イタリアのファンの皆様の前でエキサイティングなレースを見せることができたらと思っています」

●マイク・コンウェイ

「モンツァに戻れるのはうれしいよ。数年前のプロローグテストで訪れたが、TS050ハイブリッドでこのような超高速コースを走るのは本当に楽しかった! GR010ハイブリッドでも同様に間違いなく楽しめるだろう」

「ハイパーカーでモンツァを走るのは初めてなので、もちろん挑戦だし、特にブレーキングや縁石通過時に向けて正しくセットアップすることが必要だ。それらにうまく対応し、トップに立てることを期待している」

●ホセ・マリア・ロペス

「モンツァに戻れてとてもうれしく思う。モンツァでのレース自体はずいぶん長い間していないが、キャリアの初期にこの近くに住んでいたことがあり、とても良い思い出があるんだ」

「ジュニアカテゴリー時代に何度か優勝したこともあるし、WECでも勝てればと思っている」

「モンツァは耐久レースに最適なコースだと思うし、前戦ポルティマオで良いパフォーマンスを見せられたので、今大会に向けてもとても期待が高まっている。ル・マン前の最後のレースでもあるから良いレースウイークにしたいね」

■8号車トヨタGR010ハイブリッド

●中嶋一貴

「モンツァはお気に入りのサーキットのひとつで、2017年以来となる訪問を本当に楽しみにしています」

「モンツァのような超高速サーキットを走るのは最高に気持ちが良いです。モンツァはブレーキングや縁石通過、そして荒れた路面でのトラクションなど、簡単なコースではないだけに、我々のハイパーカーがどれだけのパフォーマンスを見せられるのか楽しみです」

「大変な挑戦になるとは思いますが、ル・マンに向けての準備の助けにもなってくれるでしょう」

●セバスチャン・ブエミ

「シーズンのスタートを2連勝で飾れたのはとても素晴らしいことで、モンツァでもこの勢いを維持していきたいと思っている。とはいえ今大会も簡単ではないことは分かっているよ」

「前戦ポルティマオではアルピーヌの速さを目の当たりにしたし、グリッケンハウスも今回から2台体制で参戦してくるということで、彼らもさらに強力なライバルになるだろう」

「ハイパーカーカテゴリーの争いはさらに接近した激しいものになると思うが、我々もしっかりと準備をしてきた。ル・マンも目前に迫っているので、このモンツァ戦でも良い結果を得て、良い雰囲気でル・マンに臨めればと思っているんだ」

●ブレンドン・ハートレー

「スピードの殿堂とも言えるコースで、GR010ハイブリッドとともにレースができるというのは最高だ」

「耐久レースにおいて素晴らしい歴史を持つモンツァがWECカレンダーの1戦として復活するというのは素晴らしいことだ。新しいハイパーカーがル・マンと同じような長いストレートを持つコースを走るのは初めてのことであり、ル・マンと同じような空力セッティングが必要になるので、準備という面でも完璧な機会となるだろう」

「もちろんル・マンへの準備というだけでなく、世界チャンピオン争いにおいてポイントを獲得することも重要であり、僕たちの目標は3勝目だ」

モンツァでは2017年春、この年のWEC公式テスト“プロローグ”が実施された

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