ライヴエイドでロック魂をブチかましたU2、チャリティなんて関係ない!  36年前の今日 - 1985年7月13日「ライヴエイド」開催

withコロナ、家呑み夏フェスどうでしょう?

withコロナの生活になってから2回目の夏を迎えている。昨年の夏は軒並み野外フェスが中止。それどころか海外アーティストの来日公演も未だ行われていない状況だ。

私は高校生になった頃からチョクチョク、洋楽ロックのコンサートを観てきたが、こんなにも長い間、ライブから遠ざかっているのは初めてのことだ。いつになったら今までの当たり前が取り戻せるのか待ち遠しい限りでならない。

とは言うものの、令和を生きる私たちにはインターネットという武器がある。最近ではネット配信のライブも当たり前になっており、最初は懐疑的だった私だが、一度経験してしまうと、意外と楽しめることに味をしめて、DVDやユーチューブでライブを観ながら酒を呑む “家呑みライブ鑑賞” にハマっている今日この頃なのだ。

そして、この季節の家呑みライブ鑑賞といったら、やっぱり夏フェスを観るのがオススメだ。実際の夏フェスはトイレ待ちやビールを買うための行列に並ばなくてはならないのが面倒なのだが、自宅のリビングで観ている場合、こうした問題も皆無だし、家呑みアルコールなら大して酒代を気にせず呑んだくれることができるわけで、ロック大好き・お酒大好きオジサンは至福の時間を過ごすことができるのだ。この夏、皆さんも家呑み夏フェスを体験してみてはいかがだろうか?

家呑みライヴエイドのベストアクトはU2!

さて、世界に数あるロックフェスの中でもリマインダー読者の皆さんのド真ん中のフェスといったら、1985年に開催された『ライヴエイド』になるのだろうか? 日本でも生中継でテレビ放送されたけれど、回線は途切れるは、演奏途中にCMは入るは、ストレスの溜まる放送だったことを覚えている方も多いと思う。

そんな『ライヴエイド』も2004年にはDVD化されているし、今日ではYoutubeでも観ることができる。当たり前だけど、演奏が途中で途切れることもないし曲の途中でCMが入ることもないノーストレスな環境で観ることができ、それだけで何だか感謝したくなってしまうのだ。

今どきのフェスに参加したことのある方ならご存知だと思うのだが、フェスはライブを鑑賞するだけでは終わらない。自分が観たアーティストのライブについてSNSで感想を発信し、その感動を多くの人と共有するのが令和のフェスの楽しみのひとつなのだ。例えば「今年のフジ・ロックのベストアクトは◯◯◯だ!」といった具合にベストアクトを発表しあうのも楽しみのひとつと言える。

そんな訳で、皆さんよりひと足早く家呑み『ライヴエイド』を体験した岡田が独断と偏見で選んだベストアクトを僭越ながら発表させて頂きたい!

それは…
もう……
ダントツで………
U2なのだ!!

ライブ・エイドの緩い雰囲気を「ブラディ・サンデー」で一変

『ライヴエイド』でU2が演奏したのはたった2曲。

1曲目が「ブラディ・サンデー(Sunday Bloody Sunday)」
2曲目が「バッド」

この日、U2が出演したロンドンのウェンブリー・スタジアムには来賓としてチャールズ皇太子とダイアナ妃が招かれていた。そんな状況の中、U2は「ブラディ・サンデー」を初っ端に演奏したのだ。

同曲は1972年に北アイルランドで起きたデモ行進をイギリス軍が武力によって鎮圧し、市民14人が死亡、13人が負傷した事件を歌っている。U2は同曲を反イギリス活動を擁護するものではなく、全ての武力活動を非難するメッセージを込めたと語っているが、英国王室がいる前で1曲目に「ブラディ・サンデー」を持ってくるということは、かなり緊張感ある選曲だったのではないかと思うのだ。

全世界に示したロックバンドのリアルな姿

そして、「ブラディ・サンデー」に続いて演奏された「バッド」についても、ボノの友人がオーバードーズで命を落としてしまうという『ライヴエイド』には似つかわしくないテーマが歌われている曲だ。

この曲の中盤ではボノがステージを降り、客席の中から女性客を抱き上げて、ひとしきりチークを踊るという意味不明な演出を披露する。

この演出も仕込みだった可能性は大きいし、曲のテーマにも合っていないのだが、ボノのパッションとエモーションがヒシヒシと伝わってくる演出になっている。

そして、曲の終盤ではルー・リードの「ワイルド・サイドを歩け(Walk on the Wild Side)」(1972年)が歌い込まれ、スタジアムは「トゥー、トゥー、トゥー、トゥートゥル…」というハミングの大合唱に包まれるのだ。

『ライヴエイド』におけるU2は、たった2曲の演奏でロックの持つ過激さ、エモーション、苦みを目一杯体現し、現役感バリバリのロックバンドのリアルな姿を全世界に示したのだ。

存在感を高めたパフォーマンス

この当時のU2はアルバム『焰(The Unforgettable Fire)』を前年の1984年にリリースし、全米チャート12位まで上昇している。この時点でのU2は、世界中の多くのロックファンにとって、名前は知っているけど、レコードは持っていないといった存在だったのではないだろうか?

そんな状況での『ライヴエイド』への出演は、世界中にU2のライブを見せつける絶好のチャンスであり、ここで圧倒的な存在感を示すことができれば、バンドは間違いなくネクストレベルに進むことができると踏んだのではないだろうか?

事実、『ライヴエイド』でのパフォーマンスは彼らの思惑どおりにバンドの存在感を高め、次のアルバム『ヨシュア・トゥリー』で80年代で最も重要なロックバンドとしての地位を手に入れたのだ。

U2がブチかました闘魂注入のロック

『ライヴエイド』におけるU2のパフォーマンスは他の多くのアーティストと比べて、かなり浮いていたというのが私の印象だ。

数組の例外を除いて他の多くのアーティストは「我々、チャリティーに参加してます。こう見えて、それなりに意識高い系アーティストなんですよ…」という良識ある自分たちの姿に酔っている、何だかゆる~い雰囲気の中で演奏しているように思えてならない。

何というか、ブチ切れんばかりのテンションでロックをブチかましているアーティストがとても少なくて残念無念極まりないというのが私の正直な感想だ。

そんな雰囲気の『ライヴエイド』において、U2は闘魂注入の一発として気合い充分の演奏をブチかましてくれたのだ!

前述した「ブラディ・サンデー」にしても、英国王室へのメッセージとして歌われたというよりも、他の出演アーティストに対するカンフル剤として演奏されたように思えてならないのだ。

チャリティーのためならロックは優しくて、お人好しになってもいいのだろうか? チャリティーだからってロックはヌルくなってもいいのだろうか? そもそもチャリティーってロックなのか?

U2の演奏はそれまでの緩い流れで進んでいたウェンブリー・スタジアムの雰囲気を一瞬にしてロックの研ぎ澄まされたピリッとした空気に変えてみせたのだ!

80年代ポップスの華やかさが溢れ返る『ライヴエイド』のステージにおいて、U2は真っ当にロックバンドのリアルを叩きつけて他の出演アーティストとの違いを「これでもか!」と見せつけてくれた。一見、過激とも思えるバンドの戦略も、至極ストレートで “圧倒的な一本勝ち” として私には感じられたのだ。

モンスターバンドへと覚醒する瞬間を追体験せよ!

『ライヴエイド』におけるU2のステージは、これから頂点を極めようとする勢いあるロックバンドがフェスの特性を最大限に活かし、バンドのポテンシャルを極限まで発揮したライブだったのだ。

『ライヴエイド』として残された映像には、U2がモンスターバンドへ覚醒する瞬間が生々しく記録されている。

その歴史的瞬間を追体験できることはロックファンにとって、とても幸せなことなのである。

カタリベ: 岡田浩史

あなたのためのオススメ記事 30年越えの「ヨシュア・トゥリー」これから始まる場所への終わらない旅

▶U2の記事一覧はこちら!

80年代の音楽エンターテインメントにまつわるオリジナルコラムを毎日配信! 誰もが無料で参加できるウェブサイト ▶Re:minder はこちらです!

© Reminder LLC