「来月まで無理」再開する飲食店も 緊急事態延長「酒だけ悪者」に疑問

 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて、政府による沖縄県の緊急事態宣言の再延長期間が12日、始まった。8月22日まで6週間の延長となる。県は酒類とカラオケ設備を提供する飲食店や遊興施設などへの休業要請を継続するが、「限界を迎えている」として通常営業を再開する事業者も現れている。

 ある会社は、運営する飲食店のうち、直営の9店舗で12日から酒類の提供や午後8時以降の営業を再開することを決め、SNSで常連客などに報告した。これまで県の休業や営業時間短縮の要請には全て応じてきたが、今回は感染対策を徹底した上で通常営業に踏み切った。同社の代表は「本当は要請に従うべきだという思いもあるが、100人を超える従業員とその家族や、農家や卸業者などの取引先を守らなくてはならない」と複雑な心境を吐露した。

 12日夜、通常営業を再開した那覇市内の店舗では早速、生ビールやカクテルを注文する客の姿があった。店舗グループのマネジャーによると勤務時間が短くなったことなどで昨年から同店舗だけで7人の社員やアルバイトが退職した。マネジャーは「酒だけが悪者になるのは理不尽だ。県の協力金制度も果たして分配が適正なのか」と疑問を呈した。

 那覇市内で居酒屋を経営する男性は休業していた店舗を40日ぶりに開いた。「これまで昼に弁当を販売していたが、酒を出さないことにはどうしても利益が出ない。あと1週間というのなら耐えられたかもしれないが、来月までは到底無理だ」と窮状を訴えた。

 群星沖縄臨床研修センターの徳田安春センター長は「飲食店が感染拡大の主要因と断定するには、データ的証拠に乏しい」と指摘する。県内における感染拡大は、空港や港湾の水際対策の不備やワクチンの遅れもあるとし「一義的な責任は政府にある。飲食店への補償も不十分と言わざるを得ない」と述べた。

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