女性議員増、自民党の選挙担当に聞いてみた ひどいジェンダーギャップに危機意識あるか

フィンランドのマリン首相(左から2人目)と閣僚、うち4人が30代。3人はこの1年間に育休を取得、または今後予定している。同国のジェンダー・ギャップ指数は総合、政治分野とも156カ国中2位だ(フィンランド大使館提供)
2020年9月に就任した自民党四役と菅首相(党総裁)。フィンランド首相・閣僚の写真と並べ、両国の政治風景を象徴する比較写真だとツイッター上で話題になった。

 政治分野の女性進出が世界に立ち遅れている日本。政府が昨年末に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画は、国政選挙と統一地方選挙の女性候補者を2025年までに35%にすると目標を掲げた。現状は程遠く、達成するには思い切った取り組みが必要だ。女性議員を増やすための現状認識と課題について、自民党の山口泰明選対委員長、政治分野の女性参画に詳しいジャーナリスト治部れんげさんにそれぞれ話を聞いた。(共同通信=田川瑶子、城和佳子)

 ▽山口泰明氏

 

自民党の山口泰明選対委員長

―政治分野のジェンダー・ギャップ指数が日本は147位と低かった。

 「強い危機意識を持っている。より生活に密着した課題を扱う地方議会はなおさら女性議員を増やすべきだ。党の地方組織にも働き掛けている」

 ―女性議員が少ないのはなぜか。

 「欧米と異なり、日本では男性が外で働き、女性は家にいるという風習が残っていた。意識を変えないといけない。特に田舎では地元支援者や企業、団体と昔ながらの付き合いがあり、女性は敬遠してしまうのではないか。女性が一人もいない地方議会などは早急に解消する必要がある」

 ―国政では女性議員をどう増やしていくか。

 「政治参加を希望する女性の裾野をまず広げる。党女性局には女性候補者育成コースがある。女性にげたを履かせるのではなく、立候補する際に選挙運動の指導など積極的にサポートしたい」

 ―自民党は男性現職で多くの衆院小選挙区が既に埋まっている。

 「現実として、既に自民党現職がいるのに無理やり新人を立てることはできない。世代交代を見据え、女性が手を挙げやすい環境を整えていく。比例代表の候補者名簿には女性を積極的に登載したい。選挙区で野党の強力な候補と戦うなら、比例重複順位を優遇するのもありだろう」

 ―女性議員が増える意義は何か。

 「多様性だ。いろんな意見を持ち寄って政策が生まれる。男性、女性にそれぞれ得意な視点があるだろう。多様な民意を政治や政策に反映させないといけない」

 ▽治部れんげさん

 

治部れんげさん

―女性増に向けた各党の動きをどう見ているか。

 「国会に民意を反映するためには、さまざまな意見を持った人材が必要だ。政党が動き始めたことは歓迎したい。特に、これまで女性擁立が遅れていた自民党の動きを注視している」

 ―女性議員が増えない大きな要因は。

 「自治体、企業団体関係者や支援者らと曜日、時間に関係なく入る会合が多い。応援を含め連日フル稼働する選挙もある。働き方が独特だ。産休や育休は制度化されておらず、保障されていない。これは男女にかかわらず一般社会からかけ離れており、家庭と両立できる働きやすい環境とは言えない」

 「特に女性にはハラスメント(嫌がらせ)があり、立候補をためらうケースは少なくない。支援者とされる人たちが加害者になることもある。顕在化しにくい深刻な問題だ」

 ―改善策はあるか。

 「まず職場環境の整備が欠かせない。オンライン会議などは多くの企業が取り入れている。国会にもリモート審議などの両立支援策が求められる。ハラスメント対策では、政党は単に女性候補をリクルートして終わるのでなく、ハラスメントから守るところまで責任を持ってほしい」

東京都議選の女性候補者(右)とグータッチを交わす女性=6月25日、東京都中野区

 ―次の衆院選で有権者は各党のどんな点に注目すればいいか。

 「女性候補の育成やハラスメント対策に党の本気度が表れる。候補者の数だけでなく、こうした姿勢を見極めてほしい。政党の取り組みが選挙向けPRで終わらないよう、女性擁立の達成度、公約実現に向けた姿勢を選挙後もしっかり監視することが、各党に行動を促す」

© 一般社団法人共同通信社