相模原の豚熱対応、神奈川県が苦慮 殺処分後の処理場所選定で右往左往

豚熱への県の対応を巡って、相模原市緑区鳥屋地域の自治会関係者に対して行われた説明会=11日、同市緑区

 相模原市内の養豚場で発生した豚熱(CSF)の対応を巡り、県が対応に苦慮している。約4400頭を殺処分後、死骸を粉砕・殺菌処理して焼却する計画だが、その処理場所の選定で右往左往する局面があった。当初、養豚場から離れた市内の別の場所を検討したが、地域住民への説明が不十分だったなどとして撤回。発生地の養豚場近隣での処理に立ち戻ったが、課題は残っている。

 同市内の養豚場で豚熱の発生が確認されたのは8日。県は同日から殺処分を始めた。

 ただ、その後の粉砕・殺菌処理では、重量約30トンの大型装置を使用する必要がある。装置の重みに耐えうる地盤に加え、約2500平方メートルのスペース確保が求められる。大型車両が出入り可能な進入路があることや、電線などの障害物がないことも条件という。

 県は一連の作業について「本来は発生場所で行うのが望ましい」(鈴木真由美環境農政局長)との立場だが、「養豚 場に余剰地がない」として別の場所で処理を行うための検討を実施。いったんは条件を満たしているとして、養豚場から約15キロ離れた同市緑区の津久井馬術競技場を選定した。

 9日夜から資材の搬入を行うなど準備を進めたが、地元関係者からは「十分な説明を受けていない」「処理後の臭いなどは大丈夫か」などの懸念が上がった。

 県は11日に同競技場周辺の住民らを対象に説明会を開いたが、結局、競技場ではなく養豚場隣りの休耕地を活用して粉砕・殺菌処理を行う方向となった。

 発生場所近隣で処理を行う「原点」に立ち戻った形だが、大型装置を使用するための地盤強化が必要という。県は「殺処分はすでに始まっており、粉砕・殺菌処理を迅速に行えるよう必要な調整を進めたい」としている。

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