南島原で多発?「電圧フリッカ」 照明点滅 太陽光発電に起因

「夏場の昼間はフリッカに悩まされている」と話す男性=南島原市有家町

 「夏場の昼間に限って家中の照明がチカチカする」―。

 長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」のLINEに、南島原市有家町の自営業の男性からこんな情報が寄せられた。自宅を訪問して撮影した動画を見せてもらうと、裸電球が1秒間に何度も点滅している。

男性は「フリッカらしい。パソコンなど精密機械に悪影響を及ぼしたり、健康被害が心配」と頭を抱えた。

 「フリッカって何?」

 原因を調べようと、九州電力送配電長崎支社島原配電事業所の担当者に尋ねた。正確には「電圧フリッカ」と呼ばれ、電線路の電圧が繰り返し変化することで、家庭などの照明が明るくなったり、暗くなったりを繰り返す現象だと分かった。

 原因は、昔は一時的に電力を大量に使用する機器が主だった。現在はそれに加えて太陽光発電の発電用パワーコンディショナー(PCS)の存在もあるという。発電した電力を直流から交流に変換する装置で、晴天で電気の使用が少ない時期に、停電など異常を検知する機能の設定に起因する「電圧フリッカ」の発生が高くなっているという。

 同事業所配電グループの三山繁信グループ長と本山貴志副長によると、太陽光発電設備を電線路に接続するには、電線路で停電が発生した場合に発電機を電線路から切り離す保護機能が必要。PCS内蔵の保護機能が「無効電力」を電線路に注入している。「近年の電圧フリッカは停電を検出する保護装置の設定が、大量に太陽光発電設備が接続された電力状況に適していない」と話す。

 県内で電圧フリッカは、島原半島一円が比較的多く、昨年は3~10月の午前11時から午後2時ごろに発生。19日間計43件の問い合わせがあった。三山グループ長は「大規模な工場が他の地域に比べ少ない。電力需要が少ないことも遠因ではないか」と分析する。

 太陽光発電といえば取材先で「南島原は適地」と聞いたことがある。

 2012年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度により、太陽光発電は急拡大。同事業所によると、島原半島では計約7400の発電所(家庭用を含む)。南島原市では計約2400の発電所が同社電線路へ連系している。

 一方、気象庁によると、年間日照時間(20年)は、南島原市(口之津)が2184時間(本県1974.3時間)。これに対し、晴天が多く「晴れの国」と呼ばれる岡山市は2162.4時間。南島原市がわずかだが長い。

 住民らによると、年間日照時間の長さに加えて、斜面地が多く、中山間地域で耕作放棄地などが多いため、太陽光発電の用地収得コストが安く、地盤状況や排水状況も良いという。

 では電圧フリッカ対策はどうなっているのか? 同事業所は太陽光発電の事業者に対し、無効電力注入量低減のための設定変更を依頼しているが、なかなか進まないという。

 一方、電圧フリッカに伴う精密機器の故障や健康被害の報告はないとしている。(西隆志)

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