2021年上半期(1-6月) 「飲食料品卸売業の倒産動向」調査

 2021年上半期(1-6月)の飲食料品卸売業倒産(負債1,000万円以上)は、106件(前年同期比22.6%減)だった。上半期では過去30年間で最少を記録した。コロナ禍の時短営業・休業要請などで主要取引先の飲食業の業況は悪化しているが、巣ごもり需要による小売店向けがけん引し、支援策にも下支えされ飲食料品卸売業の倒産は低水準でとどまっている。
 ただ、2021年6月の倒産は27件と急増、10カ月ぶりに月間20件台に乗せた。また、4月以降は3カ月連続でコロナ関連倒産の構成比が35.0%を超え、新型コロナの影響が徐々に顕在化し始めている。
 7月12日、東京都に4度目の緊急事態宣言が発令された。6月21日に時間制限付きで再開されたばかりの酒類提供が再び禁止された。政府は酒類販売業者に対し、酒類を提供している飲食業者との取引を停止するよう要請するなど、飲食業者だけでなく飲食料品卸売業者にも混乱が広がっている。
 形態別では、消滅型の破産が84件(構成比79.2%)と約8割を占め、先行きの見通しが立たず、事業継続を断念するケースが大半を占めた。資本金別では、1,000万円以上が55件(同51.8%)と5割を超え、さらに1億円以上が3件(前年同期比ゼロ)発生し、中堅以上の規模でも厳しさが増している状況がうかがわれる。
 コロナ関連支援で企業倒産は小康状態にあるが、飲食料品卸売業者からは「酒類を中心に業況が厳しい」「新しい生活様式の浸透で、収束後に需要が戻るかわからない」といった不安の声も聞かれる。書き入れ時の忘・新年会、歓送迎会に加え、夏場の需要も消失し、飲食業から卸売業・メーカーへと飲食料品業界の苦境は川下から川上へと広がりつつある。

  • ※本調査は、日本産業分類の「飲食料品卸売業」(「農畜産物・水産物卸売業」「食料・飲料卸売業」)の2021年上半期(1-6月)の倒産を集計、分析した。

上半期の倒産は前年同期を下回る、6月の倒産は急増

 2021年上半期(1-6月)の「飲食料品卸売業」倒産は106件(前年同期比22.6%減)で、2年ぶりに減少した。コロナ関連の資金繰り支援が奏功し、上半期では1992年以降の30年間で最少となった。
 ただ、2021年6月は27件と急増し、2020年8月以来、10カ月ぶりに月間20件台に乗せた。コロナ禍の長期化で業績回復が遅れ、息切れする企業も出始めている。
 飲食料品卸売業倒産の月次推移は、新型コロナ関連倒産の構成比は2021年4月から3カ月連続で35.0%を超えた。上半期では31.1%だった。
 飲食料品卸売業の倒産は、過去30年間で最少を記録したとはいえ、長引くコロナ禍で飲食業の不振の煽りを受けて事業環境は悪化しており、今後の動向が注目される。

飲食料品卸

業種別 最多は「生鮮魚介卸売業」の18件

 業種では、「果実卸売業」が5件(前年同期比400.0%増)、「茶類卸売業」が6件(同200.0%増)、「砂糖・味そ・しょう油卸売業」が2件(同100.0%増)、「牛乳・乳製品卸売業」が2件(同100.0%増)、「菓子・パン類卸売業」が12件(同71.4%増)で増加した。
 コロナ禍の巣ごもり特需で、小売店向けなど一部好調な企業もあるが、度重なる時短営業・休業要請や酒類提供の停止で飲食店向けを中心にした企業は、厳しい状況が続いている。
 新型コロナ関連倒産では、菓子卸の長崎県菓子販売(株)が主要取引先のパチンコ店の休業の影響で売上が減少した。また、海産物卸の(株)海商は飲食店向け販売が激減し、資金繰りに行き詰まった。

飲食業

形態別 「消滅型」の倒産が9割

 形態別では、破産が84件(前年同期比27.5%減)で、飲食料品卸売業倒産の約8割(79.2%)を占めた。また、特別清算は15件(構成比14.1%)で、9割以上(93.3%)が消滅型の倒産となった。
 一方、再建型の倒産は民事再生法の3件にとどまり、構成比は2.8%だった。会社更生法は2011年同期(1件)以来、発生していない。中堅規模の倒産も多い飲食料品卸売業だが、先行きの厳しさから事業継続を断念するケースが多い。

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