「子どもの意思を尊重したい」学費と老後資金のために転職を目指す34歳シングルマザー

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、34歳、会社員の女性。シングルマザーとして2歳の子どもを育てている相談者。現職では収入アップも退職金も期待できないため、転職と家計の見直しを検討しています。教育費と老後資金を貯められるでしょうか? FPの飯田道子氏がお答えします。

シングルマザーで子育て、老後の備えをするにあたり、家計の見直しや転職を検討しています。

子どもの進学などはなるべく意志を尊重しつつ、自分の老後も安心して過ごせるよう、アドバイス頂けると幸いです。

今現在、再婚するつもりはなく、今後長期的に働くと考えた時に、今の仕事では退職金もなく、収入アップもあまり期待できません。年齢的にも早めに転職すべきかと考えていますが、子育て中のため、なかなか決断出来ません。転職する場合は、ハローワーク等も利用し、学校に通って専門知識をつけようかと検討しています。

また、今後の住まいについても悩んでいます。

現在は実家(持家戸建て、借地)に住んでいますが、数年以内にマンションへの再開発の話が出ています。再開発となった場合、対価で頂けるマンションの部屋は今よりも狭くなる事が予想出来、両親と一緒に住む事は出来ないかもしれません(詳細はまだ不明です)。となると、賃貸、または中古住宅の購入が必要になるかと思いますが、ひとり親のため、ローンを組むのは不安が残ります。

両親も金銭的にとても余裕がある訳ではなく、また既に結婚して家を出た姉と弟がおり、今後両親が他界した場合でも、実家(再開発後のマンション)を誰が相続するかは分かりません。

今現在、両親(70歳、60歳)は元気ですが、介護が必要になった場合は、一緒に暮らしている私が面倒を見る事になると思います。

ちなみに去年7月に育休復帰したため、今現在は児童手当の他に、児童扶養手当と児童育成手当も受給していますが、来年からは恐らく所得制限で受給出来なくなると思います。手当関係は全て子どもの教育資金として貯金、他に月2万円ずつ教育資金として貯金しています。

今後どのように動けばリスクが少なく、老後もカツカツにならず生活出来るのか、アドバイス頂けると幸いです。

【相談者プロフィール】

・女性、34歳、会社員、独身(離婚)

・同居家族について:

子ども/2歳、父/既にリタイア済み、

母/パートで月10万円程度ですが、財布は別です。

・住居の形態:親の家で同居(東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:32万円

(給料25万円、児童手当、児童育成手当、児童扶養手当計約7万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:90万円

・毎月の世帯の支出の目安:14万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:5万円

・食費:5,000円

・水道光熱費:0円

・教育費:5,000円

・保険料:2万7,000円

・通信費:8,000円

・車両費:0円

・お小遣い:3万円

・その他:1万5,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10〜13万円(教育資金2万円含む)

・ボーナスからの年間貯蓄額:80万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):400万円(うち、子どもの教育資金130万)

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:奨学金18万円

・退職金なし


飯田:今回は、シングルマザーとして子育て中の相談者様です。老後に備えるにあたり、家計の見直しや転職を検討しているようです。お子様の意思を尊重しながら進学をさせつつ、安心した老後を過ごすためにはどのようにすれば良いのでしょうか? また、現在は実家に両親と同居しているため、住まいについてもお悩みのご様子です。相談者様の場合、どのような点に注意すると、ライフプランを実現できるのでしょうか?

家族で将来について話し合っておく

シングルマザーとして子育てをし、キャリアアップを考えているのは立派です。ぜひ、実現して欲しいと思います。

現在、同居をしているため、ご両親が要介護状態になってしまったときには、同居している相談者様が看ることになりそうとのことですね。一番近くに住んでいる人が介護をしたほうが手続き等スムーズに回るため、「同居しているから介護をする」と考えてしまいがちです。しかし、ご両親に万一のことが生じたときには、離れているお姉さんと弟さんと協力して介護することが必要です。一般的なケースとしては、事務的なことや日常のフォローは相談者様が行い、ご兄弟からは資金を援助してもらうなどで乗り切ることが多いのです。

自宅をどのように相続するのかなども決まっていません。一度、ご両親、ご兄弟を交えて話し合い、いざというときに備え、場合によっては遺言書を作成してもらっておくと安心でしょう。

教育費の支援制度をチェック

お子様には自由に進学先を選んで欲しいという思い、素晴らしいと思います。そのような気持ちは、きっと伝わるのではないでしょうか。

さて、生命保険文化センターが行った調査によると、小学校・中学校を公立、高校から私立、大学では文系に進学したとき必要になる金額は、自宅通学の場合、約1,450万円とされています。

それだけの金額を自分で賄うのは難しいと感じると思いますが、高校の無償化および大学の教育費の支援制度が設けられているのをご存知でしょうか?

私立の高校に進学した場合、公立高校と同じように、およそ年収910万円未満の世帯であれば、国からの就学支援が受けられることになりました。大学の場合、すべてではないものの、名だたる各大学も制度の対象になっていますので、一度確認してみてください。

ただ、お子様はまだ2歳です。実際に進学するときには制度が変更になっていることもあります。まずは節目ごとに、どのような制度になっているのか確認し、どれくらいの費用が必要になるのか、チェックするといいでしょう。

どのように貯めていくか

現在、各種手当を受け取っていますが、これは「ないもの」として、生活は月25万円の収入で賄うように考えていきましょう。

今は実家で暮らしているため、本来、支払わなければならない食費や水道光熱費がほとんどかかっていませんし、住居費も5万円と低く抑えられています。ご両親の自宅がどのようになるのか分からないうちは、できるだけ長く同居し、今のままの貯蓄ペースを続けていくのがベストです。

お子様が中学生になるまで10年間を実家で暮らすことができれば、ボーナス80万円×10年間で800万円。毎月の貯蓄を10万円とした場合、120万円×10年間で1,200万円を貯めることができ、現在の貯蓄とあわせると2,400万円貯められる計算です。

独立すると家賃や水道光熱費で毎月コンスタントに貯蓄できる可能性は低くなってしまいます。ボーナスも80万円の貯蓄を続けるのは難しくなるかもしれませんが、毎年50万円貯蓄できれば、60歳までの16年間で800万円貯めることができます。順調に進めば、60歳で3,200万円が手元にあることになります。

住宅を購入するべき? タイミングは?

東京を離れればマイホームの価格は低く抑えられます。ローンを組みたくないのなら、郊外や地方を検討してもいいでしょう。

もちろん、都内でもOKですが、都内で住宅ローンを組まずに購入できるのは、中古の訳あり物件などになってしまう可能性があります。お金を手元に残して賃貸で暮らすのか、預貯金を使ってマイホームを購入するのかの判断は、セカンドライフのタイミングでも良いかもしれません。

退職金だけにとらわれず、複数の収入源を持つことも視野に

退職金がないことが転職の動機のようですが、退職金が支給される企業は少なくなっています。勉強を続けてスキルアップをするのは大いに賛成ですが、収入のためだけでなく、どのように働きたいのかをじっくり考えて、転職先を考えてください。ハローワークに出ている求人ほかにも、気になる分野や業種があるのであれば、勉強してもいいですね。

ひとつの会社から収入を得るのが今までは普通でしたが、得意なことや好きなことを行いながら複数から収入を得ている人もいます。転職以外にも収入アップできる方法も探って下さい。

相談者様はまだ34歳。いろいろな可能性を秘めています。お子様のことだけでなく、自分の好きなことにも目を向けて、さまざまなことにチャレンジして欲しいと思います。応援しています。

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