2021年3月期決算「役員報酬1億円以上開示企業」調査【最終】

 上場企業の2021年3月期決算で、1億円以上の役員報酬の開示は253社、人数は544人だった。
 前年の257社から4社減少し、社数は2年連続で前年を下回った。一方、人数は前年の533人から11人増え、2年ぶり前年を上回った。544人は、開示を開始以来、 2019年の571人に次いで2番目に多かった。
 役員報酬額トップは、ソフトバンクGのサイモン・シガース取締役の18億8,200万円。報酬内訳は、基本報酬1億4,300万円、賞与10億2,400万円、株式報酬(未確定額)7億円などで、2年ぶりに開示された。上位10人のうち、外国人役員が7人を占めた。グローバルな“プロ経営者”、人材確保で報酬額は高額化している。また、開示制度が始まった2010年3月期から12年連続で開示されたのは57人で、全体の544人の1割(構成比10.4%)にとどまる。
 2021年3月期の開示人数は、最多が日立製作所の15人(前年18人)。前年より3人減少したが、2年連続でトップを維持した。
 コロナ禍で企業業績の悪化が懸念され、開示人数の減少も見込まれた。だが、前年に引き続き開示された403人うち、報酬額の増加は219人(構成比54.3%)と半数以上を占めた。業績連動型の報酬体系が進み、ストックオプションや株式報酬など非金銭報酬も目立つ。それだけに、コーポレート・ガバナンスが重視されており、社員やステークホルダーへの報酬額の妥当性など、具体的な説明責任はより強まっている。

  • ※本調査は、全証券取引所の3月期決算の上場企業2,383社(未提出5社を除く)を対象に、有価証券報告書で役員報酬1億円以上を個別開示した企業を集計した。上場区分は2021年6月30日時点。
  • ※2010年3月31日に施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令の改正」で、上場企業は2010年3月期決算から取締役(社外取締役を除く)、監査役(社外監査役を除く)など、役職別及び報酬等の種類別の総額、提出企業と連結子会社の役員としての連結報酬1億円以上を受けた役員情報の有価証券報告書への記載が義務付けられた。内閣府令改正は、上場企業のコーポレート・ガバナンス(企業統治)に関する開示内容の充実を目的にしている。

 2021年3月期決算で1億円以上の役員報酬を開示した企業は253社で、人数は544人だった。前年より社数は4社減少したが、人数は11人増加した。
 報酬総額は1,092億9,800万円(前年1,084億2,900万円)で、前年を0.8%上回った。
 役員報酬の主な内訳は、基本報酬が506億600万円(前年比3.4%減)で最も多い。報酬総額に占める構成比は46.3%とほぼ半分を占めるが、前年(48.3%)を2.0ポイント下回った。また、役員退職慰労金(引当金を含む)は20億7,200万円(前年比26.9%減、構成比1.8%)で、構成比は前年より0.8ポイント低下した。
 一方、賞与は166億6,500万円(同5.3%増、同15.2%)と増加した。株式報酬などの非金銭報酬も目立ち、業績に連動した報酬体系が定着しつつある。

役員報酬

役員報酬額ランキング 最高はソフトバンクGのサイモン・シガース取締役の18億8,200万円

 2021年3月期の役員報酬の最高は、ソフトバンクGのサイモン・シガース取締役の18億8,200万円だった。報酬内訳は、基本報酬1億4,300万円、賞与10億2,400万円、株式報酬(未確定額)7億円など。ソフトバンクGの役員がトップになるのは、2019年3月期のロナルド・フィッシャー副会長(当時)以来、2年ぶり。また、歴代トップの中で報酬額18億8,200万円は10番目。
 2位は、武田薬品工業のクリストフウェバー社長の18億7,400万円(前年20億7,300万円)。基本報酬は2億6,700万円だが、業績連動報酬の賞与が3億2,800万円、業績連動型株式報酬が9億円、非金銭報酬の譲渡制限付株式報酬が3億7,900万円だった。3位は、ソフトバンクGのマルセロ・クラウレ副社長執行役員COOの17億9,500万円(同21億1,300万円)。基本報酬8億700万円のほか、活動拠点の移転費用9億8,700万円が含まれる。4位は、トヨタ自動車のDidier Leroy取締役の14億5,100万円で、上位4位までを外国人役員が占めた。
 日本人役員のトップは、5位にソニーGの吉田憲一郎会長兼社長CEO。報酬額は12億5,300万円(同10億2,300万円)で、定額報酬1億9,500万円のほか、業績連動報酬3億5,000万円やストックオプション3億3,100万円、譲渡制限付株式3億6,900万円など。
 報酬は、基本報酬が中心だが、近年は業績連動に加え、ストックオプション、株式報酬などの非金銭報酬も高まっている。一方、退職慰労金による多額の報酬は減る傾向にある。
 報酬額10億円以上は5人(前年8人)で、前年を3人下回った。20億円以上は、2012年3月期以来、9年ぶりにゼロだった。一方、1億円以上2億円未満は392人(同386人)で、7割(構成比72.0%)を占めた。個別開示制度が始まった2010年3月期以降、12年連続の開示は57人で、2021年3月期に個別開示された544人のうちの、1割(同10.4%)にとどまった。

役員報酬

企業別 2年連続で日立製作所がトップ

 役員報酬を開示した253社のうち、開示人数が10人以上は前年と同数の2社だった。一方、1人が136社(構成比53.7%、前年137社)と、ほぼ半数を占めた。
 開示人数の最多は、日立製作所の15人(前年18人)で、2年連続トップを守った。2位は、三菱UFJフィナンシャル・グループの11人(同10人)で、前年より1人増加。3位は、9人の三井物産(前年8人)、大和証券グループ本社(同5人)の2社。5位は、8人の東京エレクトロン(同8人)、ソフトバンクG(同6人)の2社が続く。
 グローバル展開する電機メーカーや商社、金融が上位に顔を揃えた。前年に引き続き、2021年3月期も開示したのは215社(構成比84.9%)で、人数の増加は34社、減少は33社、同数は148社。

役員報酬0714修正

業種別 製造業が139社で最多

 業種別での社数では、最多が製造業の139社(構成比54.9%、前年138社)だった。次いで、運輸・情報通信業28社(同11.0%、同27社)、卸売業22社(同8.6%、同20社)の順。
 開示人数は、最多が製造業の302人(同55.5%、同274人)。以下、金融・保険業60人(同11.0%、同63人)、運輸・情報通信業57人(同10.4%、同52人)と続く。
 製造業では、日立製作所のほか、東京エレクトロン、ファナック、ダイキン工業、トヨタ自動車、LIXIL、ソニーグループなどが、上位に名を連ねている。三菱電機は前年より6人増(1→7人)、HOYAが同3人増(1→4人)と、人数が大幅に増加した。
 金融・保険業は60人(前年63人)で、前年より3人減少した。ただ、三菱UFJフィナンシャル・グループが11人で、引き続き10人以上を開示した。また、大和証券グループ本社は前年より4人増(5→9人)、三井住友フィナンシャルグループは同3人増(3→6人)となった。
 みずほフィナンシャルグループは、2018年3月期(1人)以来、3年ぶりに開示(1人)した。

役員報酬

前年から連続開示の403人のうち、報酬額の増加が半数を超える

 2021年3月期に報酬1億円以上を開示した544人のうち、403人(構成比74.0%)が前年に引き続き開示した。
 連続開示の403人のうち、報酬額が増加したのは219人(同54.3%)で、半数を超えた。一方、減額は164人(同40.6%)、同額は20人(同4.9%)だった。
 ストックオプションや株式報酬など非金銭報酬などを取り入れた報酬体系が進んでいて、報酬額を押し上げる要因となっている。

役員報酬

役員報酬と従業員の平均給与との差 最大はソフトバンクGの83.0倍

 2021年3月期の役員報酬1億円以上だった544人の基本報酬と賞与の合計(以下、報酬額)と、従業員の平均給与を比較した。
 格差の最大は、ソフトバンクGのサイモン・シガース取締役(報酬額11億6,700万円)で、従業員の平均給与(1,404万9,000円)とは83.0倍の差があった。なお、参考までに国税庁のまとめた給与所得者の平均給与(2019年)は436万4,000円で、それと比較すると267.4倍に達する。
 2位は、トヨタ自動車のDidier Leroy取締役(報酬額7億200万円)で、従業員の平均給与(858万3,000円)の81.7倍。3位は、日本管財の福田慎太郎会長(報酬額2億4,200万円)で、従業員の平均給与(349万6,000円)の69.2倍。
 格差の平均は、報酬額で14.6倍(中央値11.5倍)、報酬総額(基本報酬・賞与以外の報酬を含む)で23.5倍(同17.9倍)で、基本報酬や賞与以外の報酬が大きい。

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