高校野球の全国選手権神奈川大会で今夏も熱戦が繰り広げられている平塚市の「バッティングパレス相石スタジアムひらつか」。球児たちのために汗を流すグラウンドキーパーは、数年前まで県高野連理事として大会運営を指揮した元監督だ。
異例の転身を遂げた賀沢進さん(64)は、裏方の醍醐味(だいごみ)やプロ野球選手との予期せぬ出会いに「人生何があるか分からない。この仕事がとにかく楽しい」と喜びに浸った。
藤沢翔陵─横浜緑ケ丘の2回戦。五回終了後、内野ゾーンに勢いよくカートを走らせ、土をまっさらにならしていく。「選手たちの晴れ舞台。少しでも万全な状況でプレーしてほしい」。丁寧に整地し、バッターボックスの白線を引いた。
大和南高や平塚江南高で監督として球児たちに寄り添い、私学と渡り合った。監督業と共に県高野連理事を務め、同球場の「球場主任」として大会本部室で試合進行などを管理。2018年3月、平塚江南高を最後に40年近く務めた公立校の教員を退職した。
転機は一昨年の秋。「人手が足りない。なんとかお願いできませんか」。関係者から依頼され「監督、高野連としてお世話になった球場に恩返しができる」と二つ返事で引き受けた。昨年4月、球場を所有する平塚市の期間任用職員として採用された。
週4日、午前8時半~午後5時15分にグラウンドの整備にあたる。球場を使用するのは高校球児だけではない。小中学生や首都大学リーグ、プロ野球の独立リーグや、イースタン・リーグの横浜DeNAベイスターズ2軍の主催試合も開催される。
「いろんな試合を見られて、この年になって学べている。プロの練習もこんなに間近で見たことはなかった」と目を輝かせる。