海外からの五輪関係者が入国当日、築地を散歩していた! バブル方式も3日間の隔離も嘘、実際は自由に外出できる状態に

7月14日放送のNHK『おはよう日本』より

開幕まで10日を切った東京五輪。昨日13日にはついに選手村が開村したが、案の定、あっという間に「バブル方式」がまったく機能を果たしていないことが露呈した。

というのも、今朝放送のNHK『おはよう日本』では、入国から3日も経っていない大会関係者が、隔離期間中であるにもかかわらず「バブル」の外へと自由に出かけていることを伝えたのだ。

たとえば、NHKが外国人に人気の築地周辺を取材したところ、そこにはアフリカから来日したという大会関係者の姿が。この大会関係者に取材したところ、入国したのは「今朝の2時」だと言い、こう話したのだ。

「きょうは仕事がない日で、この地区に何があるか見に来ました」
「ずっとホテルの中にいたので、ちょっと足を伸ばそうと歩いているだけ」

感染防止対策を定めた「公式プレイブック」では、選手以外の大会関係者に対して入国後14日間以内の観光を禁じており、散歩も認めていない。しかし実態は、最低3日間の隔離どころか、入国したその日に大会関係者が宿泊先の外に出かけ、築地で探索をおこなっていたというわけだ。

しかも、こうした「ルール破り」はこのアフリカの大会関係者だけに限った話なのか、疑わしい。実際、築地の商店街の人たちも「外国の人も昨日あたりからちらほらお見えになっていて、少しオリンピックのムードを肌で感じてきている」「多少はやっぱり怖いなというのはある」と答えていたからだ。

菅義偉首相は8日の記者会見でも、選手や大会関係者の入国について「行動は指定されたホテルと事前に提出された外出先に限定され、一般の国民のみなさんと接触することがないように管理される」と胸を張っていた。ところがどっこい、その関係者が自由に出歩き、「一般の国民のみなさん」と接触している可能性が高いのだ。

●ホテルでは自己申告の外出チェックのみ 組織委が説明していた「帯同やGPS管理」は行われず

しかし、「バブル方式」が完全に破綻している証拠はこれだけではない。大会関係者に対しては、入国後14日以内でも宿泊施設や関連施設で食事ができない場合、公共交通機関を使わずに行ける範囲でのコンビニやレストランのテイクアウト利用、飲食店の個室利用を認める特例を設けている。この特例措置をめぐっては、五輪貴族たるIOC委員たちに高級レストランの利用を認めるために設けられたのではないかと疑惑の目が向けられてきたが、一方、政府や組織委は「監督者等による帯同やGPSを活用した行動管理をおこなう」と説明してきた。

だが、じつはこのルールもあっさり破られていた。前述の『おはよう日本』では、大会関係者を受け入れている品川区のホテルを取材。このホテルには大会期間中、関係者を含めて最大400人以上が宿泊するといい、ロビーには組織委から派遣された警備員が「監督者」として常駐していた。しかし、そこでおこなわれていたのは大会関係者の外出チェックのみで、帯同はおこなわれていなかったのだ。

しかも、その外出チェックというのも「自己申告」にすぎず、当の警備員は「声をかけること自体がないので、聞かれたことに対して答えるだけ」と回答。ホテルの支配人も「フロントに声をかけないままサーっと出ていかれた場合は、我々は止めることはできない」と口にしていた。つまり、外出先はどこかも告げないまま、宿泊先の外を自由に動き回ることが事実上可能になっているのだ。

現に、そのことを証明するような「事件」も起こっている。警視庁麻布署は昨日、東京五輪のスタッフとして来日していたアメリカとイギリス国籍の男性4人がコカインを使用したマ薬取締法違反の疑いで逮捕したと発表。発表によると、3日未明に容疑者のひとりが酒に酔った状態で都内のマンションに侵入し、警官から職務質問。尿の鑑定でコカインの陽性反応が出たことで逮捕となったが、職務質問の前日には六本木のバーで飲酒していたという。

逮捕容疑のコカイン使用が事実かどうかはともかく、問題なのはここでも「プレイブック」のルールは破られていた、ということ。逮捕された4人は入国から14日以上経っているというが、「プレイブック」では入国後15日目以降も食事の場所は原則、大会会場の食事施設や宿泊先内レストラン、自室内でのルームサービスやデリバリーに限定している。だが、実際にはバブルの外の関係者がバーに繰り出していたのである。しかも、薬物使用疑惑による逮捕がなければ、その事実が明るみに出ることはなかっただろう。

●大会関係者のコンビニやレストラン利用についても政府は「調査・記録せず」の方針

安全安心のための「バブル方式」が、あらゆる場所で破綻しまくっているという現実──。菅首相のみならず、来日中のトーマス・バッハIOC会長も昨日、「日本国民が恐れる必要はない。五輪関係者と日本人を明確に隔離する措置を講じており、大会の安全性に全幅の信頼を寄せていい」などと述べていたが、大嘘も言いところ。「全幅の信頼」ではなく、むしろ高まっているのは不安と不信感だけだ。

しかも、これだけ「バブル方式」の崩壊が明らかになり、国民の不安が高まっているというのに、政府は情報をオープンにして透明性を確保することもなく、むしろ情報を隠蔽して不安に拍車をかけようとしている。

実際、いまも政府は選手村に入村した国数や人数、陽性者の国籍や競技、症状の有無、入院情報などは「非公表」にするという方針をとっており、さらには大会関係者がコンビニや個室レストランなどを利用できる特例措置についても、内閣官房は「監督者の帯同の下、条件を満たせば利用が認められる」などと言い張って、利用状況を調査・記録しないことを昨日おこなわれた野党合同ヒアリングの席上で明言。前述したように、実態は監督者が帯同しないどころか「自己申告」に任せてスルー状態となっているにもかかわらず、である。これではもし感染が起こっても、その経路をたどることなど不可能だ。

しかも、懸念が高まっているのは、来日した大会関係者や海外メディア関係者から感染が広がることだけではなく、東京五輪がきっかけとなって国内の変異株を「輸出」することになるのではないかという点だ。そして、その懸念が高まる事態も起こっている。ブラジル選手団が事前合宿をおこなっている静岡県浜松市の施設で、従業員やその家族あわせて8人のクラスターが発生したからだ。

「平和の祭典」どころか「変異株の祭典」と化す可能性さえある、前代未聞の非常事態。本日、菅首相とバッハ会長は会談をおこない、菅首相が「政府としても万全な感染対策を講じて安心安全な大会にしたい」と嘘八百を述べると、バッハ会長も「困難な道のりだったが、歴史的な大会になる」などと応答していたが、このままでは「人命軽視で感染拡大を引き起こした歴史的な大会」となることは間違いないだろう。
(編集部)

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