ジョン・ウー的美学が炸裂!香港ノワールの世界

生身のバトル中心のアクション映画とは別に、香港ノワールと呼ばれるギャング映画が香港アクションのもう1本の重要な柱である。

このジャンルを代表する金字塔が、ジョン・ウー(呉宇森)監督の『男たちの挽歌』(86)だ。友情と兄弟愛、裏切りと復讐のテーマ、ド派手な撃ち合いとけれんみにあふれたノワール映画は大ブームを巻き起こし、同じ顔合わせで続編の『男たちの挽歌Ⅱ』(87)が作られた。

『男たちの挽歌』おうちでCinem@rtにて配信中 © 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

さらにはジョン・ウーでなくツイ・ハーク(徐克)監督でシリーズパート3となる『アゲイン/明日への誓い』(89)も作られ、ストーリーは別ものだがこちらも名作だ。

その後もジョン・ウーは『狼/男たちの挽歌・最終章』(89)『ワイルド・ブリット』(90)『狼たちの絆』(91)『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌』(92)などヒット作を連打し、ノワール路線を邁進。バレエダンスのようなエモーショナルな銃撃戦、ここぞというところで飛ぶ白いハト、といったジョン・ウー印のスタイルは海外の監督にも多大な影響を与えた。

ノワール映画は時代とともにアップデートしながら伝統を継承し、他にもリンゴ・ラム(林嶺東)監督の『プリズン・オン・ファイアー』(87)『友は風の彼方に』(87)、ジョニー・トー(杜琪峯)監督の『ザ・ミッション 非情の掟』(99)『エレクション』(05)、アンドリュー・ラウ(劉偉強)とアラン・マック(麦兆輝)共同監督の『インファナル・アフェア』(02)に始まる三部作、ダンテ・ラム(林超賢)監督の『ビースト・ストーカー/証人』(08)等々、著名な作品は枚挙にいとまがない。

とくに『インファナル・アフェア』はハリウッドでリメイク(マーティン・スコセッシ監督の『ディパーテッド』)されるに至った近年有数の傑作である。

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浦川留(うらかわとめ)/ライター

Edited:小俣悦子(フリーランス編集・ライター)

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