分裂を超えたカオスで有権者置き去り?の兵庫県知事選挙、それでも私は有権者(オフィス・シュンキ)

無所属新人の5人が立候補の兵庫県知事選挙は、7月18日投開票で行われます。届け出順に、服部修氏、中川暢三氏、斎藤元彦氏、金沢和夫氏、金田峰生氏の争いが7月1日から始まり、終盤戦に差し掛かりました。

今回の選挙、服部氏と中川氏は国政政党の支援なし、金沢氏には、国民民主党と立憲民主党が推薦こそ出していませんが、「事実上、支持していると判断されて構いません」(立憲民主党兵庫県連)とのことで支援に回り、加えて、自民党の県会議員有志が演説の現場に立つなど、主に地元政治家の応援を得ている事実はあります。斎藤氏は自民党と日本維新の会推薦、金田氏は共産党推薦となっています。

初日を除き、土、日に私は住民票を置く神戸市で各候補の動きを住民目線で見ていきました。住民目線の最たるものは、選挙活動情報の得方です。地元紙に候補者の動きとして翌日の予定が載せられます。知事選に関心のある一般住民は県下でシェア1位の、この新聞を見て「あそこに来るのか。見に行こう」と思われるのではないでしょうか。私は忠実に、それを実行しました。ネットに頼らない高齢者を中心とした世代を考えても、住民感覚で間違いないと思えたからです。

今回の選挙の注目は、有力候補2人に分かれた自民党内の動きと日本維新の会の知事選初参戦、でした。まずは自民党。果たして、それは初日の出陣式で早くも露呈していました。神戸市中央区元町大丸前で一声となった金沢陣営で、「国に支配される兵庫でいいのか。地方自治に対する挑戦だ!」と、県連の推した候補でなく別の候補を推薦した自民党本部にいきなり攻撃的なセリフを投げた井戸敏三知事に続いて、県議会で議長を務める自民党の藤本百男県議がマイクを握りました。そして開口一番「私は自民党党員です!」と胸を張って言われたのです。

その時間帯に、同じ中央区の生田神社内で出陣式となった斎藤陣営では、自民党の幹事長代理・野田聖子衆議院議員や日本維新の会の県連代表・室井邦彦参議院議員らがあいさつを行っていました。歩いて10分程度の距離とはいえJR元町駅東口で第一声となった金田陣営経由で駈け付けた私は、斎藤氏の「須磨区で生まれ、祖父は長田区でケミカルシューズを営んでいました」と地元出身を強調する出陣あいさつを聞くのが精いっぱい。それでも地元国会議員を中心に自民党議員が集結しているのは確かめました。要は、初日から自民党は公然と分裂を隠さず選挙に臨んでいました。

そして、3日の土曜日。須磨区で斎藤候補に対する応援演説を行った、西村康稔経済再生担当大臣は「(有力な)相手は立憲民主党や国民民主党が応援しています。野党の候補です。自民党の候補は、この斎藤さんだけです」と言い放ちました。

立憲民主党も国民民主党も兵庫県、そして神戸市ともに現在、議会では知事、市長の与党です。国会では野党でも、兵庫県では違う。国政選挙ではなく、知事選挙。それに自民党の県会議員の立場は、自民党の国会議員からみると野党なの?もう、なにがなんだか、という分裂を越えたカオス状態を私は感じました。4日には、大阪府の吉村洋文知事が維新推薦候補の応援に入り、人だかりのできた中央区大丸前で「斎藤さんと一緒に仕事がしたいんです」と訴えましたが、ここには自民党議員の姿はありませんでした。

その後も、地元紙の「候補者の動き」欄を見て行動していた私ですが、「どうなってるんだ!」と見た瞬間、のけぞったのが12日の月曜日。日本維新の会の森夏枝衆議院議員の Facebook を見たときでした。「兵庫知事選の応援に入りました」と、前日に行った鈴木宗男参議院議員を中心にした選挙活動の報告がされていたのですが、その行動自体、地元紙の日本維新の会推薦候補の「候補者の動き」には掲載されていないものでした。そのため情報として私の目や耳には入っていませんから、京都維新の代表でもある森代議士のSNSではじめて「そんなことがあったんだ」と知る形となりました。

当該の11日の日曜日。「候補者の動き」掲載通りに、午後2時半に神戸市中央区の「三宮センター街東口」で待ち受けた私が見た光景は、東京五輪の担当大臣である丸川珠代参議院議員が推薦候補と並んで演説している姿でした。「神戸市で私は生まれ育ちました!」と地元出身をアピールしてから五輪に触れない話題で党推薦候補の応援演説を行う姿に、3日に続いて10日にも知事選の応援に入っていた西村大臣の姿がダブって見えました。五輪、そしてコロナ対策とこの時期、両大臣とも仕事が大変なはずなのですが、ともに生まれが兵庫県だけに党推薦候補の応援に入ることになった、というのは想像に難くありません。

しかし、維新の鈴木氏や森氏は兵庫県出身ではありません。陣営に確認すると「新聞の候補者の動きは正確とは限らないです。正確には Twitter を見てください」という返事を頂きました。次に地元紙の「候補者の動き」担当に連絡してみると「候補者と一緒に動かない、ということだったので掲載していません」という答え。最後に「日本維新の会」の兵庫県連への連絡で「11日は(維新は)確認団体車運行の日でした。候補者とは別です。所属議員の先生方にはメールで、参加は呼びかけました」との回答を得ましたが、候補者不在での大物政治家投入に私個人として違和感を感じたのは事実でした。

今回、候補・推薦ともにない国政政党の公明党からは「完全に自主投票です。所属議員の方にも、どの候補に応援に行ってください、行ってはいけない、とも言っていません」との回答をいただきました。また、中川候補の演説では、減税を訴えるグループが支援を行っているのが目につきましたし、服部候補は主に神戸市中央区の街頭で「コロナ以前の元の生活に戻すこと」を公約に。着物姿での活動あって目立つ形にはなっていました。

さて、肝心の有権者の反応。地元紙も含め、多くのメディアの調査では、有力候補2人が競り合っているということのようです。しかし私の心に今、浮かんでくるのは、11日の夕刻聞いた、共産党推薦候補の演説会の場で弁士のひとりが壇上から放った言葉です。それはこうでした。

「今回の選挙の他の有力候補は、あんこの入った饅頭(まんじゅう)に唐辛子が入っている状態。無理やり選ぶのか?それでも棄権せずに投票所に行って!」。もちろん、自党の推薦候補は唐辛子抜きの饅頭での紹介になっていましたが、それも含め、有権者=兵庫県民を、結局、党利党略が置き去りにしているのではないか、が私の結論でした。私も今回は有権者のひとりです。しかし、この遠い感じ。ここに各候補の政策を書くつもりで、6月に開かれた、立候補表明していなかった1名を除く4氏の公開討論会の模様を数種類にわたって分析したあとの実際の選挙活動をみて、各氏が訴える政策を書く気がなくなったこの感覚。住民目線での選挙戦調査で、「ああ、有権者を置き去りってこれだなあ」と私がしみじみと思ったのも事実なのです。(オフィス・シュンキ)

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