甲子園の夢、指導者として再挑戦 高校時代白血病に倒れた兵庫工・伊勢田さん

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本塁に生還した選手を拍手で出迎える伊勢田部長(右端)=11日、明石トーカロ球場

 かつて甲子園を目指しながら、最後の夏を病で奪われた元高校球児の男性が、指導者としてグラウンドに戻ってきた。兵庫工業高校(神戸市兵庫区)の野球部長、伊勢田修平さん(26)。11日に兵庫県明石市の明石トーカロ球場であった全国高校野球選手権兵庫大会2回戦で母校の姫路工業高(姫路市)に快勝し、「選手たちには『今しかないぞ』と伝えてきた。その通り、思いきってやってくれた」と笑みを浮かべた。16日に宝塚東高(宝塚市)との3回戦に臨む。(山本哲志)

 高砂市出身の伊勢田さんの体に異変が起きたのは、高校2年の夏休み。公立の雄、姫路工業高の野球部で堅守の内野手としてレギュラーをつかみかけていた頃だった。少し頭痛がしたため、「念のため」と病院で検査したところ、急性骨髄性白血病を発症したことが発覚した。

 抗がん剤治療を始め、副作用に襲われる日々。それでも甲子園への思いは消えず、「まだ最後の夏がある」とリハビリに励んだ。約8カ月間の入院を経て、翌年5月、出席日数不足のため2度目の2年生として復帰。ひたむきな努力で夏の背番号をつかんだが、初戦前日に体調を崩して再び入院し、グラウンドに立つことはかなわなかった。

 同級生が引退した後は学生コーチとして残り、ノック役を買って出た。1年遅れで卒業後、近畿大工学部に進学。「もう一度、高校野球をやるんや」と指導者を目指し、野球を続けた。

 2019年に工業科の教員として兵庫工業高に赴任し、昨秋から野球部長に就いた。生徒たちには、自らの経験を伝えながら「今」の大切さを教えている。「高校野球は3年間しかできない。思い通りにならないこともあるけど、やってきたことを信じ、覚悟を決めてやるしかないぞ」と。

 部長として初めて迎えた夏。1回戦に勝ち、続く2回戦で「一番勝ちたい相手だった」という母校との対戦が実現した。試合前は外野ノックを打ち、ベンチから両チームの選手たちをまぶしそうに見つめた。「楽しいですね」。新米部長は今、再びの青春を生きている。