ホンダF1田辺TD会見:スプリント予選導入で「チャレンジングな週末になる」メルセデス以外のチームの競争力向上も警戒

 ホンダ黄金期の1988年以来となる5連勝、特に直近のオーストリア2連戦でのマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、ポールポジションスタートからチェッカーまでの全ラップで首位を独走した。そんな優位性のもとに臨む今週末の第10戦イギリスGPだが、「シルバーストンはもともとメルセデスが得意としてきたサーキット」だと、ホンダF1田辺豊治テクニカルディレクターは警戒心を隠さない。

 さらに今回は、『スプリント予選』という新フォーマットが導入される。条件は全チーム同じとはいえ、わずか60分のフリー走行1回だけで車体、パワーユニット(PU)双方の最適化を進めなければならない状況に、田辺TDは「非常にチャレンジングな週末になる」「迅速的確な作業が求められる」と、いつも以上に気を引き締めていた。

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──5連勝を果たし、メルセデスとの差はさらに広がりました。

田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):確かにいい流れでここまで来ていますが、シルバーストンはメルセデスが得意とするサーキットです。他の多くのチームもイギリスを本拠地にしていることもあって、戦闘力を上げてくるでしょう。いつも以上に難しい週末になることが予想されます。さらに今回は、そこにスプリント予選という未知の要素が加わる。通常は3回のフリー走行を経て予選を戦うのが、1時間1回だけのフリー走行で、パワーユニット(PU)、車体両方の最適化を進めないといけません。非常にチャレンジングな週末になるでしょう。

──シルバーストンといえば、変わりやすい天候が名物です。

田辺TD:今日の時点ではシルバーストンは寒いのですが、明日以降は気温28度ぐらいまで上がりそうで、天気もよさそうです。観客も日曜には14万人が予想されていて、多くの声援を受けること自体は非常に心強いです。

──スプリント予選は通常のフォーマットに比べて、具体的にどれほど大変なんでしょう。

田辺TD:通常はFP1は機能確認、そこからFP2、FP3と、車体、PU両方のセットアップを徐々に詰めていくわけです。それを今回はすべて、FP1だけでしないといけない。どれだけ大変かと言えば、シルバーストンはもちろん走り慣れたサーキットですが、今季のマシンでは初めてですし、その状態で今週末のコンディションに、1時間だけのセッションで合わせていかないといけない。事前シミュレーションはするし、考えられる準備はしてきたとはいえ、迅速的確な作業が求められますね。

──となると、あまり攻めたセッティングではなく、コンサバかつ妥協を強いられたものになるのでしょうか。

田辺TD:何をもってコンサバというかですが、最適化に向けてベストを尽くすつもりです。

2021年F1第10戦イギリスGP セルジオ・ペレス&マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2021年F1第10戦イギリスGP ピエール・ガスリー&角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

──FP1のあと、予選に向けてパワーユニットを積み替えることはないですか?

田辺TD:そのやりくりはちょっと厳しいですね。おそらく他もそうだと思いますが、今週末は最初から1基だけで走り切るつもりです。

──去年のイモラ(エミリア・ロマーニャGP)も90分でしたが、1回だけのフリー走行でした。それに対し今回はどんな難しさがありますか。今回はFP2もありますので、決勝用のエネマネなどは、そこでやるのでしょうか。

田辺TD:90分が60分に減ったのはもちろん厳しいですし、走り出しの路面は完全にクリーンで、そこから徐々にグリップが増していくわけで、その点も単に30分縮まっただけではない難しさがあります。あとはFP2をどう使うかですね。ICE自体のモードはFP1終了時点で固定ですが、回生エネルギーに関してはいろいろ見直すことができますから。

──イギリスGPは観客を目一杯入れるわけですが、F1が観客を入れて開催することをどう見ていますか。日本GPのことも見据えて、お願いします。

田辺TD:あくまで個人的な見解として聞いてほしいのですが、オーストリアGPで私自身が表彰台に上がった時、あれだけのファンが集まった光景を久しぶりに見て、本当に懐かしかったし、嬉しく思いました。やはりモータスポーツは生で見ていただきたいし、ファンの現地での応援が我々にも大きな励みになる。そんな世界が1日も早く戻ってくることを、強く望んでいます。

2021年F1第9戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の応援に訪れたファン。通称“オレンジ・アーミー”

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