ストーリー滅茶苦茶!『ゴジラvsコング』はかつてないひどい映画|花田紀凱 全世界興収500億円突破をした話題作『ゴジラvsコング』。ゴジラ好きの花田編集長は期待を膨らませ、封切り早々、映画館に向かったが……あまりのひどさに物申す!

映画『ゴジラvsコング』公式サイト

どこが究極のエンタメ!?

メチャクチャな映画だ。

こんなにひどい映画を、かつて見たことがない。

ハリウッド版ゴジラシリーズの最新作『ゴジラVSコング』。
〈究極のエンターテインメントへとさらに昇華させる“夢の共演”がついに実現!〉
とパンフにあるが、どこが!?

封切り早々の日曜、二子玉川に見に行った。IMAXで2700円(シニアだから2200円だけど)、パンフレットが1100円。

3000円も出して、こんな映画を見せられたんじゃ、たまったもんじゃない。

終わった後、隣の席の人に思わず聞いてしまった。

「おもしろかったですか?」
「ええ、まぁ……」

何しろストーリーが滅茶苦茶。帰ってきたカミさんに「どんな話なの?」と聞かれても答えようがない。

ゴジラとコングがなんで、どうやって、突然、香港に現れて、闘うのかがわからない(一説には中国が製作費の一部を負担しているからとも)。

パンフレットのSTORYを読んでもよくわからない。

小栗旬が初めてハリウッド進出と話題になったが、小栗の役もよくわからない。存在感ゼロで、全然冴えない。
〈もともとの台本では各キャラクターの背景が描かれていましたが、本編ではそこをそぎ落としてシンプルにゴジラとコングの戦いに特化したことで、結果的にとても爽快な作品になったと思います。〉

本人がパンフレットにそう書いているが、苦しい。

吉川ひなのが、かつて出演したホラー映画『デスライド』があんまりひどいので、自らの経歴から消したがっていたと聞いたことがあるが、小栗旬も、出演を悔やんでいるのではないか。

口直しに第1作を見直そう

この映画をひと言で評すれば「怪獣のプロレス」。

ゴジラとコングの闘いはさすがに迫力があるが、なら、そのシーンだけ見せてくれた方がスッキリする。時間も短縮できるし。

ゴジラ映画は新作が出る度に必ず見ているが、やはりぼくにとってのベスト、ゴジラ映画は昭和29年、本多猪四郎監督、円谷英二特撮監督の『ゴジラ』だ。

それと、第2作の『ゴジラの逆襲』。

〈放射能を吐く大怪獣の暴威は日本全土を恐怖のドン底に叩き込んだ〉というキャッチフレーズも決まっている。

当時、ぼくは小学校6年。ビキニ環礁の水爆実験で第5福竜丸が被爆し、プロデューサーの田中友幸が、この事件からヒントを得てゴジラを発想したなんてことはむろん知らなかった。

しかし、第一作で大戸島の山の端から、ゴジラがヌッと顔を出すシーン。有楽町、日劇前でゴジラが走ってくる国電をひきちぎるシーン。第2作でゴジラとアンギラス(ぼくはこの怪獣がとても好きだった)が、大阪城の天守閣で取っ組み合うシーンは今でも鮮明に思い出すことができる。

ビデオで、DVDで、また映画館の特集上映で、何度、見たかわからないが、その度におもしろく見られる。飽きない。

SF研究家の大伴昌司がこのゴジラ第1作についてこう言っている。
「不安やパニックの描写に優れ、本篇と特撮とが融合している唯一の作品、映画史上に残る傑作。それ以降に出現したさまざまな怪獣映画は『ゴジラ』の蛇足に過ぎない」

口直しに、今からDVDで第1作を見よう。

花田紀凱

© 株式会社飛鳥新社