冠山で絶景に出合う…が、まさかの林道ウオークに閉口 山登りは下調べも大事です【ふくいのそと遊び】

冠平から望む冠山。右側に見える岩場を登ります

 茶臼山・岡本山に登ってすっかり山気分になったワタクシ。図書館で借りた山の本によると、山の三種の神器は『靴、ザック、レインウェア』らしい・・・

 運動音痴には縁遠いスポーツ用品店。そんな眩しいところに私が入っていいものか、いや入ることができるのか。そんな逡巡をくりかえし意を決して出かけ、選んだのはミドルカットの靴、25Lの女性用ザック、ゴアテックスを使用したレインウェア上下、登山用の靴下。

 そして向かったのは冠山(1256.6m)。

 ときは5月8日。そう5月初旬(←ココ要注意)。

 本や地図をみると標高は高いものの登山口となる峠(標高1043m)まで車で行ける林道があり、実際に登るのは200mあまり(標高差214m)。コースタイムも往復でおよそ3時間。初心者にほどよいかなと選んだ行き先です。

 9時過ぎに林道ちかくに到着。いざ、と思うのに目の前には林道のゲートが閉まってる!

 どうしよう・・・と悩んだのは一瞬。林道を歩いて行ってみよう!

 ゲートそばに車を停めて靴を履きかえ、ゲート脇を通りぬけて林道に(9:30)

 歩きはじめてしばらくすると法面に大きく9と数字が描いてあります。ところどころ小さな滝があったり、見たことのない黄色い花が「キケマン(黄華鬘)」だと教えてもらったりしながらすすみます。

 けっこう歩いたな、と思ったころに8。「ん?まさかと思うけれど、この数字が1になって0になったらGOAL・・・じゃなくて、やっと登山口??」

 そのイヤな予感は的中。

 つづら折りに登っていく林道。歩いて歩いて歩いて。数字がみえるたびに「やっと6・・・」「やっと5・・・」。ずーーっと先にみえるカーブの先は見えないけれど、曲がった先につづくのが、いま横にみえるあの斜めに登っていく道だとわかる辛さ。

 途中、山菜とりと思しきご夫婦に出会ってお話しした以外どなたとも出会いません。よいしょ、よいしょと歩きつづけて2時間半、峠に着いたのは12:00でした。

 峠では石のモニュメント越しに冠山の山頂がみえました。名前の由来となった特徴的な山容です。

 すぐに登山道に向かいたい気持ちもありますが、まずはペコペコのおなかを満たすためにお弁当をひろげてお昼ごはん。冠平で食べたいと思っていたのになぁ。

そして改めて登山スタート(12:40)。 幅はせまいけれど歩きやすい尾根道がつづき、すこし下ったり登ったりをくり返し、鞍部にはいるとところどころ残雪も。「雪!やっぱり高いところはちがーう!」と興奮したりしながらすすみます。 左に広がる笹の原っぱが冠平だと気づくと山頂がちかいとわかります。広々とした笹原が風で揺らぐさまが美しくて足がとまります。。 冠平からは岩場。一瞬不安になりますが岩の層がしっかりとした手がかりになるので大丈夫。慎重に、そしてたのしく登ります。 岩場をすぎてまもなく山頂(14:00)。思いがけず狭い山頂です。 汗冷えしないようにレインウェアのジャケットを羽織り、落ち着いて見渡すと、山、山、山。奥越の山の峰々のさらに向こうに白山。そして見下ろすと大きな湖・・・え?湖? 地図で調べてみると、岐阜の徳山ダムでした。 岐阜県のダム!日本最大級のダム。そんなものまで遥か上から見下ろしてしまえることに心底おどろきました。 名残惜しいきもちはあるものの先を急がねばなりません。 山頂からみえた景色を胸にきざみながら下山。アップダウンのつづく道から左にまがると尾根道。尾根道からは金草岳も望めて高度感があってウキウキします。 登山口に戻ってきたのが15:10。 うれしい!冠山に登れた! でもここからはまた林道歩き。ため息が出そうになるのをこらえて林道へ。 日暮れ前に車にたどり着きたいと思うと休憩時間をとることもはばかられ、見覚えのある大小の滝を数えるように眺めるものの疲労がたまって会話も途切れがちに。「ダンゴ虫みたいに丸くなって転がっていけたら・・・」「それより何よりどこでもドア・・・」もう嘆き節です。舗装路の下りは一歩一歩すすむごとに足裏にひびいてイタタタタ・・・ 道端に咲くキケマンが再び目に入り、大分下りてきたんだなと思って足を止めたところには滝。「これは細くてながい滝だな」と思って見上げると黒くて動くものが。「クマ??!!」 カモシカでした。 黒くてすこーし小柄なカモシカ。まだ子どもだったのかもしれません。 カモシカもこちらをじーっと見てる・・・と思うとパッと茂みの奥に行ってしまいました。 あとで調べてみると、林道の長さはおよそ10km(9783m。岐阜県側も含めた全長19.4km)でした。登山道が往復5.5kmなので一日で歩いた距離は約25km!!  山は下調べが大事。登山口までの道のりも、よーーく調べましょう。

 【メモ】林道冠山線は12月~5月末まで閉鎖。積雪や道路状態によって開通時期は変動するそうです。池田町のHPで確認できます。

(登山用品店「遊山行」=福井市 服部佐和子)

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