ニューヨーク仕事人名鑑 #21 河野洋さん

困難に立ち向かい、今を全力で生きる日本人ビジネスパーソン。名刺交換しただけでは見えてこない、彼らの「仕事の流儀」を取材します。

※これまでのビジネスインタビューのアーカイブは、nyjapion.comで読めます。


イベントプロデューサーやアーティストのマネジメント、書き手として幅広く活躍する河野洋さん。ニューヨークでは数少ない日本の映画祭の一つ、ニューヨーク・ジャパン・シネフェストの立ち上げをはじめ、桜祭り、アニメコンベンションなど数々のイベントにも携わる。 いくつもの顔を持つ河野さんに「本業は?」と聞くと、「もともとはギタリストです。こう見えてヘビーメタルの血が流れてるんです」と笑う。 原点である音楽家の道から転身した現在は、まだ見ぬ才能を発掘し、ニューヨークというトレンド発信の地で日本の文化や日本人アーティストに脚光を浴びせることが河野さんのミッションだ。 伝えたいのは“日本の文化” 「子供の頃の僕にとってのヒーローはスティーブ・マックイーンやブルース・リーでした。わが道を行き、孤独ながらも人生を謳歌する生きざまに憧れを抱いていました」と語る河野さんが、日本映画をきちんと見始めたのはニューヨークに渡ってからだった。 3.11の震災を受け、「海外から日本を応援しよう」というスローガンと共に2012年に旗揚げしたニューヨーク・ジャパン・シネフェストは、今ではボストン、ワシントンDCなどを回る巡業型映画祭として10年目を迎える。 さらに今年5月には、中西部では初となる日本の映画祭、シカゴ日本映画コレクティブをオンラインでスタート。通常なら劇場公開を前提とするため、ニューヨークからわざわざ携わることはなかったかもしれない。コロナ禍だからこそ実現できた企画だと振り返る。オンライン映画祭は、YouTubeやNetflixといった大手動画配信サービスが競合として立ちはだかるが、しかしオンラインだからこそ、劇場に行けない人が時間や場所を気にせず気軽に見ることができることは後押しとなった。 河野さんが今年見た映画はすでに265本。「無数に映画がある中で、いかにメッセージ性をもってキュレートされた映画祭であるかが重要です。日本映画を初めて見る外国人もいるので作品の選考はいい加減にはできません」と真剣だ。また、日本人映画監督にとって英語のハードルは想像以上に高く、海外進出への予算がないという課題もある。そんな中で日本国内の映画祭とコラボレートするなど、自ら日本の作品にリーチすることにも力を入れる。 垣根を超えて人と人をつなぐ 2003年に立ち上げたレコード会社「マークリエーション」が次第にイベント事業に変化したのは、「レコードとは違い、ライブは一期一会」であることに目を付けたからだ。またどんなイベントにおいてもコンテンツを決め、会場を決め、宣伝、集客するといったプロセスは全て共通であることから、音楽以外のイベントも手掛け始めた。それが今の映画祭運営にもつながっている。「映画や音楽イベントから他のさまざまな分野のコネクションに広がったり、新たな企画に発展することも多いので楽しいです」。 好奇心を原動力にしながら、人生の指針や感動を与えてくれた音楽や映画に恩返ししたいと語る河野さん。今後も多くのアーティストの未来を切り開いてくれるのだろう。

河野洋さん 「Mar Creation」代表、イベントプロデューサー

来米年: 1992年 出身地: 愛知県 好きなもの・こと: 人と話すこと 特技: ギター、物書き

名古屋市出身。 1992年に来米。 2003年にレコード会社「Mar Creation」を設立し、08年からライブ、イベントのプロデュース、アーティストマネジメントを行う。 12年に「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト」を設立。 米国NPO法人CUPA副代表理事、NY愛知県人会代表としても活動する。 marcreation.com

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