侍ジャパンのベストオーダーを考える 高橋慶彦氏のポイントは4番と「唯一の飛び道具」

広島・鈴木誠也【写真:荒川祐史】

「佐藤輝明君が入らなかったのは残念だが…」

侍ジャパン日本代表が、悲願の金メダル獲得を目指す東京五輪野球競技は28日に開幕する。グループAに入った日本代表は同日に福島でドミニカ共和国と激突、同31日に横浜でメキシコと対戦する。かつて広島のスター遊撃手として一世を風靡した高橋慶彦氏が、自身の考える侍ジャパンベストオーダーを選定。4番には後輩の鈴木誠也外野手を指名した。そこにはOBとしての思い入れだけではない根拠がある。

1975年から広島、ロッテ、阪神で18年間活躍。盗塁王3度、遊撃手としてベストナイン5度を誇り、広島ではリーグ優勝4度、日本一3度に貢献した高橋氏。東京五輪出場メンバーの顔触れについては「阪神の佐藤輝明君が入らなかったのは残念」と感想を口にする。

ドラフト1位ルーキーの佐藤輝の打棒は、NPB前半戦最大の話題となった。「メンバー入りしてもおかしくはないが、打撃でまだまだ穴が多いという判断だろうね。経験が少ないから、短期決戦ではヨーイドンで打てなかった場合、ズルズルと引きずったまま終わってしまう可能性がある。怖い賭けになる。経験のある選手にその心配はないからね」と指摘する。

高橋氏が選んだベストオーダーは以下の通り。

1(指)山田哲人(ヤクルト)
2(遊)坂本勇人(巨人)
3(中)柳田悠岐(ソフトバンク)
4(右)鈴木誠也(広島)
5(左)吉田正尚(オリックス)
6(三)村上宗隆(ヤクルト)
7(一)浅村栄斗(楽天)
8(捕)甲斐拓也(ソフトバンク)
9(二)菊池涼介(広島)

鈴木は5月に新型コロナウイルスに感染して戦列を離れたこともあり、今季は突出した成績を残しているわけではない。4番を打てる打者は他にも柳田、吉田、村上、浅村ら数多い。それでも、鈴木には2019年「第2回 WBSC プレミア12」の全8試合で4番を務め、打率.444、3本塁打、13打点をマークし、侍ジャパンが世界一の座に就く原動力となった実績がある。

「力のある打者は他にもいるが、経験値のある誠也を4番に持っていけば誰も文句を言わない。最も座りがいい。打順を組みやすくなる。誠也は打てればもちろん良いし、打てなくても5番以降の打者が比較的楽に打席に入れる。他の打者に余計なプレッシャーをかける必要がなくなる」と高橋氏。最大の重圧を引き受け、機能する打線をつくる上で最適の4番が鈴木というわけだ。

広島などで活躍した高橋慶彦氏【写真:編集部】

源田は代走、代打、守備固めと「展開によってなんでもイケる」

打ってよし、バントや進塁打もそつなくこなす坂本は2番。出塁率の高い菊池を9番に置き、1番へつなげる役割を担わせるのもキーポイントだ。

また、東京五輪のベンチ入り選手数は24人で、プレミア12の28人から4人減る。稲葉篤紀監督はプレミア12で代走専門としてソフトバンク・周東を“サプライズ選出”し、ここぞの場面で試合の流れを変える役割を任せた。

しかし、東京五輪ではスペシャリストを置く人数的余裕がない。そこで重宝されるのが西武の源田壮亮内野手だろう。遊撃手として3年連続ゴールデングラブ賞の守備力に加え、走力も高い。

高橋氏は「1点ビハインドで終盤というような緊迫した場面で“飛び道具”(代走)になれるのは、このメンバーでは源田だけ。展開によって代打、守備固め……なんでもイケる」とこのメンバーの中ではベンチスタートで光ると見ている。

広島の會澤、巨人の菅野、中川と故障により辞退者が相次いだ侍ジャパンだが、代替選手を含め機能的なオーダーを組み、念願の金メダルを獲得してほしい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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