子ども ワクチン接種 いじめ、差別を懸念 長崎県内10市町が慎重姿勢

12~18歳のワクチン接種 長崎県内市町の対応

 子どもへの新型コロナウイルスワクチン接種を巡って、県内市町の見解や対応が割れている。現時点で「十分な情報がない」と慎重姿勢が目立つ一方、夏休み中に実施したり、供給量不足で具体的に検討できなかったりする自治体もある。接種を巡る同調圧力や差別、いじめにも神経をとがらせている。
 接種対象年齢は、当初16歳以上だったファイザー製が6月から12~15歳の使用が可能になった。モデルナ製も国は現行の18歳以上から12歳以上に引き下げる方針。これに対し、県内の専門家は「子どもは感染しても重症化するリスクは極めて低い。高齢者や基礎疾患がある人、子どもやお年寄りと接する機会が多い人を優先すべき」としている。
 長崎新聞社は県内21市町の担当者に9~15日、18歳以下への接種券の発送や接種時期、実施に伴う懸念を聞いた。
 このうち10市町が比較的慎重な姿勢を見せた。東彼川棚町は16歳以上には7月中に接種券を送るが、12~15歳は「情報が足りない」として発送、接種時期とも未定という。22日に県が専門家の説明会を開くため、平戸市はそれを聞いて判断する方針。雲仙市は医師会や市教委と協議中だ。「ほかの自治体の様子を見る」という諫早市の担当者は「基本的には親の世代に早く打てば子どもを守れる」との考え方を示す。
 12~15歳の接種に積極的なのは2市町。24、25日に集団接種する島原市は「小児科医の管理の下、実施する必要がある。保護者同伴が望ましい」とし、ファイザーの保護者向け説明文書を配布。東彼東彼杵町も夏休み中に実施したいとしている。
 5市町は16歳以上を優先する。対馬市は「部活動の遠征で島外に出ることが予想される」と8月上旬から高校生の接種枠を設ける予定。五島市は高校3年を対象に夏休み中を検討。2学期から就職活動や受験で島外と往来する可能性があるため配慮する。
 西彼時津町は11日、青雲高の寮生と下宿生計148人に接種した。同校はコロナ禍で休校になって以降、県外の帰省先から戻った寮生への対応を町や地元自治会に相談。寮に戻って2週間は外出を控えさせるなどの対策を講じた。町は県外往来に加え、集団生活でクラスター(感染者集団)発生のリスクが高いと判断し、優先的に接種した。
 学校での集団接種を巡っては、文部科学省が同調圧力などへの懸念から「推奨しない」と通知。県内市町でも現時点で実施例はない。東彼波佐見町は8月中に、12~15歳がいる世帯に意向や、集団または個別の希望を聞く。五島市と西海市は校長会などで現場の教職員と情報を共有。さらに五島市は意向調査と併せて、副反応や差別に関する資料を配布。夏休み期間を本人と保護者が話し合う「準備期間」と位置付けている。


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