小田原市民会館 壁の染み、実は壁画 市民調査で半世紀ぶりに明らかに 7月末に閉館

半世紀にわたり忘れ去られていた市民会館大ホール2階の壁画。飛び立つ鳥を描いていたとみられる=小田原市本町

 小田原市民に59年間愛され、今月末で閉館する小田原市民会館。その大ホールの塗装が剝がれ落ちた壁が、壁画であることが市民有志の調査で半世紀ぶりに明らかになった。完成当初は全面ガラス窓を通して外からも見られたが、その後の増改築もあり現在では忘れ去られた存在に。何がどのような意図で描かれていたのか、画家も亡くなり多くの謎を残したまま姿を消そうとしている。

 存在が分かった壁画は、大ホールホワイエの壁に描かれていた。現在は1階部分の幅22メートルに鮮やかな赤色の上に黒い染みのようなものが広がり、2階部分は14メートルの青色の壁に無数の亀裂のようなものが走る。

 壁際に椅子が置かれ、市民が背をもたせかけていたため塗装が剝がれ、今では何が描かれているのか分からない。市も美術品であることを認識せず、水飲み場やスピーカーを設置し、「男子トイレはこの裏です」という張り紙まで。

 市民有志でつくる「おだわらミュージアムプロジェクト」は、2017年度から市と協働で市民会館内に所蔵されている美術品の調査に着手。その過程で壁の端に画家のサインを見つけ、古い資料を探し、1階から2階に連なる大作の壁画であることが分かった。

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