こうのしま お多津 〜 笠岡市民のなつかしの味をもう一度!名店の味を目指し、個性も加わった笠岡ラーメン

笠岡市のご当地ラーメンとして、ラーメン通から一目置かれている笠岡ラーメン

鶏ガラダシのスープに、カシワ(廃鶏肉)の煮鶏がトッピングされた、養鶏が盛んな笠岡ならではのラーメンです。

そんな笠岡ラーメンの基本を守りながら、個性的なアレンジをしたユーモラスな店があります。

それが笠岡市南部にある「こうのしま お多津(おたつ)」。

かつて老舗の和食店で腕をふるっていた店長がつくるラーメンが人気の店です。

実は、店長は和食の板前時代からラーメンづくりをしていたそう。

こうのしま お多津のラーメンのこだわりや特徴、魅力などを深掘りしていきます。

こうのしま お多津は笠岡ラーメンが人気の店

こうのしま お多津は、笠岡市南部・神島(こうのしま)にあるラーメン店です。

もともと店長の羽原さんは笠岡駅近くの老舗旅館の中にあった和食店「お多津」の板前でした。

お多津は2011・2012年の2年連続で、食べログ「ベストレストラン賞」を獲得

お多津は和食店ですが、1990年代後半ごろから出していた中華そば(笠岡ラーメン)が好評に。

和食店でありながら、笠岡ラーメンの人気店のひとつとなったのです。

しかし2019年(令和元年)6月に旅館は営業を終え、同時にお多津も閉鎖してしまいました。

その後、有限会社 相伸産業が羽原さんを店長として迎え、2020年(令和2年)3月に現在の場所で相伸産業が「こうのしま お多津」として飲食店をオープンしたのです。

テーブル席が並ぶ店内
カウンター席も
座敷も1卓あり、子連れにうれしい
店内には、羽原さんが自作した装飾も

こうのしま お多津ではスマートフォンの公式アプリがあり、好評です。

公式アプリ ダウンロード先

  • iOS
  • アンドロイド

ポイントが貯まるなど、お得な特典もあります。

アプリの詳細は店内にある説明を見るか、スタッフに尋ねてください。

こうのしま お多津のメニュー

価格は消費税込。2021年(令和3年)6月時点の情報

こうのしま お多津は、ラーメンがメインの店。

ラーメンは、いわゆる笠岡ラーメンである「中華そば」(700円)が看板メニューです。

ほかに塩味の「鶏塩ラーメン」(800円)や、笠岡では提供店の少ない「油そば」(800円)がラインナップしています。

さらにセットメニューもあり「ミニチキンドライカレーセット」(プラス250円)や「若鶏のから揚げセット」(プラス300円)がありました。

ドライカレーは単品(350円)もあります。

このほか「おむすび」(100円)もありました。

夜の営業では一品料理も
ドリンクメニュー

こうのしま お多津では、持ち帰りメニューもあります。

持ち帰りメニュー

持ち帰りメニューは、午後5時以降限定で宅配も可能です。

こうのしま お多津のおすすめ

気になるこうのしま お多津のメニューを、詳しくみていきましょう。

「中華そば」は今はなき名店の味をオマージュした笠岡ラーメン

一番人気で看板メニューの「中華そば」(700円)。

いわゆる笠岡ラーメンで、醤油味のスープです。

具材は笠岡ラーメンの定番であるカシワの煮鶏のほか、メンマと刻みネギ。
そして上に糸トウガラシが載っているのがめずらしいです。

盛りつけがとても美しく、和食出身の店長の感性が生かされていると思いました。

スープはやや透明感のある焦げ茶色で、表面には黄金色の油が浮いています。

飲むとサッパリとした味わいで、ダシのうま味と醤油の甘味と塩味がいいバランス。
後口は、スッキリとしています。

また、メンマは棒状にきれいに切られているのが数本載っていました。
コリコリとした食感と塩味がおいしかったです。

麺の盛りつけかたもきれいで、おいしそうです。

麺は細めのストレートで、歯ごたえがいい。

サッパリとした醤油スープと麺の相性も抜群です。

笠岡ラーメンの最大の特徴であるカシワ。

カシワはコリコリと歯ごたえがよく、噛むたびに鶏のうまみとシッカリと染みた醤油の味わいがチュルチュルと染み出て来ます。

「鶏塩そば」は塩味のスープにカシワの煮鶏やイリコなどが入る個性派

中華そばは醤油味の笠岡ラーメンでしたが、「鶏塩ラーメン」(800円)は笠岡ラーメンの塩味バージョンといえます。

具材は、中華そばと共通の手割きメンマ、刻み青ネギ、糸トウガラシ。
そして笠岡ラーメンの象徴・カシワの煮鶏です。

それらに加えて、大きな海苔2枚、花形のカマボコ、斜め切りの白ネギ、刻み青ネギ、細切れのユズ皮、ゴマ。
そして、中央に縦に刺さったイリコがインパクト抜群です!

スープは、透明感のある薄茶色です。

スープを飲むと、アッサリとした味わい。

ダシの風味にキリッとした塩味です。
さらに、ほんのりとユズの香りがしてきます。

スッキリとした後口で食べやすいです。

そしてメンマのコリコリ感やネギのシャキシャキ感も加わり、アクセントになります。

麺は中華そばと同じく、細めのストレート。

また、鶏塩ラーメンにもカシワの煮鶏が入っています。

煮鶏と塩スープのコンビネーションも抜群でした。

さらに、海苔をしっかりとスープに浸すとおいしいです。
花形カマボコのやわらかな食感も、おもしろいと思いました。

「油そば」はモチモチ太麺と甘辛味がビールにピッタリ

こうのしま お多津では「油そば」(800円)もあります。

笠岡などで油そばを置いている店は、めずらしいのではないでしょうか。

具材は盛りだくさんで、盛りつけも美しいです。

しかもカシワの煮鶏が入る、笠岡らしいアレンジがほどこされています。

ほかの具材は大きな海苔が2枚に、ナルト、手割きメンマ、斜め切りの白ネギ、刻み青ネギ、ゴマ、そして糸トウガラシ。

さらに中央には、コンモリとした卵黄が載っています。

おいしそうな卵黄を箸先で割って黄身を流れ出し、そして一気に全体をよくかき混ぜて食べるのが、油そばの醍醐味です。

麺の下側、丼の底にタレがあるので、シッカリと混ぜましょう。

麺は中華そばや鶏塩ラーメンとは違う、太めの縮れ麺。

縮れているので、タレや卵黄がよく絡みます。

麺のモッチリとした弾力のある食感とともに、タレの甘辛い味わいや黄身のまろやかさがまとわりついて、とてもおいしいです。

確かにビールが欲しくなる味だと思いました。
ごはんも合うと思います。

酢を入れるとサッパリとした味わいに。
トウバンジャンを入れると、甘酸っぱさとともにピリ辛感が加わります。

カシワの煮鶏は、中華そばや鶏塩ラーメンと同じもの。

肉から染み出る鶏のうま味と濃い醤油味が、油そばの味わいにプラスされておいしさが増します。

「ミニチキンドライカレーライス」もおすすめ!

サイドメニューの「ミニチキンドライカレーライス」。

麺類とのセットで250円、単品は350円です。

ラーメン店のサイドメニューで、ドライカレーがあるのはめずらしい。

挽き肉タップリのドライカレーで、刻み茹で玉子とレーズンが載っているのが特徴的です。

甘さと適度な塩味に、挽き肉のうま味がシッカリと味わえました。
ピリ辛感は控えめだったので、辛いのが苦手なかたでも食べられると思います。

おいしくて美しい笠岡ラーメンや油そばが楽しめる、こうのしま お多津。

店長を務める羽原利彦(はばら としひこ)さんにインタビューをしました。

こうのしま お多津の店長・羽原 利彦さんにインタビュー

おいしくて美しい笠岡ラーメンや油そばが楽しめる、こうのしま お多津

店長を務める羽原利彦(はばら としひこ)さんに経歴やラーメンのこだわり、今後の展望などの話を聞きました。

もとは和食・割烹料理店の板前だった

在りし日の三洋旅館(2019年5月撮影)。1階部分が旧お多津

──開業の経緯を知りたい。

羽原(敬称略)──

もともと、笠岡駅前にあった三洋旅館内の和食・割烹料理店お多津」で板前をしていました。

旅館は戦後すぐくらいの創業で、お多津も創業時にはあった老舗です。

実はお多津で笠岡ラーメンを出していて、すごく好評でした。

その後、旅館とお多津は2019年(令和元年)6月に営業を終了。

そんなとき知人の紹介で、現在の神島地区にある会社に入社することになったんです。

そして、会社が私を店長とした飲食店をオープンしました。

それが「こうのしま お多津」です。
オープンは、2020年(令和2年)3月でした。

──ちなみに、店名の由来は?

羽原──

旧お多津の名前は、創業者の愛称に由来しています。

名前が「たつえ」でしたので「おたつ」。

ちなみに辰年生まれだから、名前に「たつ」が入っているそうです。

当店のラーメンの丼には竜のイラストが描かれているんですが、それに由来しているんですよ。

こうのしま お多津でも、それを受け継いでいます。

笠岡市民に愛された思い出のラーメンをもう一度食べたい

かつて「斉藤」で使われていたラーメンの丼と出前用の丼のフタ

──笠岡ラーメンを出したキッカケは?

羽原──

私の家のすぐそばに「斉藤(さいとう)」というラーメン店がありました。

笠岡市民にすごく愛されていた名店で、私も斉藤のラーメンが大好きだったんです。

いわゆる笠岡ラーメンと呼ばれるラーメンですね。

しかし高齢のため、斉藤は廃業してしまったんです。
1997〜98年くらいだったと思います。

そこで当時板前をしていた和食店で、斉藤の味のラーメンを出そうと考えたんです。

もともと私はラーメンが大好きで、よく食べ歩いていたんですよ。

若いころ東京で海洋調査の仕事をしていて、全国出張が多く、出張先の各地のラーメンを食べていました。

おいしいラーメン店はたくさんあるんですが、やっぱり食べたくなるのは斉藤のラーメン。
私にとって、ラーメンの味の手本のような感じでしょうか。

だから「なんとしても、もう一度斉藤のあの味が食べたい!」という気持ちで、斉藤の味のラーメンづくりをすることに決めました。

──思い出の味の再現で、大変だったのは?

羽原──

斉藤のご主人は、人に味を教えるかたではありませんでした
すでに店はありませんから、味の調べようがないので苦労しましたね。

だから味を思い出しながら、何度も味の調整を繰り返し、思い出の味の再現を試みたんです。

それでようやく納得のいくラーメンができてメニューに出したのが、1990年代終わりごろ。

といっても、ちゃんと味が再現できているかどうかは確認するすべがないのですが(笑)。

斉藤の味をオマージュしたラーメンという表現が正しいかもしれません。

そして斉藤の味を目指したラーメンをベースに、私らしさも加えていきました

ちなみに今も出している手割きメンマは、斉藤でやっていたのを取り入れたものですよ。

お多津のラーメンを目当てに全国各地からお客が訪れるように

──笠岡ラーメンは好評だった?

羽原──

そうですね。おかげさまで多くのファンがつきました。

同じころ、いわゆるラーメンブームがおこりまして、東京やら大阪やら全国各地から当時の店にラーメンを食べにお客様がやってきました

2000年代はじめごろからは、ご当地ラーメンとして笠岡ラーメンが注目され始め、当時の店に笠岡ラーメンを目当てのお客様が多く来店するようになったんです。

レギュラーだった笠岡ラーメン(中華そば)のほかにも、時季限定でいろいろなラーメンも出していて、これも人気でした。

実験的なラーメンにも挑戦しましたよ。

冷やしラーメンだとか、シュールストレミングを使った日本一臭いラーメンとか(笑)。
インスタントラーメンの味を、実際に一から再現してみたりとかもしました。

ゆっくりくつろぎながらラーメンを楽しめる店づくり

羽原さんが自作した店内の装飾

──こうのしま お多津の特徴は?

羽原──

ゆとりのある店内で、ゆったりとリラックスしながらラーメンを楽しめることですね。

店のまわりには自然も多く、鳥の鳴き声もいっぱい聞こえます。

お客様が駐車場に車を停めて、店内へ向かってくるときに、背伸びをされるかたが多いんですよ。

まさにリラックスしていただいているようで、当店を象徴する一コマだと思いますね。

座敷もテーブルもありますし、子供連れのかたも大歓迎です!

あとは、やっぱり笠岡市民にとって懐かしの味のラーメンが食べられることかな。
とはいっても、もう斉藤を知らない世代のかたも多くなってきましたが。

今後は「限定ラーメン」復活も視野に

──今後の展望ややってみたいことがあれば知りたい。

羽原──

コロナ禍が落ち着いて、お客様が安定してくれば、いろいろな時季限定ラーメンをこうのしま お多津でもやってみたいですね。

あと、今すぐ近くで国道2号線バイパスの造成工事をしています。

バイパスが完成すれば当店へのアクセスもいっそうよくなりますので、イベントをしてみるのもいいんじゃないかと思いますね。

当店は駐車場がかなり広いです。

この広い土地を活用して、フリーマーケットなんかしてみるのもおもしろいかもしれません。

おわりに

笠岡ラーメンというご当地ラーメンと懐かしい笠岡の名店の味、そして店長の和食のバックグラウンドと感性。

それらを見事に融合させた個性的でおいしいラーメンを食べられるのが、こうのしま お多津の魅力ではないでしょうか。

ぜひ一度、こうのしま お多津のラーメンを堪能してみてください。

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