地味だけど、北九州モノレール

 

JR小倉駅ビル内のモノレール駅(下)小倉駅を発車した直後

 【汐留鉄道俱楽部】モノレールと聞いただけでわくわくする。幼い頃、初めて乗せられたのが上野動物園だったからかもしれないが、空中散歩のような味わいは格別だ。しかし失礼ながら、地味で目立たないモノレールというのもあるものだなあというのが、北九州モノレールの印象だ。

 6番目の政令指定都市として1963年に門司、小倉、戸畑、八幡、若松の5市が合併して誕生した北九州市。行政、経済の中心として発展する小倉地区の道路渋滞緩和のため、路面電車の西鉄北方線を廃止し、さらに南方の郊外に広がった団地や住宅地の足確保のために計画されたのがモノレールだった。

 開業は1985年。地元商店街の反対などで当初はJR小倉駅に接続することができず、400メートルも離れた場所(現平和通駅)からの発着を余儀なくされた。98年に延伸して念願のJRとの接続を果たし便利になった。現在は朝6時から深夜0時まで、ほぼ10分ヘッドのきれいなダイヤで、終点の企救丘(きくがおか)までの8.8キロを19分で結んでいる。

 昨年小倉駅近くにオープンした歴史地図専門の「ゼンリンミュージアム」を取材する機会があり、前から気になっていた北九州モノレールに乗ってみた。

 JR小倉駅のターミナルビル中央の空間、JR改札と向かい合うようにモノレールの改札があり、ホームはそのすぐ上。4両編成の車両がコンコースから丸見えだ。異なる方式の鉄道でこれだけ乗り換えが楽なのは理想的と思う。

 車両が動き出してビルを抜け出ると車内がぱっと明るくなり、あとは道路の上をぐいぐいと進んでいくだけ。車両は直方体そのものといった感じの変哲ないデザインだが、その分、車内の広さが確保され、同じ跨座(こざ)式でも台車が車内に張り出した東京モノレールと比べると断然ゆったりしている。

 

車窓から見渡せる小倉競馬場(下)パークアンドライドの駅内広告

 さて車窓の風景はというと、大都市だからビルが多いのは仕方ないとして、行程の約半分、右手にJRA小倉競馬場が見えてくる辺りでようやく市街地を囲む山々が近くに見えてくるものの、基本、街中の建物を見ているうちに終点、企救丘に到着してしまう。運が良ければ競馬の注目レースを垣間見ることができるかもしれないが、正直あまり見せ場がない。

 企救丘駅前にある車両基地の敷地を活用して、定期券利用客向けにわずか月プラス2千円で利用できる「パークアンドライド」を実施している。駐車場にマイカーを置いて小倉中心部まではモノレール利用という、環境にも優しい取り組みだ。頑張ってるなと思うが、東京や大阪ほどの大都会でなく、モノレールに乗っても最長9キロ程度だから、その効果はどうだろう。

 車両基地の先には、JR日田彦山線の志井公園駅があり、企救丘駅との距離は直線で200メートルしか離れていない。どうせならちょっとレールを延ばして接続すれば良かったのに。

 北九州は関門海峡に臨む門司まで行けば、鉄道ファンが喜ぶ観光名所も多い。でも新幹線が停車する城下町・小倉の顔として、モノレールがもう少し目立ってもいいじゃないかと思った。

☆共同通信・篠原啓一

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