【乗車レポ】船橋〜千葉間開業100周年、思いを馳せる小旅行 「国鉄千葉駅前」再現アナウンスも

3000形3021編成に掲出された船橋~千葉間の開業100周年を記念するヘッドマーク

2021年7月17日、「スカイライナー&ヘッドマーク車両で行く!船橋〜千葉開業100周年の旅」が開催されました。

在来線では国内最速となる「スカイライナー」を運行し、成田空港へのアクセスを担う鉄道事業者として知られる京成電鉄ですが、創業は1世紀以上も前のこと。成田空港乗り入れに至るまでに積み上げてきた歴史も長く、たとえば現在の京成船橋〜千葉中央間にあたる船橋〜千葉間が開業したのは、ちょうど100年前にあたる1921年7月17日です。今回の記念ツアーはこれを記念し、京成トラベルサービス主催・京成電鉄後援で実施されたものです。

ツアー自体は京成上野駅からスカイライナーで千葉中央駅へ向かい、京成ホテルミラマーレで講演会と昼食、その後は記念ヘッドマークを掲出した3000形車両で京成船橋駅まで戻るというシンプルなものでした。しかしながら、スカイライナーAE形が京成千葉線を走行したり、3000形の車内でかつて運行していた種別「快速」にあわせた自動放送を再現するなど、短い旅路に見所がぎゅっと濃縮されており、鉄道ファン・京成ファン向けに練り上げられたものとなっていました。当日の様子を写真を中心に見ていきましょう。

スカイライナーAE7編成で京成千葉駅へ

京成上野駅1番線にAE7編成が入線

「船橋〜千葉開業100周年の旅」は京成上野駅から始まります。駅構内で参加受付を済ませ、ホームへ向かうと、8時53分ごろにスカイライナーAE7編成が京成上野駅1番線へ入線しました。記念写真を参加したツアー参加者は思い思いのタイミングで乗車し、臨時列車は9時7分に京成上野駅を出発しました。

発車標には「団体専用」の表示

往路では要所要所でツアー参加者向けのアナウンスが流れました。たとえば9時25分ごろに京成小岩駅を通過すると、続く江戸川駅の案内、橋梁を渡って千葉県へ入ること、そして千葉県最初の駅である国府台駅に設置されたおもてなし看板の紹介、と流れるように見どころを案内していきます。9時37分ごろに船橋競馬場駅を通過した際は、次のようなアナウンスが流れました。

「皆さんがご乗車のスカイライナーAE形は普段京成千葉線に入ることはありません。レアな映像を車窓と前面展望からお楽しみください」

スカイライナー車両内に設置されたモニターに「京成千葉線」の前面展望映像が映し出される

スカイライナーAE形が京成千葉線に乗り入れるのは今回が初めてではありませんが、なかなかお目にかかるものではなく、沿線の住民の方も「珍しいものを見た」と感じられたかもしれません。京成千葉線は総武本線と並走する区間も長く、車窓にはJR東日本のE217系やB.B.BASEなども登場しました。

9時41分ごろ、車窓から見えたE217系

極めて濃い千葉線の歴史が語られる

京成千葉駅へ到着したスカイライナー

9時54分ごろ、スカイライナーは京成千葉駅へ到着。ツアー参加者は京成ホテルミラマーレ6階「ローズルーム」へ移動します。こちらでは田中日出明 京成千葉駅長と吉野泰宏 施設部長による講演が行われました。

京成ホテルミラマーレ6階「ローズルーム」
田中日出明 京成千葉駅長

内容は主に京成千葉線の歴史を紹介するもので、開業当時の駅の写真や駅名の変遷などがスクリーンに映し出されました。他にも「稲毛駅に渡り線があったころ」「モニ22電動貨車が千葉中央駅に入車したとき」など貴重な光景を捉えた写真が解説付きで数多く紹介され、ガチガチの鉄道ファンほど唸る内容だったのではないかと思います。

過去のスタンプチケットや戦前の広告といった貴重な資料からは、京成千葉線がかつては海岸線沿いの路線であったことが伺えます。海水浴シーズンには臨時列車が多数設定されており、海水浴や潮干狩りなどで海を訪れる観光客で賑わった京成千葉線……東京湾の埋め立てが進み、JR京葉線も開業した今となってはなかなか想像しがたい姿です。

講演会の後は千葉の食材をふんだんに使用した「地産地消」ならぬ「千産千消」ランチが供され、食事のお伴として、かつての京成電鉄CMがスクリーンに映し出されました。現在のスカイライナーAE形ではなく、2代目スカイライナー車両AE100形が映る数々のCMは平成の雰囲気を色濃く残したもので、また登場するキャストに関してもたびたび「当社の社員です」といったアナウンスが入り、会場は和やかな笑いに包まれていました。

「千産千消」ランチとして提供された松花堂弁当 白身魚の塩麹西京焼きや夏野菜の炊き合わせなど、見た目にも色鮮やかでバランスの取れたメニュー
会場外ではダッチングマシーン体験なども行われた
京成電鉄・関東鉄道・イウォレ京成・京成トラベルサービスの4社物販も行われた

「国鉄千葉駅前」再現アナウンスも

記念ヘッドマークを掲出した3000形3021編成

12時23分ごろ、千葉中央駅に記念ヘッドマークを掲出した3000形3021編成がやってきました。ツアーの締めにこの車両に乗り、京成千葉線・京成本線経由で京成船橋駅へと向かいます。

3000形の車内では、1968年~1974年に運行されていた種別「快速」の車内アナウンスを復元したものが放送されました。停車駅についても「国鉄千葉駅前、国鉄千葉駅前でございます。次の停車駅はみどり台です」など、現在は使用されていない駅名での案内となりました。

車両そのものは通常使用する営業車であるため、内装等には一切手を加えていないそうですが、レトロなメロディーとともにアナウンスが流れる度にどこか懐かしい気分に浸れます。また京成電鉄のCMソング「ぐんぐん京成」も流れるなど、往年の京成ファンにはたまらない「はからい」だったのではと推察します。

記念ヘッドマーク車両は12時50分ごろに京成船橋駅へ到着。改札外でノベルティの配布も行われ、順次解散となりました。4時間ほどのツアーでしたが、その旅路は驚くほど「濃い」もので、繰り返しになりますが、ファンが喜ぶ要素がしっかり詰め込まれていたように思います。

ツアー料金は大人7,000円・子供5,000円で、当日の参加者は計136名(大人115名、子供21名)

今回のツアーの他にも、京成電鉄は船橋~千葉間開業100周年記念事業の一環として、記念乗車券や特定の駅での横断幕の掲出、記念グッズ販売や駅巡りスタンプラリーなどを実施します。また京成電鉄稲毛駅では、独自の取り組みとして写真展が行われています。

京成千葉駅へ掲出された横断幕

文/写真:一橋正浩

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