フェルスタッペンが1周目にクラッシュでリタイア。ハミルトンは10秒ペナルティも母国で通算99勝目【決勝レポート/F1第10戦】

 7月18日現地時間15時、2021年F1第10戦イギリスGP決勝が行われ、メルセデスのルイス・ハミルトンが優勝を飾った。

 この日もシルバーストンは好天に恵まれて気温は29度、路面温度は51度という暑いコンディション。

 スプリント予選でスピンを喫し最後尾に終わったセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)は、ダウンフォースを付けすぎたリヤウイングを別仕様に交換し、合わせてサスペンションセットアップとフロントブレーキダクトを変更し、後方からの追い上げを可能とすべくマシンに手を加え、ピットレーンスタートからの挽回を期す。

 スプリント予選1周目にカルロス・サインツ(フェラーリ)を押し出したかたちになったジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)には3グリッド降格ペナルティが科され、ラッセルは12番グリッドからのスタートとなった。

 スプリント予選が行われたため通常の決勝とは異なり、スタートタイヤは全車が自由選択。1ストップ作戦を視野に入れてミディアムを選択したマシンが大半で、ハミルトンとバルテリ・ボッタス(メルセデス)は1周、アストンマーティンのセバスチャン・ベッテルとランス・ストロール、ハースのニキータ・マゼピンとミック・シューマッハーは3周の皮むきをした中古、そしてピットスタートのペレスだけがハードタイヤを選んだ。

 ポールポジションのマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)に対し2番グリッドのハミルトンが好発進を決め、2台は並んでターン1に飛び込みフェルスタッペンは僅かにワイドに。フェルスタッペンはターン3でトップを守るが、ウェリントンストレートからターン6でハミルトンがアウトから僅かに前に出る。それでもフェルスタッペンはターン6のエイペックスから出口で前を抑え、両者は激しいバトルを展開した。

2021年F1第10戦イギリスGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)&マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 ハミルトンはさらにターン9でインを突き、両者は接触してフェルスタッペンは右リヤを壊してスピンオフしクラッシュ。スタート加速で3番手に浮上していたシャルル・ルクレール(フェラーリ)がこの間にターン9出口でトップに立ち、ハミルトンは2番手に順位を落とし3番手にボッタス、4番手ランド・ノリス(マクラーレン)、5番手ダニエル・リカルド(マクラーレン)、6番手ベッテル、7番手フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)、8番手サインツ、9番手キミ・ライコネン(アルファロメオ)、10番手エステバン・オコン(アルピーヌ)と続き、ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)は12番手、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)は15番手。

 ハミルトンはマシンにダメージを負ったと訴えるがピットインはせずステイアウト。フェルスタッペンのマシンはストウのタイヤバリアに突っ込んでおり、2周目の時点で赤旗が提示されてレースは中断となった。フェルスタッペンのマシンはバッテリー周辺にダメージが及んでいるようで、レッドブルのクルーが現場に急行して安全確認を行ってからマシン撤去作業が行われる。ハミルトンのマシンは左フロント翼端板についているタイヤ温度センサーが破損しており、赤旗中断の間に修復作業が行われる。ハミルトンにはフェルスタッペンとの接触に関して10秒加算ペナルティが科された。

 36分間の中断を挟んでレースは現地時間15時42分に再開。3周目にセーフティカー先導で各車がコースインし、スタンディングスタートで4周目からレース再開となる。新品のミディアムが残っていたルクレール、ボッタス、サインツ、ライコネン、オコン、アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)、ラッセル、ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)が新品のミディアムに履き替えた。

 ポールポジションのルクレールは好発進で首位を守り、ノリスが好スタートを決めてボッタスを抜き3番手に上がる。ベッテルはターン7の出口でスピンを喫して最後尾に後退。5番手にリカルド、6番手アロンソを抜いてサインツがポジションを上げ、8番手ストロール、9番手オコン、10番手ライコネン。ガスリーは12番手、角田は14番手につけるがペレスに抜かれて再び15番手に後退する。

2021年F1第10戦イギリスGP リスタート

 コース上でのオーバーテイクは難しく、各車ともギャップを維持しながらタイヤをいたわって走行を続ける。

 15周目にルクレールはエンジンのカットが発生していると訴え、フェラーリはルクレールにドライバーディフォルトをかけさせる。これを聞いてハミルトンはペースアップしルクレールとのギャップを一気に縮めていく。右フロントタイヤの内側にはブリスターが発生しているが、ペースは落ちない。これに対してルクレールもペースを上げて対抗した。

 18周目に中団勢のライコネン、ペレス、ラッセル、ベッテルがピットインし各車はハードに交換。ペレスはハードからミディアムに履き替え、20周目のターン1から仕掛けていきターン6の手前でDRSを使って仕留める。

2021年F1第10戦イギリスGP セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)

 19周目にオコンとラティフィ、20周目にリカルドがピットインし、ハードタイヤに交換。21周目にピットインしたノリスは右リヤタイヤの装着に手間取り6.0秒を要してしまった。これを見てボッタスは22周目にピットインしノリスの前へ。まだピットインしていないアロンソも続いて抜いていく。

 23周目にストロールとジョビナッツィがピットインし、24周目にアロンソがピットストップで5.4秒をロスしストロールの後方に戻るが、ターン6でパスしアンダーカットを阻止した。

 ハミルトンは27周目のターン13出口でワイドになり「左フロントがもう終わっている」とピットインし、10秒ペナルティを消化して14.2秒の静止時間。ノリスの3.8秒後方でコースに復帰する。首位ルクレールはまだタイヤの状況が良く、第1スティントを引っ張る。

 28周目にピットインしたサインツは左フロントの装着に手間取り12.3秒。ガスリーもここでピットインをこなしてハードに交換した。

2021年F1第10戦イギリスGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)

 首位ルクレールは29周目にピットインして2.6秒で作業をこなし、ボッタスの6.7秒前方で首位をキープしたままコース復帰を果たした。2番手ボッタスはルクレールについていくことができず、ギャップはじわじわと広がっていく。ハミルトンは31周目のターン9でインに飛び込んでノリスをパスして3番手へ浮上し、前の2台を追い上げていく。

 角田は30周目にピットインしてラッセルをオーバーカットすることに成功。さらに前のライコネンにプレッシャーをかけていく。ペレスが38周目にピットインして17番手まで後退し、角田は12番手に上がるがなかなかライコネンを攻略できない。

 メルセデスAMGは2番手ボッタスに追い着いたハミルトンを40周目のターン15で先行させ、ハミルトンはファステストラップを記録しながら1周1秒速いペースで8.9秒前方のルクレールを追いかける。

 46周目、ガスリーがパンクを喫して緊急ピットイン。そして10番手ライコネンがペレスに抜かれた際にターン17で僅かに接触しスピンを喫して16番手に後退し、角田は11番手に浮上する。ペレスもタイヤにダメージを負ったようで48周目にピットインを強いられ、角田は10番手に浮上した。

 10番手ペレスを先頭とする周回遅れの集団に追い着いていくなか、49周目にハミルトンはついにルクレールのDRS圏内に追い着く。

 ハミルトンは50周目のターン9でインに飛び込もうとするがスペースがないと見て引く。しかしルクレールはターン9出口のダブル縁石に乗って挙動を乱しコースオフ。これによってハミルトンは首位に立った。ルクレールはハミルトンに着いていくことはできず、ハミルトンは52周を走り切って第4戦スペインGP以来実に2カ月ぶりの優勝を挙げた。

 ルクレールはボッタスを寄せ付けず2位、ボッタスが3位。4位ノリス、5位にサインツの猛攻を抑え切ったリカルド。トップから70秒遅れでアロンソが大健闘の7位、8位ストロール、9位オコン、そして角田が10位でポイント獲得を果たした。ガスリーはソフトタイヤで追い上げたものの届かず11位に終わった。

2021年F1第10戦イギリスGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2021年F1第10戦イギリスGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2021年F1第10戦イギリスGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2021年F1第10戦イギリスGP ルイス・ハミルトン&バルテリ・ボッタス(メルセデス)

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