高齢者はなぜ自宅で熱中症になるのか、名古屋工業大学が計算科学とデータで解析

名古屋市消防局と名古屋工業大学の研究グループは、熱中症搬送者ビックデータを用いて高齢者の熱中症発症過程を推定。搬送者には体温調節機能の著しい低下の可能性があることと、脱水を伴う熱中症は脱水が数日間蓄積して生じることを確認した。

熱中症による救急搬送人員数は年々増加傾向にある。研究グループはこれまで、大規模シミュレーションによる発汗量、体温上昇の推定技術を開発し、2020年7月からは名古屋市消防局と共同研究を開始。その一環として、高齢者が熱中症を発症するメカニズムを横浜国立大学の協力を得て分析した。従来の研究では高齢者が自宅で熱中症に至る過程については不明点が多かった。

研究グループは名古屋市消防局提供のビックデータを分析。2019年、2020年の名古屋市の熱中症搬送者数2,513人のうち65歳以上の1,299人を解析対象として抽出。そのうち55.5%が自宅で熱中症を発症していた。

搬送者の体温(腋の下)・発生場所・搬送日時・気象データから、深部体温・発汗を大規模数値シミュレーションにより再現し、実際の搬送時の体温と比較した。それにより、熱中症を発症する高齢者の3割以上に発汗がないなど著しい体温調節機能の低下あるいは重度の脱水が生じることを科学的に裏付けた。また、脱水症状を伴う熱中症は、1日に想定される発汗量から、搬送当日だけではなく数日間の脱水の蓄積によって生じることが示唆された。

今回の結果から、暑さやのどの渇きを感じていなくても、温度計(室温計)などを活用した積極的な暑さ対策やこまめな水分補給が必要であり、本人が自覚していない可能性があるため、客観的データに基づき、周りからの呼びかけが重要であると指摘している。

参考:

【名古屋工業大学 先端医用物理・情報工学研究センター】高齢者はなぜ自宅から熱中症で搬送されるのか? ~計算科学と熱中症搬送者統計データの融合による科学的な裏付けに向けて~(PDF)

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