過去16回の五輪メダル数で検証、金メダル数と株価の強い関係

7月23日の五輪開会式まで間近となりました。一時、今回の五輪では日本代表に“金メダル30個”が目標と言われるほど期待がかけられていました。コロナ禍が未だ収束されず五輪開催の賛否も議論される環境で、精神的な負担も大きい選手の方々に行き過ぎた期待は禁物でしょう。とはいえ、地元で行う五輪です。メダルへの期待はどうしても高まってしまいます。

この日本代表の金メダル数、実は五輪期間の我が国の株価との間に意外な強い関係があるのです。今回は金メダル数と株価の関係を紹介しましょう。まずは結果を見てみます。



金メダル10個以上で日経平均株価は上昇?

表は、日本が金メダルを10個以上獲得できた夏季五輪と、その五輪期間の日経平均株価騰落率を見たものです。第2次大戦後、日本が最初に参加した1952年ヘルシンキ大会から不参加だったモスクワ五輪を除くと、合計16回の五輪があります。そのうち金メダル10個以上獲得できたのは6回でした。

これらの6回で日経平均株価が下がったのは1964年の東京大会1回だけ、勝率は83%と8割を超える確率で上昇したことが分かります。日本代表が活躍して金メダル数が10個以上の五輪期間の株価が高くなる傾向が確認できます。

ちなみに、6回中で唯一日経平均株価が下落した1964年の東京大会、日本経済は1960年代を通じて高度経済成長の時代でした。1964年は五輪特需を超えて一時、景気が後退した影響を受けたかたちです。

今回も同じ東京大会という共通点はありますが、1964年当時はそれまでの好調な経済が東京大会で一段落したことに対して、今回はコロナ禍からの経済が立ち上がっていく場面というところで経済環境は大きく異なります。当時のように五輪期間で株安を連想する必要はないのではと考えています。

なぜ日本代表の活躍が株価に影響するのか

さて、金メダル数と株価の関係に話を戻しましょう。続いては、金メダル数が10個以上だった過去6回の大会と9個以下だった大会、それぞれ五輪期間の日経平均株価を平均してみました。

平均騰落率は2.03%と9個までだった残りの10回を平均した0.79%を上回っています。先ほど紹介した勝率(上昇した割合)も金メダル数が9個までだと5割を下回っており、日本代表の金メダルが少ないと相場は下がる時が多かった傾向が分かります。

なぜ“日本代表が活躍すると相場が上がり、活躍できないと相場が下がる傾向“があるのでしょうか。これには“行動経済学”の理論が理由にあると考えられます。行動経済学を平たく言うと、人間の行動はその時の気分に左右されるため、株式を買ったりする投資も気分の影響を受けてしまうということです。

以前、この連載で「ワールドカップと株価の“ベタな関係”は実在するのか」を取り上げました。詳しくはその記事を読んでもらいたいのですが、「サッカーのワールドカップで日本代表が勝利すると日本株が上がる」ということを紹介しています。

実は、サッカーに限らず大きな国際試合で勝利した国の株価は高いという関係が見られるという研究があります。これは行動経済学という学問が裏づけています。日本代表が活躍すると投資家の気分も明るくなりやすく、株式市場で悲観的な見方が後退するため株高につながりやすいのです。

実は、金メダルに限らず銀、銅も含めた獲得メダル総数でも同じように分析してみました。その結果、メダル総数が30個以上の過去の五輪となった4回(1984年ロサンゼルス大会、2004年アテネ大会、2012年ロンドン大会、2016年リオデジャネイロ大会)のいずれも五輪期間で日経平均株価は上昇しました。金メダルに限らず、日本代表の活躍と株高が関係していることが分かります。

今回の東京五輪での代表の活躍と株式市場の行方は期待されます。

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