阪神・佐藤輝に元祖フルスイング男が提言「こっからは頭や!」

佐藤輝明

【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】「カベ」にぶつかった時どう対処するか。このキーワードに悩む一人として、思い浮かべるのは現在の阪神・佐藤輝明内野手(22)だろう。

7月は打率2割2分7厘、2本塁打と急失速。それでもオールスター戦第2戦(17日、楽天生命パーク)では本塁打を放つなど新人ながら大奮闘していることは誰もが認めている。だが、虎党の期待値はすでに超インフレ状態。疲労も蓄積しており、現状打破は容易ではないだろう。

この状況を乗り越えるためには何が必要なのか。2106安打、404本塁打を誇る元祖フルスイング・中村紀洋氏(47)はこう提言する。

「打てるボールだけ振ればいい」

これだけでは説明不足なので、中村氏の考えを順序立てて並べてみる。

中村氏は佐藤輝が好調だった4月から6月、すでに警鐘を鳴らしていた。この3か月で18本塁打。5月は月間打率3割1厘と数字を残した。それでも「みんな期待してると思うけど、カベにはぶつかると思うよ」と、その後の不調を予見していた。

それと同時に「1年目なんでお試し期間ですから。相手バッテリーは必死にデータ収集してます。打てないコース、球種、配球も見破られる。でもね、そこからがスタート。あとは本人がどれだけ考えるか。ここからは頭やからね」と、本当の勝負はこれからであることも強調していた。

さらに「術中にハマってしまうボールだってある。現時点ではミスショットをしてもいい。こっちもデータの蓄積ですよ。ただ、カベにぶち当たっても、弱みを見せないで自分のスイングをしてほしい。堂々とカムフラージュすることも大事」とフルスイングのスタイル維持を求めていた。

そして、ここからが高等テクニック。「ワザと空振りしてタイミングが合ってないよと見せかける。俗にいう『三味線を弾く』という行為。つまり、相手バッテリーに狙った球を勝負球に使わせる技術。そういう極意が、どこかでわかってくると思う」と、最終的に打てるボールを誘い出す駆け引きを求めた。

新人の佐藤輝にはハードルが高いかもしれない。だが、中村氏があえて口にするのは「僕は佐藤輝選手は打つと思ってるから」と野球人として期待しているから。

「これから本当の意味で挫折する時があると思う。それは3、4、5年後なのか、来年なのかわからない。でも、それにしても楽しみ過ぎるバッター」

レジェンドが見込んだ逸材。次は近大の先輩でロッテ・有藤道世の1年目の21本、その次は阪神の新人記録、田淵幸一の22本を超えていくのか。道を自ら切り開く佐藤輝の今後を多くのファンが期待している。

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