「日本一の遊撃手」に求められる変わり身…源田壮亮が侍Jで果たす“1人4役”以上

三塁での守備練習に取り組む侍ジャパン・源田壮亮【写真:Getty Images】

「野球を始めた頃から」ショート一筋でも便利屋扱いに前向き

誰もが認める“日本一のショート”西武・源田壮亮内野手に、過酷な任務が課せられる。東京五輪に出場する野球日本代表「侍ジャパン」は19日、仙台市の楽天生命パーク宮城で強化合宿を一般非公開でスタートさせた。五輪本番初戦のドミニカ共和国戦(福島あづま球場)は28日に迫っている。

稲葉篤紀監督は合宿初日から満足げだった。「壮亮がサードをやってくれたり、みんなが限られた人数でやっていかなければならないことを理解してくれている。ありがたい」とうなずいた。

源田はプロ5年目にして公式戦では遊撃以外を守ったことがなく、それどころか「野球を始めた頃から」ショート一筋だと言うが、この日の練習中には三塁を守るシーンがあった。2日前の17日にオールスターゲーム第2戦(楽天生命パーク宮城)で試合途中から三塁、二塁を守ったのも、東京五輪に備えての措置であった。

「サードの準備もしっかりしておこうという話を(あらかじめ首脳陣から)されている」と明かした源田。遊撃にはチームリーダー格の坂本勇人(巨人)がいるとはいえ、こと守備にかけては昨季まで3年連続ゴールデングラブ賞の源田の右に出る者はいない。一方、守備の名手をもってしても、慣れない三塁や二塁を守ることは「景色が全く違う。打者との距離感も、ファーストとの距離も違いますから」とあって、決して容易ではないのだ。それでも「できる限り数多くノックや打球を受けて、しっかり準備したい」と前向きに取り組んでいる。

侍の便利屋に「自分に求められている足、守備、小技では失敗がないように」

守備だけではない。走っても今季18盗塁、打っても打率.282としぶとく、進塁打やバントもそつなくこなす。侍ジャパンでは、ここ1番での代走、代打、守備固めまで何でもござれだ。源田は「自分に求められている足、守備、小技では失敗がないように、練習でしっかり準備して試合へ向かっていきたい」と役割を自覚。首脳陣にとってこれほどありがたい存在はいない。

もともと内外野どこでも守れるユーティリティプレーヤーとして期待されていたのは、同僚の外崎修汰(西武)だったが、今季開幕直後に受けた死球で左腓骨骨折を負ったのが響き、侍のメンバーから外れた。五輪では出場選手数自体も、プレミア12の「28」から「24」に減るだけに、今のメンバーで“便利屋”扱いに耐えられるポテンシャルの持ち主は源田しかいないだろう。

そして、意外な役割がもう1つ。西武の同僚で侍ジャパン初選出、チーム最年少でもある平良海馬投手の“世話係”だ。「平良を気にかけながら、声を掛けながらやっています。早速、いろいろ忘れ物とかしていたので」と苦笑しきり。西武で主将2年目を迎えた源田の人柄、人望が改めて光る。終わってみたら、侍ジャパンの救世主と呼ばれているかもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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