SIIP(シープ) ~ 高校生と京大生の挑戦!チャレンジする学生を応援するフリーマガジンを創刊

2021年5月に学生がつくる学生のための「学生応援フリーマガジンSIIP(シープ)が創刊されました。

チャレンジする若者を応援するためのSIIPを発行したのは、岡山県笠岡市にあるみんなの自習室はくし代表の寺田 伊織(てらだ いおり)さんと塾生の高校生、そして京都大学の学生たち。

フリーマガジンを作ろう!と考えてから創刊までの期間はなんと半年間!

取材から編集まで、未知のことばかりだったフリーマガジンSIIPの発行について、寺田さんと現役高校生の編集部員である笠岡市在住、岡山県立倉敷天城高等学校3年の池田 創一郎(いけだ そういちろう)さんに取材をしました。

雑誌作りが初めての状態から半年でフリーマガジンのSIIPを1万部発行した2人にとって、得るものが大きかったようです。

SIIPとはチャレンジする若者が集うプロジェクト

フリーマガジンのタイトルになっているSIIPは、プロジェクト名です。

SIIPは「Social Innovator Incubate Platform(ソーシャル・イノベーター・インキュベート・プラットフォーム)」の略。

寺田さんたちが、社会を変えようと挑戦する若者たちが集い新しいことにチャレンジする場として立ち上げたプロジェクトです。

みんなの自習室はくしに集まる塾生と京大生が中心

SIIPのプロジェクトメンバーは、京都大学大学院を休学し、笠岡市地域おこし協力隊員を務めながら自習室はくし代表として活動している寺田さん。

そして、みんなの自習室はくしに在籍している塾生、プロジェクトを応援するために参加した京都大学の学生(以下:京大生)で構成されています。

みんなの自習室はくしの理念を具現化したSIIP

みんなの自習室はくしは、自分のしたい勉強をどんどんと進めることができる自習型の塾です。

わからないところがあったときは、すぐに京大生や寺田さんに質問できるので、その場で不明点がクリアになり、より深く勉強できる場所になっています。

そのために、生徒自身が学習を主体的に進められる環境づくりやサポートを行ない、科学的に学習効率がよくなると立証されているツールや方法があれば、すぐに取り入れて実践しているそうです。

また、みんなの自習室はくしでは、若い人たちがチャレンジする姿勢を応援し、そのチャレンジと社会をつなげていく活動にも力を入れています。

その理念からSIIPのプロジェクトが誕生し、プロジェクト名を与えられたフリーマガジンSIIPを創刊することになりました。

SIIPの考え方に共感した高校生メンバーの池田さんと八重本さんは、大きなチャレンジである「SIIP創刊」に向けて、寺田さん、そして京大生といっしょに怒涛の半年間を乗り切ったのです!

SIIP編集部の高校生メンバーの活躍が光る

SIIP編集部の高校生、池田さんと八重本さんは、記事にするための取材日程の調整を自分たちで行ない、その後インタビューを含む取材をこなし、取材内容を執筆と実務の大半を担当。

池田さんは、ページの割り振りから記事の配置などの紙面デザインを任されました。

池田さんがSIIPの編集で使っているAdobe Illustrator(アドビ イラストレーター)は、SIIP構想段階ではまったく触ったことがなかったことに驚きです。

初めて使うイラストレーターの勉強を重ね、半年後には紙面デザインをこなせるほどの使い手になったことで、代表の寺田さんも感心していました。

学業との両立で、時間が足りず大変なこともあったそうですが、編集部のメンバーは全員雑誌作り未経験ながら、見事なフリーマガジンを完成させたのです。

SIIP創刊号の記事は編集部員が気になるもの満載

フリーマガジンSIIP創刊号は、学生である編集部のメンバーが興味のある分野の記事がたくさん詰まっています!

内閣官房長官に会ってきました

SIIP編集部は「今、会いたい人に会いに行く」で、加藤 勝信(かとう かつのぶ)内閣官房長官へ実際に会いに行きインタビュー企画を実現しています。

取材時はコロナ禍であり、取材を承諾してもらうのは大変だったらしいのですが、「想いを行動に移すと実現するものですね」と寺田さんは話しました。

編集部の5人が、それぞれ1つずつ加藤内閣官房長官に質問をしています。

加藤内閣官房長官の回答は、チャレンジする学生にとって、大きなヒントや指針になるものばかりでした。

英検1級に中学2年生のときに合格した生徒の体験記

英検1級は、大学上級程度の内容で合格率が10%前後のハイレベルな検定試験です。

その英検1級に、中学2年生の段階で合格した生徒にインタビューをした記事が掲載されています。

「高校生ミライチャレンジ」のページに掲載されている、英検1級の難関を突破した英数学館中学校桑原さんの体験記は、がんばるぞ!と挑戦する気持ちを後押しする内容でした。

チャレンジする若者を応援するSIIPらしい読み応えがある記事となっています。

読みたい記事が満載のSIIP

SIIPの全記事は、学生にとって有益なものばかりです。

福山ロフトで取材をした文房具マストバイ!!は、学生が気になる文房具を紹介。

福山大学からプロ野球の道へ進んだ山崎 友輔(やまさき ゆうすけ)選手、京都大学起業部代表の桺本 頌大(やなぎもと しょうだい)さん、京都大学医学研究科の松尾 英将(まつお ひでまさ)先生のインタビュー記事は、学生に刺激を与えてくれました。

編集部メンバーである池田さんが目指す独立時計師についての記事「独立時計師への道」は、自分の興味があることをとことん突きつめ実現しようとするひたむきさが文字に表れています。

SIIPは年2回発行予定

「学生応援フリーマガジン」SIIPは、年2回発行する予定です。

SIIP2号は、2021年10月あたりに発行できればと寺田さんは話していました。

次号がどのように進化するのか楽しみなSIIP。

創刊号1万部の発行を終えて、一息ついている寺田さんと高校3年生の池田さんに、フリーマガジンSIIPの創刊まで何が大変だったのか、SIIPを作って得たものは何かなどについてインタビューしました。

編集部の寺田さんと池田さんにインタビュー

左:寺田さん 右:池田さん

みんなの自習室はくし代表 寺田さんと、岡山県立倉敷天城高等学校3年の池田 創一郎(いけだ そういちろう)さんへのインタビューを行ないました。

SIIP誕生の場 みんなの自習室はくし設立まで

SIIP コクリエイティブルームのようす

──寺田さんが京都大学大学院を休学して笠岡市地域おこし協力隊に参加した経緯は?

寺田(敬称略)──

もともと僕の将来の夢が大学に残って教育をすること、または地方で教育を絡めた起業をすることの2つだったんです。

当初大学に残って教育をする路線で進んでいたんですが、たまたま見ていたテレビ番組で地域おこし協力隊について取りあげていて、「ああ、こんな方法もあるんだ」と。

ちょうどそのとき論文を1本書き上げていたこともあり、休学をすれば地域おこし協力隊として活動をしながら教育の分野で起業ができると考えたんです。

それからいろいろな自治体の地域おこし協力隊について調べて、最終的に笠岡市の地域おこし協力隊として活動することになり笠岡に来ました。

あと、これは起業とは関係ないのですが、僕自身すごく魚が好きなんです。

大学がある京都は内陸なので海がなくて、週末になると大阪や舞鶴の市場に通ってて(笑)

だったら、海や市場がすぐ近くにある環境で教育と水産の両方をやってみたいなということで、笠岡市の地域おこし協力隊に参加したという部分もあります。

──笠岡の印象はどうですか?

寺田──

笠岡に来て2021年で3年目なんですけど、笠岡はチャレンジするにはいい環境なのではと思っています。

確かに活発的かっていうとそうではないと思うのですが、こちらが活発に動いたら、それに対して理解とか支援とかしていただけるので、チャレンジがしやすい場所ではないでしょうか。

──みんなの自習室はくしの設立は?

「みんなの自習室はくし」は笠岡市の大仙院(だいせんいん)の赤い鐘楼門をくぐってつきあたり左手にある

寺田──

学生が自分のやりたい勉強ができる環境を作ることを、地域おこし協力隊の活動項目のなかに盛り込んでいたんです。

僕自身京大に進学していますが、中学生のときなどは成績がよいほうじゃなかったんです。

でも、塾に通うことになり、そこで自分の夢を認められたことからがんばって勉強するようになって京大に合格することができました。

塾にとって教えることは大切なんですが、生徒の夢を認め、その夢に向けて打ち込める環境を作ることのほうが重要なんじゃないかと考えて、自習スタイルで塾を運営することにしたんです。

授業を展開する形式ではなく自習室の形式を選んだのは、生徒が知りたいと思ったそのときに、説明や考え方やアドバイスができると考えたからです。

生徒が一番学ぶときは、知りたいと思った瞬間なので。

授業だとカリキュラムに合わせないといけないのですが、自習形式にすると、一斉に授業をする必要がなく質問対応がメインになります。

生徒が今知りたいこと、それがもしかしたら学校で学習している内容かもしれないし、学校にまったく関係ないことかもしれません。

今聞きたいことを質問できて、その考え方やアドバイスを聞いた結果、理解できるようになることが思考力や理解力を深めるためには必要だと思っています。

池田(敬称略)──

ほかの自習室だと、僕がやっていることは学校の勉強じゃないので、できないんです。

独立時計師に向けての3D CAD(キャド)や設計の勉強をここでは自由にできるし相談もできるので、とても助かっています。

SIIPの創刊は塾生の発案で動き出した

──どのようなきっかけでSIIPを作ることになったのですか?

寺田──

SIIP創刊は僕のアイディアではないんですよ。
塾生が発案者なんです。

自分のやりたいことが認められるとがんばれる!そんなことを伝えたいなあ、そのための雑誌を作りたい!と、のちに編集部のメンバーになる八重本さんが言っていたんです。

その考えは僕の理念自体にもあっていて、まさに求めているものだったんです。

それなら作ってみようかとなり、雑誌作りが2020年11月にスタートしました。

──池田さんはどのような経緯でSIIPの創刊にかかわるようになったのですか?

池田──

もともとみんなの自習室はくしに参加していて、自分のやりたいことをやっていたんですが、SIIPでチャレンジする学生を応援する企画が、僕自身の理念とやっていることとあっていたので、参加することにしました。

SIIP発行までは初めての連続

──SIIP創刊の準備から発行まではどのような流れで進みましたか?

池田──

最初に会議があり、やることを決めていきました。

「誰に会いたいか」が最初の議題だったんですが、「内閣官房長官に会いたい!」と意見が出たので、まず採用しました。

そのあと、次の内容をどんどん決めていったんです。

基本的に学生に提供するものなので、学生が夢に向かって進むときに役に立つものとか、興味を持ってもらえるものを中心にコンテンツを決めました。

それから取材を順番に進めていき、記事の作成に取りかかったんです。

僕のことでいうと、Adobe Illustrator(アドビ イラストレーター)を使ったことがなかったんで、イラストレーターの練習とかをしながら取材を進めていきました。

取材内容を文字におこして記事にしてから組み込んでいく作業もして、最終的に校正をして完成しました。

──作業は編集部のメンバー全員で?

寺田──

ある程度分業で進めましたが、今回は高校生メインでいきました。

池田くんと八重本さん、めっちゃくちゃがんばってくれましたよ。

──SIIPを発行するまでに大変だなあと感じたことは何ですか?

寺田──

すごく具体的な内容でいいですか(笑)

最後のカフェページが大変でした。

初めて取材をするので段取りが悪かった上に、タイトなスケジュールで進めていたのでカフェページをまとめるまで苦労しました。

取材するお店の営業時間を考えながら取材スケジュールを決めていかなければならないのですが、そのあたりも初めてだったのでわからなかったですね。

あとは広告を掲載することにしたのですが、どんな広告にすべきかなどノウハウがまったくなく難航しました。

池田──

大変だったことは……全部といえば全部です(笑)

イラストレーターも触ったことがなく、ゼロから勉強をしながらだったので大変でした。

寺田──

いや、池田くんすごいんですよ。

まったくイラストレーターを使ったことがなかったのに、短期間で習得して組版(文字や写真などを配置する作業)までできるようになりましたからね。

パスってなに?という状態から始めて、デザイナーさんにバツをいっぱいもらいながら勉強して、ここまで仕上げることができるようになりました。

池田──

本当にイラストレーターは大変でした(笑)

写真撮影は趣味で少しやっていたので楽だったんですが、写真を切り抜いて加工するのには苦労しました。

あとは、文字組みもわからなかったし。

カフェの取材も、営業時間と学校の時間がかぶるので取材ができないこともありました。

取材自体も初めてなので、質問の内容を考えるのが大変でした。

取材のときに、どういう受け答えをすればいいのかも悩みましたね。

SIIPを発行することで見えてきた世界

──SIIPを発行してよかったことは何ですか?

寺田──

SIIPを発行して、どのくらい皆さんが喜んでくれるかなどの反応が予想できなかったんです。

だけど思いのほか、自分の目の届かないところでけっこう話題になっていたり、電話で「次号に広告を載せたいのですが」と連絡をいただいたりとかありました。

予想していなかった好意的な反応がかなりあったので、そういった意味ではやってよかったなと思いました。

池田──

SIIPを作ることで今までしたことがないいろいろなことをやらなければならなかったのですが、それをこなすことで経験にもなりましたし、自分のスキルになったかなと思います。

SIIPを読み「よかったよ」と言ってくださるかたが多くて……それは、うれしかったです。

寺田──

学校でも話題になっていたようですよ。

池田──

多くの先生がたがSIIPについてのことで、話しかけてくださいました。

──今後のSIIPの発行予定は?

寺田──

一応年2回で考えています。

高校生メンバーや大学生メンバーが増えたし、一度発行までを経験したので流れはつかめました。

とはいえ、高校生は昼間やテスト期間は動けないので、がんばって年2回の発行だと思っています。

SIIPの理念は共感する高校生といっしょにチャレンジしたい

──今後の目標について聞かせてください

寺田──

僕は場所と時間にとらわれない働き方を目標としています。

SIIPの活動を通して京都のリソースを笠岡で活かす流れができてきたので、働き方を含めて仕事として拡大していきたいなと考えています。

今アウトソーシングでお仕事をいただくことが多くなっているので、京大生のリソースでそれをこなしているんですが、笠岡にも持ってきたいですね。

オンラインを使った京大生とのアウトソーシング業務を拡大して、そこに高校生も入ってもらうイメージです。

賃金が発生するので、高校生の場合解決しなければいけない課題点はあるのですが、高校生と京大生をつなげることで、高校生側の視野を広げることができたらいいですよね。

あとはライフスタイルの再考です。

企業に就職するだけが、起業するだけが、フリーランスになるだけがライフスタイルではなく、いろいろと組み合わせることで新しい生き方ができることを伝えられるような仕組みを作っていきたいですね。

池田──

僕自身、独立時計師になる夢があり、それを完成することが目標です。

池田さんがPC上で設計している時計内部のデザイン

SIIP自体でいえば、いろいろなかたにこの雑誌を知っていただければいいなと思います。

今よりも広くSIIPを知ってもらえれば、僕みたいに夢に向かってがんばる人を応援できるし、読んだ人は自分もチャレンジしようという気持ちになってくれるのではないかと思います。

そのためにも、もっといろいろな人に知ってもらえるようにしたいですね。

また、次号では今現在がんばっている、チャレンジしている学生を取りあげていきたいです。

寺田──

今回がんばっている人は池田くんだけで、ほかは結果を出している人でしたからね。

池田──

だから、がんばっている人を取りあげて載せることができたらうれしいです。

おわりに

チャレンジする若者を応援したい、増やしたい!そんな願いがフリーマガジンSIIPには詰まっていました。

地域で挑戦して結果を残している人はたくさんいるから、あなたもがんばれるんだよとメッセージを誌面すべてに織り込んだSIIPは、1万部発行され笠岡市内の高等学校などに配布。

休む間もあまりなく、寺田さんや池田さんたち編集部のメンバーは次号に向け、プロジェクトSIIPのコクリエイティブルームで構想を練っていることでしょう。

高校生の無限のパワーを、京大生を触媒にしてさらに引き上げていくプロジェクトSIIPの活動は始まったばかりです。

多様な生き方が存在する現代で挑戦することの意味は何なのか、その答えの一部が3ページに書かれてある「チャレンジすることで未来が変わる!」にあると思います。

本気で挑戦をしている池田さんの目は輝いていました。

輝いている目をもっと増やすために、SIIP編集部の皆さんは次々に現れる課題に挑戦するのでしょう。

SIIPの第2号で、どんなチャレンジをしている学生が取りあげられるのか、楽しみです!

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