賃貸派に良い時期がやって来る?どうなる賃貸住宅市場の動向

皆さんは持ち家派ですか?賃貸派ですか?実際には持ち家派が多いようですが、賃貸派も一定数の需要があるようです。今回は賃貸住宅について、賃貸市場、売買市場、建設動向を確認し、全体を俯瞰してみたいと思います。


持ち家派?賃貸派?

実際のところ、持ち家派と賃貸派どちらが多いかを見てみますと、2019年の国土交通省の調査によると、全体では「住宅を所有したい」と考えている人は、64%いました。年代別に見ると、「所有したい」人は、単身世帯の多い20代だけは40%と低めですが、そのほかの世代は30代が70%、40代が63%となりました。全体に占める割合は持ち家派が多いことになります。

一方で、「借家で構わない人」は、全世帯では全体の2割程度、単身世帯では、すべての世代で全世帯の割合より多くなっています。単身世帯を中心に、一定数以上は賃貸派の人がいるといっていいでしょう(図表1)。

賃貸住宅の賃貸市場を見てみると

まず、賃貸住宅の賃貸市場ですが、全国宅地建物取引業協会連合会の調査によると、全国の不動産仲介・売買業者などのプロが感じる居住用賃貸の市況感は、2020年4月にはDIが▲30直前と、前年より大きく悪化しました。コロナ禍により物件案内を思うように行うことができなかったことなどが影響しているようです。直近では徐々に回復してきており、2021年の4月には▲10程度となっています。一方、新築戸建はDIがほぼゼロとコロナ禍前よりもむしろ良く、これと比較すると、居住用賃貸の回復はやや鈍いといえるでしょう(図表2)。

賃貸マンションの売買市場

次に、賃貸マンションの売買市場ですが、Real Capital Analyticsによると、プロ投資家の間での賃貸用マンションの売買取引は2019年度には約6,700億円(前年比+78%)、2020年度はさらに増加し、約9,200億円(同+37%)となりました。また、2020年度の賃貸マンションの売買取引が不動産売買市場全体に占める割合は、21%(前年比+9%)と大きく増加し、賃貸マンションに投資したプロ投資家が増加しています(図表3)。

賃貸住宅の建築戸数は増加傾向に

また、賃貸住宅の建築戸数は増加傾向になっています。国土交通省の建築着工統計によると、貸家の着工戸数は、2018年9月以降、前年比マイナスが30カ月間続いていました。それが2021年3月以降、3カ月連続で前年比プラスとなっています。しかしながら、12カ月移動累計で見ると、まだ2020年3月の約9割、2019年3月の約8割の戸数ですので、まだまだ建築戸数の増加余地はありそうです(図表4)。

賃貸住宅は、規模が比較的小さいものもあるために、個人投資家から大規模資本の投資家まで、様々な投資家が建てることができ、またオフィスやホテルなどの商業系用途と比べて建設に適した立地が多くあります。もし居住用賃貸の賃貸市場の動きが鈍いままで、数年後に多くの賃貸住宅が建設されれば、実際の需要よりも賃貸マンションを作りすぎてしまう可能性もあります。

一方で、賃貸するユーザー側から見ると、多くの賃貸マンションが建設されれば、設備の内容や立地といった物件の条件の他、賃料の面でもニーズに合った選択肢が増えることになります。

これから数年後には、賃貸派の人にとって良い時期が来るのかもしれません。

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