神谷浩史◆「マモちゃんと奈々ちゃんが歌っている劇中歌は、ある意味漫画を超えていると思うんです」

子ども向け教育番組「ママンとトゥギャザー」の体操のお兄さん・表田裏道は、一見爽やかなイケメンだが、時々“大人の闇”をのぞかせて…。そんな、裏道の“表”と“裏”の顔のギャップが笑いと共感を誘うアニメ「うらみちお兄さん」(テレビ東京ほか)で主演を務めているのは、神谷浩史だ。思わぬ収穫があったというコロナ禍でのアフレコの秘話や、演じる裏道と本作の魅力などを神谷に語ってもらった。

――原作は久世岳先生による同名漫画です。原作を読んだ時の印象はいかがでしたか?

「子ども向け教育番組をネタにしている、分かりやすいパロディーだなと。久世先生のテイストでイジリ倒していくギャグ作品ですね」

――神谷さんは、原作漫画の単行本1巻発売時のPVから裏道を演じていますよね。

「そのPVのタイミングで、スタッフさんが『アニメ化することを目指しています』とおっしゃっていたんです。実は、“そんなわけはないだろう”なんて思いながら聞いていました。言うだけならタダなので、だいたいみんなそう言うんですよ…(笑)。でも、実際にかなうとは限らないし、かなったとしてもキャストが変わることもあります。なので、そういったことは話半分に聞く癖が、自分が傷つかないための処世術として身についてしまっているので、『そうなんですね、へぇ』ぐらいな感じで聞いていました」

――その後、“これは本当にアニメ化しそう!”と感じたタイミングはありましたか?

「2巻でウサオ君の中の人・兎原跳吉役に杉田(智和)くん、クマオ君の中の人・熊谷みつ夫役に中村(悠一)くんがキャスティングされて、“こんなに忙しい人たちをキャスティングしちゃって、果たしてアニメ化した時、アフレコに集められるの?”なんて思っていました。裏道と同じで、完全に僕は後ろ向きな性格なので(笑)。新刊が出るたびにPVが制作されていくうち、歌のお兄さんの蛇賀池照役にはマモちゃん(宮野真守)がキャスティングされて、ますます“アニメ化したとして、こんなに忙しいキャスト集められるの!?”と思うように…。ただ、毎回、スタッフさんは『アニメ化目指しています』とおっしゃるんですね。そのうち、『歌のお姉さんの多田野詩乃役に水樹奈々さんを考えています』と言われ、さらにキングレコードが制作に入り…。そこで、ようやく気付きましたね。『この人たちは本気だったんだ』って」

――アフレコは全員そろってできたのでしょうか?

「コロナ禍に入ってからの収録だったため、全員そろってはできなかったのですが…。それでも、掛け合いの会話がある人たちは集めて、相手がいる状態で収録できる状況を作っていただいたんです。作品の性質上、基本的に裏道はずっと誰かとしゃべっています。そのしゃべる相手が収録の時間帯によって変わる、みたいな形でのアフレコとなりました。なので、それほど不自由なく収録をさせていただきましたね」

――相手のテンポを実際に感じながら、掛け合いができたんですね。

「そうですね。原作を読ませていただき、キャストの方々の名前を見た時点で、原作から声が聞こえてくるような状態になっていたんです。あとは、絵の方のスタッフさんがどういう映像を作ってくださるかにかかってくるのかなと思っていました。なので、相手が目の前にいない状況になってしまっても、何とかなると思えたかもしれません。そのへんは、今回のキャスト陣の強みですよね」

――「うらみちお兄さん」のアフレコはどんなスケジュールで行われたのでしょうか?

「半分ぐらいの話数は毎週収録して、そこから先は、コロナの影響でアフレコの間隔が空くようになりました。半年ぐらいこの作品のアフレコがない期間もあり、最後の3話ぐらいはここ数カ月以内に収録しましたね。1クールの作品を1年以上かけて収録することは、初めての経験。戸惑いがなかったと言ったらうそになりますが、“このキャストだったらできるだろう”という自信はありました。それと、アフレコの期間が空けば空くほど、僕は僕でやれることが増えてくるんです。その期間に違うお仕事があったり、自分の体との向き合い方を考えたり…。その結果、“『うらみちお兄さん』はこういうアプローチじゃなきゃいけない”というものが、いい意味で抜けたんです。そうすると、“前はこういうふうにやっていた気がするけど、それだけでずっと押していくとワンパターンになってしまうな”、“ああ、そうか、こういうアプローチでも成立するじゃん”という考えになっていきました。今回のような作品への関わり方もあるんだなと学ばせていただきましたね」

――そうなんですね。では、演じる裏道はどんな人間でしょうか?

「裏道は、ちょっと不気味に見られがちですけれど、本当は純粋なんですよね。子どもに実は心を開いていて、子どものためにいろんなことを考えています。でも、そのアウトプットの仕方が少し残念っていうだけの人。子どものピュアな部分に胸を打たれると、泣いたり、しおらしくなったりすることもあります。自分が演じさせていただく役については、どんな役でも僕が理解してあげなきゃいけないと思うので、頑張って解釈するんですが、裏道に関しては“実は純粋な人”という解釈の仕方しかなかったんですよね。そうじゃないと、単なる嫌な人になってしまいますから」

――子どもに対してと、大学時代の後輩で番組の共演者でもある兎原などに対してでは、裏道の態度が全く違いますよね。

「兎原とかは、もう子どもじゃないので…。大人だから、ああいう当たり方になるんだろうなと思うんですよ」

――ありがとうございます。では、最後に視聴者の方へメッセージをお願いします。

「まず原作は、題材の目の付けどころがすごいです。それに、久世先生の絵が魅力的で、キャラクターがみんな立っているんです。アニメーションは、その久世先生が作り出した絵が動いてしゃべって、音楽がかかって、歌って、色が付いて成立しています。1回アニメーションを見れば、きっと漫画を読んでいる時、キャラクターが僕らの声ですぐにしゃべり始めるはず。それと、マモちゃんと奈々ちゃんが歌っている劇中歌は、ある意味漫画を超えていると思うんです」

――登場する歌は、「傘持ってないときに限って雨降るのなんで」「たまに家の中にいる小さいクモ」など、タイトルも独特。“あるある”を率直に歌った歌詞が印象的です。

「久世先生が思ったことを書いた歌詞にメロディーを付けた結果、Aメロ、Bメロ、Cメロ、Dメロ…みたいな、覚えるのも歌うのも大変な構成の歌になっています。原作でも『変な歌』と言われちゃっているので、ある意味そのままなのですが(笑)、優れた作曲家さんが曲を作って、マモちゃんと奈々ちゃんが歌っています。歌がうま過ぎる2人が歌うと、変な歌のはずなのに“すごくうまい! いい歌だな”と思っちゃうんですよね」

【プロフィール】

神谷浩史(かみや ひろし)
1月28日千葉県生まれ。水瓶座。A型。アニメ「天官賜福」「死神坊ちゃんと黒メイド」(ともにTOKYO MXほか)にも出演中。「劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか―」が公開中。劇場版オリジナルアニメ「サイダーのように言葉が湧き上がる」が7月22日(木)公開予定。

【作品情報】

「うらみちお兄さん」
7月26日
テレビ東京ほか
月曜 深夜1:30~2:00

教育番組「ママンとトゥギャザー」の体操のお兄さん・裏道(神谷)が大人の闇を垣間見せるコメディー。番組ディレクター・出来田適人(堀内賢雄)が真冬に夏用のMVを撮影すると言い、裏道や歌のお兄さん・蛇賀(宮野)、歌のお姉さん・多田野(水樹)らが振り回され…。

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取材・文/仲川僚子 撮影/為広麻里 ヘア&メーク/NOBU(HAPP’S.) スタイリング/村田友哉(SMB International.)

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