株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、一般消費者を対象として日常生活における消費行動や生活一般、SNSやデジタルサービス利用状況などに関するアンケート調査を実施し、コロナ禍の消費者行動の変化について、調査・分析した。
消費者は外出を控えているにもかかわらず、ファッション関連消費は回復傾向を強めた
本調査は、一般消費者へ四半期ごとに、その意識や消費行動、生活一般の変化を中心にアンケート調査を定期的に実施するものである(*1)。今回の2021年4-6月期調査では、3回目の緊急事態宣言の影響により、外出が抑制されているにもかかわらず、ファッション関連消費の回復傾向が強まったことが明らかになりました。
上図は、2020年(昨年)4-6月期調査からの「外出時間」と「ファッション製品の購入に使うお金」の増減傾向を示すDI値(*2)と、「宝飾品・高級ブランド品」購入率の推移を示しています。
今回調査の「外出時間」のDI値は38.6となり、昨年7-9月期の38.7と同程度の値となっています。3回目の緊急事態宣言の影響により、外出時間が昨年7-9月期の程度まで抑制されたと考えられます。一方で、「ファッション製品の購入に使うお金」のDI値40.7は今回、コロナ禍で最も高くなった昨年10-12月期の41.1と同程度まで回復し、「宝飾品・高級ブランド品」の購入率の1.22%は、2020年4-6月期以降で最も高くなりました。
ファッション関連消費(ファッション製品の購入に使うお金のDI値)は、今年1-3月期までは外出時間の増加と連動する傾向にあったことがグラフより確認できます。しかし、今回調査では、外出時間は若干しか回復していないのにもかかわらず、ファッション関連消費はコロナ禍で最大級の程度までDI値(40.7)が回復しました。外出時間を増やさずとも、ファッション関連消費が回復しているのです。この要因としては、EC利用の拡大が考えられます。
このように、長引くコロナ禍、並びに度重なる緊急事態宣言の影響で、人々はWithコロナの生活様式を身に着け、外出を抑制しながらも消費を徐々に回復させているようです。したがって今後、この傾向が続くとすれば、新型コロナウイルスの感染状況に関係なく、消費が回復していく可能性があると考えます。
感染状況によらない消費回復の傾向を素早く把握するため、今後も調査を継続していきます。
*2;Diffusion Index。「改善した」「やや改善した」「変わらない」「やや悪化した」「悪化した」の5段階で質問、そこから算出した動向指数